みたくない夢
しあわせな家族の夢
とても楽しくて にぎやかな夢・・・

でも みたくない夢
それはもう 叶わない夢だから・・・


あれから眠るのがとても辛くなった                                       真琴がいなくなってしまったあの日から



TV画面には放送終了のテロップが流れている
今日もまた最後まで見ていたらしい
べつにみたい訳じゃない
ただ なにか時間がつぶせればいい眠らないでいられるのなら 夢をみないでいられるなら

階段の降りる音がする
名雪だろう
「祐一、まだ起きてるの」
「ああ」
「最近ずっとだよ」
「ああ」
「夜更かしは体に悪いんだよ」
「わかってるよ ガキじゃないんだから」
すこし荒いいいかたになってしまった
そんなことはわかってる だからそっとしておいてくれ
「そうだね」
悲しそうに名雪がつぶやく
「もう 寝るよ」
短くそう答えるとTVの電源を切りリビングの電気を消して自分の部屋に帰った
これ以上話してると 名雪に八つ当りしてしまいそうだった
そんなことしても意味がない事を知っていても

部屋に帰っても眠りたくはなかった
しかし 体は眠りを要求してくる
そう どんなにしても眠りはやってくる
今日も知らぬうちに眠りに落ちていく
決してありえない夢を見せる為に・・・・・



「祐一ー 朝だよおきてよっ」
「うん?」
「まだ おきない こうなったら」
なんだか口の周りがくすぐったいなんだか気持ちいいぞ
「わっ わっわっ」
なんだか騒がしいし 
と目を開けてみるすると目の前にはピロの姿が
そして 口のまわりには・・・
「うわっ 真琴 何てことするんだ!」
「あはっ おきた」
「起きたじゃない なんてことするんだっていってるんだ」
「だって 祐一がおきないからおこしてあげたんだよ」
真琴は得意げだ
「おこしかたってもんがあるだろうが」
「いいじゃない おきたんだから」
「よくないっ!」
「もうそんなことより朝ご飯できてるよ」
といって真琴は出ていく
「こらまて おいっ」

平穏な朝
たわいのない悪戯
あたたかい陽射し
完全な幸せ 一番望んでる姿・・・・・
一番みたくない夢
胸が痛む
決して叶わぬ夢



そしていつのまにか目が覚めている
目には涙が乾いた跡がある
なみだのあとををぬぐう
時計を見るとまだ6時回った所だ
しかし もはや 眠りなおす気などない
最近時間をつぶす為に朝 夕 ランニングを始めた
時間をつぶす為 そして 疲れれば夢をみなくなるだろうという理由から
転びそうになるから速くは走れない
ゆっくりと近所を一周する
それから学校の準備をして
名雪を起こす
いつもどうりに
真琴がいなくなっても相変わらず同じことを繰り返す
朝食を食べにキッチンにいく
「祐一さん、おはようございます」
といいながら トーストが目の前に置かれる
最近の俺の様子に秋子さんは何も言わない
ありがたかった
名雪が遅れてキッチンにやってくる
しかし俺は先に学校へ行く為に家をでた

学校では努めて普通に振舞おうとした
天野との約束があるから
今日も何事もなく1日が終わる
また夜がやってくる
あの夢を連れて
そして俺は眠りに落ちていく
あの夢の中へ



おれは外出しようと廊下に出ると真琴が立っている
「あれ?真琴なんでそこにいるんだ?」
「なんでって 真琴も水瀬家一同のひとりだもん変じゃないでしょ」
真琴はふんぞり返りながら言う
「それとなに? ここに真琴いたらいけないってでもいうの?」
「いやそうはいってないだろう」
うろたえるおれにさらに真琴は
「結婚もしたしね」
満面の笑顔で言う
「はぁ?だれが?」
「真琴が」
「誰と?」
「祐一と」
「熱でもあるのか?」
と頭に手を持っていこうとすると
「熱なんてない!!」
「知ってるか?15歳以下は結婚できないんだぞ だれだ?真琴にウソ教えたやつは」
「ひどいっ祐一 真琴と結婚式したのに」
やばいっ本気で涙ぐんでる
「あらあらどうしたの?」
秋子さんが騒ぎを聞きつけて上がってきた
「祐一がぁ〜祐一がぁ〜」
「あっこらまて」
秋子さんの方に駆けて行く
秋子さんに泣きつく真琴
「だめですよ 祐一さん 奥さん泣かしたら」
「ぐはっ」
「あれ 真琴どうしたの?」
名雪まで でてきた
「だめだよ祐一奥さん泣かしたら」
「かはっ」
さすが親子だ言う事が一緒だ
しかしこうなってはどうにも分が悪い
素直に謝っておこう
「ごめんな真琴冗談だ」
「あう〜〜〜〜」
まだ機嫌が直らない
「そうだ 真琴お詫びに肉まん買いに行こう
たくさん買ってもいいぞ」
「ほんとに? 真琴たくさん買うよ?」
「おう たくさん買おう」
「たくさん たくさんかうよ?」
「おう たくさん たくさん たくさん買おう」
少し考えた顔したあと いつもの笑顔で
「うん」
「じゃあ いこうか」
「うん」




