【クチクラ層について】
クチクラは表面を保護する役割として、いろいろな生物に見られるものです。
クチクラはCuticleキューティクルとも呼ばれて、哺乳類の毛の表面に存在し毛の艶はこの
クチクラによるものです。
また、カブトムシなどの甲類の昆虫の羽根の表面や、椿のようなツヤのある植物の葉の表面にも多くあるのです。
卵の表面の
クチクラは水で簡単に取れてしまうのですが、卵の表面には雑菌が付着していることから
売られている鶏卵の多くは出荷前に洗浄されているので、
クチクラ層も洗い流されています。
そういう意味では、細菌に対して無防備な状態となっているわけですので、
買ってきた卵は冷蔵庫に保管したほうが良いことになります。
新鮮な卵は表面がザラザラしている、と聞いたことはありませんか。
クチクラは乾くとザラザラした感じになるのですが、
古くなって
クチクラがはがれてしまったり、洗浄によって水に溶けてしまったりすると
卵の表面はツルツルになります。
【卵の色について】
鶏の卵の色は、白色、褐色(濃いものから薄いものまで)があります。
この色のもととなるものは産卵直前に分泌される
ポルフィリンという色素なのですが、
この
ポルフィリンは、血液の赤血球の中にあるヘモグロビンを構成している物質で、
卵のカラの外表面と
クチクラを着色します。
着色は卵の表面だけですので、カラを割ってみると内側は白いのです。
この
ポルフィリンは内部の卵自体には関係ないわけですので、
「赤い卵の方が栄養価が高い」というようなことはありません。
また、茶色い鶏は茶色の卵、白い鶏は白い卵を産むような印象がありますが、
卵のカラの色と鶏の羽の色とは無関係なのです。
実際、我が家の真っ白な烏骨鶏が産む卵は薄い褐色をしています。
ツバメやその他の鳥の卵の模様を形成するのもこの
ポルフィリンなのですが、
『卵殻質としての卵殻強度は、褐色卵が少しまさる。
特に、内容が漏れ出るような破卵の発生率が低い。』
との記述があり、また、野鳥の卵の模様について、
『卵の模様というとカモフラージュ機能を思い浮かべますが、
それ以外にも卵の殻を丈夫にする機能も重要なのではないか』
という論文がに発表(バーダー2006年11月)されたとのことで、
ポルフィリンは卵のカラの強度を増す役目も果たしているのではないかと思われるのです。
また、卵の色は鶏が年を取るとともに退色し、飼料や体調によっても影響されるとのことです。
ところで、青い色の卵もあるのです。
南米チリ原産の
アローカナという鶏が産む卵は薄い青色をしています。
しかし、この青色は
ポルフィリンとは違って、胆汁の色素である
ビリベルジンと言われるもので、
卵の表面だけでなくカラそのものが青色をしているとのことです。
【卵の取り扱いについて】
卵を保管するときは、たまごの丸い方を上に、尖ったほうを下にします。
尖ったほうを下にして保管する理由は、卵黄がカラに接触すると外部からの細菌等の影響を受けやすくなるからです。
卵黄は日にちが経つにつれて上に上がってくるのですが、丸い方には気室があり、
卵黄がカラに触れずにすむわけです。
また、卵は生きていて呼吸をしていますが、この呼吸をする気孔から冷蔵庫内の匂いを吸収しやすいので、
強い匂いのするものをそばに置かないなどを考慮して保管すると良いですね。
買ってきた卵を家庭で洗う場合は、食べる直前であれば問題はないと思うのですが、
洗うことによって、水と一緒に気孔から細菌類が入り込むこともあるので止めた方が良いのです。
また、一旦、冷蔵庫で冷えた卵を常温に出しておくと、卵の表面に結露して、やはり同じ理由で
雑菌が入り込みやすくなるので気を付けなければません。
洗浄していない
クチクラ層の付いたままの卵も、冷蔵庫で冷やしたあとに常温に出すと結露して、
クチクラが溶け出し、雑菌で汚染されやすくなるので注意しましょう。
溶けると触った手がベトベトするので分かります。
いずれにしても、卵を汚染から守るためには、一旦冷蔵保存した卵については必要量だけ取り出して使用し、
卵に温度変化を与えないようにすることが大事なこととなります。
また、卵は腐りにくい食材ですが、サルモネラ菌による食中毒を防止するためには、
各家庭での適切な取り扱いが大事です。
外からの汚染だけでなく、近年では産卵した時点ですでに内部がサルモネラに汚染されている場合もあり
賞味期限をしっかり守って、割った後はすぐに食べるようにしましょう。
そして、ひびの入った卵は、そこから雑菌が入るので、できるだけ早く調理して食べてしまいましょう。
(以上 2007年5月23日記)