犬の繁殖
犬の毛色と生まれつきの障害との関係
毛色の遺伝は非常に複雑ですが、シェルティにおける一般的な毛色
セーブル、トライ、ブルーマールの遺伝と障害について簡単に記します。
【前置き】
その個体が持っている遺伝子はすべて、父親から半分、母親から半分、譲り受けたものです。
精子と卵子に含まれている遺伝子は、その個体の遺伝子の半分の情報をそれぞれ持っていて
卵子と精子が合体することによって、新しい個体が持つ遺伝子が決まるわけです。
毛色に関しても同じように、父親から半分、母親から半分、受け継ぎます。
毛色の遺伝子を考える場合も、父親からの遺伝子と母親からの遺伝子の組合わせで考えます。
ですから下記の記号SもMも単独ではなく、父親からの分と母親からの分として
2個が合わさって、その個体が持っている遺伝子として表します。
【セーブルとトライの関係】
優勢であるセーブル因子をS、その劣勢因子をsで表すと
Sを持っている個体(SSあるいはSs)はすべてセーブルとなり、
sが重なってssとなった個体の毛色はトライとなります。
トライの毛色は優勢のセーブル因子Sを持たず
劣勢のセーブル因子sが重なった場合に現れる毛色なのです。
SSとSsは、毛色としては同じセーブルでも遺伝子が違います。
SSのように同じ因子が重なったものをホモセーブル
Ssのようにsの因子を含んでいるものをヘテロセーブルと言います。
親の遺伝子が優勢のセーブル因子のホモSSの場合、子犬はすべてセーブルとなります。
つまりセーブル同士で、少なくとも片方の親の遺伝子がホモセーブルSSであれば、
生まれてくる子犬の毛色はすべてセーブルとなります。
一方、ヘテロセーブル同士Ss×Ssの場合は、子犬にsの劣勢の因子がssとなって
ssの毛色であるトライが表れてくることがあります。
【マール因子との組み合わせ】
次に、ブルーマールの毛色を起こさせる因子をMその劣勢因子をmとします
Mはトライの黒の毛色を薄くする因子で、ブルーマールの毛色を起こさせます。
この記号で繁殖による毛色の出方をまとまると次のようになります。
SSmmホモセーブル |
× |
SSmmホモセーブル |
→ |
SSmmホモセーブル |
SSmmホモセーブル |
× |
Ssmmヘテロセーブル |
→ |
SSmmホモセーブル
Ssmmヘテロセーブル |
Ssmmヘテロセーブル |
× |
Ssmmヘテロセーブル |
→ |
SSmmホモセーブル
Ssmmヘテロセーブル
ssmmトライ |
SSmmホモセーブル |
× |
ssmmトライ |
→ |
Ssmmヘテロセーブル |
Ssmmヘテロセーブル |
× |
ssmmトライ |
→ |
Ssmmヘテロセーブル
ssmmトライ |
ssmmトライ |
× |
ssmmトライ |
→ |
ssmmトライ |
SSmmホモセーブル |
× |
ssMmブルーマール |
→ |
Ssmmヘテロセーブル
SsMmセーブルマール |
Ssmmヘテロセーブル |
× |
ssMmブルーマール |
→ |
Ssmmヘテロセーブル
SsMmセーブルマール
ssMmブルーマール
トライssmm |
ssmmトライ |
× |
ssMmブルーマール |
→ |
ssmmトライ
ssMmブルーマール |
|
Mの因子を持つセーブルをセーブルマールと呼びます。
以上の組み合わせではMMが生まれてきませんが
親同士にMがあるとMMがうまれる可能性があります。
この組み合わせです。
* ssMmブルーマール×ssMmブルーマール
* SsMmセーブルマール×ssMmブルーマール
* SsMmセーブルマール×SsMmセーブルマール
問題になるのはMMブルーマール(ホモ)の組み合わせ遺伝子がでる繁殖なのです。
このMがホモ(M)である場合、マールホワイトと言い、ほとんど全身が白っぽくなります。
これはマール因子Mとは別のホワイト遺伝因子の影響で
白色部分が多くなったホワイトの犬種とは違います。
また、突然変異のアルビノとも違うのですが、体質的には同じ様に虚弱です。
致死遺伝子をもっているため、死産する場合も多く、子犬の死亡率も高いのです。
また、老化も早いようだと言われ、あまり長生きしない傾向があります。
生存しても聴力が弱い犬が多く、耳が聞こえないこともあります。
眼球が無かったり、あっても眼球が小さかったり盲目であったりすることもあるのです。
見た目に正常であっても心臓に奇形を持っている犬が多いとも言われています。
このように生まれながらにして不幸な子犬を作出するような交配は避けなければなりません。
ブルーマールはMを持っていることが外見上明白なのですが、
セーブルマールの場合、外見上はMを持っていることが分らない場合もあります。
見た目には普通のセーブルでも遺伝学的にはマール因子Mを持っていることがあるわけです。
それを知らずにセーブルマール×セーブルマール、セーブルマール×ブルーマールの交配をすると
マール因子(MM)を持った不幸な子犬が生まれる可能性があるわけです。
交配の際にはセーブルマールかどうかを把握していなければならないわけです。
また上記のようにセーブルはブルーマールと交配するとセーブルマールが生まれくる可能性があります。
この場合、ホモセーブルSSかヘテロセーブルSsかは関係ありません。
セーブルマール自体にはなんら障害は現れませんが、長い目で見ると
セーブルマールが生まれてくる交配もできるだけ避けたいものです。
近年はダックスフントなどで珍しい毛色に人気がでるため、無理な繁殖が行われることがあります。
また知識のないままでの繁殖によって不幸な子犬が産まれることもあります。
安易な繁殖をしたり、珍しい毛色を求めたりすることは止めましょう。
生まれながらにしてマール因子(MM)を持っていることが原因の
障害のある不幸な犬は人の手によって作り出されているのです。