同じ夢の繰り返し
幸せな夢の繰り返し
辛い夢の繰り返し
いつまで続くのだろうか
真琴を忘れるまで?
一生かけても無理だ忘れられるはずがない
あの不器用で意地っ張りで天邪鬼で
そして とても 寂しがりやなあいつを忘れられるはずがない
だとすれば この夢は繰り返されるのだろうか
いつまでも いつまでも・・・・・




春が訪れはじめた
真琴が好きだと言っていた春が

そんなある日
「祐一ねえ来て来て」
名雪が叫んでる なんだろうか
降りてみると名雪はヒドイ有様だった
「ねこー ねこー」
ピロだったピロが帰ってきていた
「止めたのに聞かないのよね」
と嬉しそうに秋子さんが微笑んでいる
「帰ってきたんですね」
「そうみたいね これでまたにぎやかになるわね」
「でも名雪のやつ後が大変だ」
「そうね 大変ね」
そういいながらも秋子さんは嬉しそうだ
なんだかおれもうれしかった
こんな気分は久しぶりだった


最近学校で天野と話しをするようになった
天野も最近すこしづつ変わり始めているように思える
「いいお日柄ですね」
「天野は相変わらず、おばさんクサイな」
「ひどいですね。物腰が上品といってください」
「約束は守って下さっているようですね」
「ああ。元気だけが取り柄ようなものだ 心配ないよ」
「そうですか。良かったです」
「また、あの子たちは・・・あの丘を走り回っているんでしょうかね」
「だろうな」
「小さな営みの中、小さな命が生まれ、育まれて・・・・」
「そしてまた・・・人の温もりに憧れる子がでてくるんでしょうか」
「そうかも・・・な」
「でもそれは仕方がないですね。あの子たちの性分ですから」
「さすが、昔話になるだけのことはあるってことだな」
「でもあの丘に住む狐が、みんな不思議な力を持ってるのだとしたら」
「たくさん集まればとんでもない奇跡を起こせる、ということでしょうね」
「だとしたら、相沢さんなら、何をお願いしますか?」



帰ってみるとピロが妙な物をくわえていた
それは 泥で汚くはなってはいたが間違いなくあの時のブーケだ
「どこで見つけてきたんだ?」
しばらく眺めていたがピロがしきりに鳴きはじめる
なんだろうとおもっていると門の方に走ってまた鳴きはじめる
ほっておいても良かったのだがなんとなく暇つぶしに付き合ってもいいかな
そんな気分になった
ずっと ピロの後をついて行く
ピロも人が歩けるところを選ぶように歩いてるみたいな気がする
もちろんそんなはずはないのだが

「ネコの散歩ッていうのもめずらしいよな」
そう思いながらもついて行くとある事に気付く
この道はあの丘に続く道だと
そしてそれは確実なものになる


薮が多くなるとピロのほうが断然速くなる
追いつけなくなり見えなくなってしまう
しかし どこに行ったかは分かる
あの場所だ 
真琴の消えた場所
そして それは正しかった
ピロは丘の真中で気持ち良さそうに眠っている
その傍らには・・・・・


おれはその横に腰掛けた
起きたら何て言おう
イロイロ考えてる内に自然と眠くなってきた
しかしもう嫌な夢はみないだろう
それは 現実となったのだ
もうそれは 嫌な夢ではない
これから起きるであろう大切な大切な未来
そうして眠りにつく
これからの事を夢見て




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