6、秘めたる力
午後の授業が行なわれている。女教師が生徒に注意した。
「こら!!、田中君、また居眠りしてるでしょう」
窓からは心地よい秋の風がゆらりと流れ、
生徒は皆、眠たそうにしている。
「皆、もっと集中するのよ、後すこしで終わりだから」
恵が健太の顔をのぞき込む。
「今、寝てたでしょう」
「何、言ってんだ、ちゃんと目を開けてるだろう」
「だって、あんた目を開けて寝るのが得意じゃない」
「お前こそ下向いてるふりして寝るなよな」
女教師が光を指名する
「じゃ、この問題を中谷君、黒板で解いてくれる」
「は、はい、わかりました」
光が立ち上がり黒板の方へと歩く。そして生徒の前に出た時、
光はなぜか無意識にしゃがみ込んでしまう。
その瞬間、教室の外から鈍い音が響き、教室の窓ガラスを粉々に割って、
青白い光線が中に差し込む。
「ズトーン」
そして光線は光の頭をわずかにかすめて本棚に命中した。
「ボン」
本棚は黒焦げになってしまう。
そして、その本棚をみて誰かが叫ぶ。
「きっとまた、PPPのテロよ!!」
「キャーたすけて!!」
「隠れろ!!」
教室は大混乱になる。
光は机の下に潜り込んだ。
「どうしよう、そうだあいつ、藤谷ならまた助けてくれるはずだ!!」
光は藤谷の方を見た。そして呆気にとられる。
「え、なぜなんだ・・・」
そこに生徒が皆、恐怖に震える中で、ただ一人席に座り、いつもの様に
窓の外をぼんやりと眺める藤谷が居たからだ。
結局、青白い光が放たれのは一度だけだった。
公安警察がすぐ調査に乗り出したが、PPP教団のテロ活動時にはいつも
決まって現れた、連合軍の特殊部隊は出動はしなかった。
そして、その日は授業が中止になり。生徒たちは全員下校するよう
に言われた。
光はきっと藤谷が今度の事で何かを知っているばずだと思い、
どうしてもそれを確かめたかった。
そして、光は校門の前で藤谷が来るのを待った。
そこに、校舎からで出来た藤谷が来た。
藤谷は何も言わず、光の前を通り過ぎた。
光は藤谷を呼び止めた。
「藤谷は何か知ってるんだろ」
藤谷は立ち止まり振り返った。
「何を」
「さっきの事・・・」
「そんなに知りたい?」
光はうなずいた。
「うん・・」
「あの青白い光は、中性子レーザーライフル銃の光線よ」
「ライフル銃?」
「そう、一キロ先の標的を正確に打ち抜く事が出来る」
「何の為にそんな物・・・」
「きっとあなたを狙撃するためにね」
「どうして僕が命を狙われるんだ。何もしてないのに」
「それは私にも解らないわ」
藤谷はさっさと帰ろうとした。
「さよなら」
「まてよ!!」
「私にどうしろて言うの、助けてくれとでも言う?」
「恐いんだ僕は・・」
「まだ解らないの!!」
藤谷が光をにらみつけた、光は藤谷の怒った顔を見るのは初めてだった。
「あのレーザー光線が頭に命中する瞬間にあなたは避けたのよ」
「それは普通の人間ではとても考えられない事だわ」
「この僕が・・・・」
藤谷は少し光の方に近づいてこう言った。
「誰かがあなたを守るんじゃない」
「あなたが誰かを守るのよ」