4、目覚め
光は病院のベットで寝ていた。
あの惨事から、二日がたつと言うのに、意識は
戻らなかった。
医師の話では、脳波、心電図等何処にも異常は
無く、ただ眠っているだけだと言う。
ベットのすぐ横には、母の玲子が座っていた。
光は、父と母と姉の4人家族だった。
光が中学一年の夏休みの事である。
玲子は仕事の都合で行けず、父の正造と姉の
有紀の三人で旅行に出かけた時に、PPP教団の
テロに巻き込まれてしまった。
正造は、いのちがけで有紀と光を守り、その場で
息絶えた。
そして、有紀も運ばれた病院で、次の日の朝、
息を引き取った。
光は無事だった。
たくさんの人か゜亡くなったと言うのに、かすり傷
一つさえも追ってはいなかった。
そして今、玲子は、このまま光の意識が戻らなけ
れば、自分も死のうと覚悟を決めていた。
玲子は光の手を握り寄り添うように顔を光の胸に、
近づけた。
目には涙がたくさん浮かんでいた。
そしてしばらく泣き崩れてしまった後、光の胸の上で
眠ってしまった。
玲子は夢を見た。
そこには正造と有紀が立っていた。
正造の腕には赤ん坊が抱きかかえられている。
どうやら、光の様らしい。
そして正造は、その赤ん坊を、玲子に渡し言った。
「たのんだぞ、この子は将来、新しい光を産み出す
事に為るはずだ」
「お母さん、光は泣き虫だから、いつもいっしよ
に居てあげてね」
有紀が言った。
玲子は目を覚ました。
そして光の顔を見た。
その寝顔は、これまで何度も辛いことを、経験して
きた子とは、とても思え無かった。
玲子は光のほほを優しく撫で、そっと顔を近づけて
ささやいた。
「もう、起きなさい、光」
光のまぶたが少し震えた。
そしてゆっくりと開いた。
「ここは何処、あれ、お母さんどうして泣いているの」
「ありがとう、あなた、有紀」
玲子が言った。