3、やさしい瞳

 

「今日の授業は、午前中でおわりです。」

「明日は中間テストです。高校受験に備えて、

最初の大事なテストだからしっかり勉強して来る

様にね。」

「さあー帰って寝るかー」

 健太が言う。

「さすが !すごい余裕ね」

 恵が言う。

「きっとあきらめているんだよ」

 光が言った。

「なにーこの野郎、当ってるじゃねぇか」

「ほら喧嘩しないで、そうだ3人で今日勉強しましょうよ。

私の家、出かけて誰も居ないから」

「そうだな、たまには勉強でもするか、光、お前も

こいよな」

「うん、行くよ」

「あ、そうだ藤谷さんもどういっしょにどう」

 恵が言う。

「来いよ、光が喜ぶぜ」

「な、なんだょー」

 光の顔が赤くなった。

「私、用事が有るから、ごめんなさい」

 藤谷が言った。

「そう、残念ね。じゃ皆、昼飯食べたらきてね。

待ってるから、バイバイ!」

  恵が教室を出た。

「俺、部室に寄ってから帰るわ、じゃな」

 健太も教室を出た。

 藤谷と光も教室をでた。

 

 帰り道、光は藤谷が自分と同じ道を歩いているの

に気づく。

「もしかして、家が近いのかも知れないな」

 もう一度振返ると、彼女はいなかった。

 よく見ると地下鉄新宿線の駅の入り口に入っていった。

「何処へ行くんだろう。まいいか明日はテストだし

早く帰ろう」

 光が歩こうとした時、頭の中に藤谷の顔が

浮かびあがった。

「やさしい瞳、なんだか大切な物の様な気がする」

「何処へ行くんだろう」 光は後を追ってしまった。

 

 地下鉄の車内、光は藤谷の隣に座っていた。

「僕は、どうしてこの電車に乗ったんだろう、

そうだ藤谷・・・」

 電車はカーブに差し掛かっていた、その時、ドカンと鈍い

音がしたかと思うと停止してしまった。

「キャー、助けて」

 若い女性の悲鳴がきこえた。

 光は窓ガラス越しに前の車両を見ると、黄色の煙が

立ち込めていた。そして乗客が倒れ、苦しんでいるのが

見えた。

「まさかPPP教団のテロ」

 光が恐怖で震え上がったその時、

「ハンカチ持ってる」

 藤谷が言った。

「持ってるけど」

「死にたく無かったら、この液体をハンカチに

染み込ませて口に当てるのよ」

 液体の入った小さなカプセルを、藤谷が光に渡した。

 藤谷は、すでに口にハンカチを当てていた。

 やがて前の車両との連結器の扉から黄色の気体が

入ってきた。そしてまるで生き物の様に、あっと言う間に

車内に広がった。

 そして乗客が次々と倒れていった。顔には紫の斑点が

出来ていた。

「何なんだよ!この煙は一体」

 光が叫ぶ

「拡散型細菌兵器 R308 よ」

 光の前には、同い年ぐらいの少女が倒れ苦しんでいた。

「その子に触れば貴方も感染するわよ、そして確実に

死ぬわ」

 藤谷が言った。

「そんな、こんなに苦しんで要るじゃないか。

ほっとけないよ」

「じゃ好きにすれば、無理には止めないから」

 藤谷が言う。

「みんな、みんな死んでいく、あの時と同じだ。

父さん、有紀姉ちゃん死なないで」

 光の意識が段々と、薄らいで行った。

 

 

 

 

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