２、２０３０年

　

　ここ数年科学の進歩は、目を見張る物があった。

　人々の交通手段でも有る自動車は、有害な排気ガスを

排出する事無く全て動力は、電動化そして運転は自動化

され、交通事故も殆ど無くなった。

　また死亡原因一位であった癌も、悪質な細胞を中和する

遺伝子が、人間自らの体の中から発見され、風邪と同じよ

うに、治療されるようになった。

　だだ大きな問題が、浮かび上がった。人口増加である。

　医学が進歩した反面、人類の平均寿命が伸び

高齢化社会が進んだ為である。

　高齢化社会は、食料､住宅等様々な問題と重なり合って、

やがて貧富の差が拡大していった。

　そんな人々の荒んだ心に付け入るように、アメリカで

一人の男が宗教を開いた。

　ジョンソン神父率いるPPP教団だ、

　彼は自らを宇宙からの使者だと言い、貧しい人々たちを

中心に急速に信者を全世界に拡大していった。

　やがて彼らは宗教活動だけに留まらず、軍隊までも

持つようになった。

　そして内戦とも言える様な衝突が各国で起き、世界人口の

約５パーセントの人々が尊い命を失った。

　各国それぞれがその勢いに恐れおののいている時、ある

提案がアメリカから発せられた。

　国際連合を発展させ、全世界を一つの統一した国家にする

案である。

　もはや選択の余地は無かった。まず欧州各国がこれに同

意し、続いてアフリカ、アジア各国も同意した。

　日本も２０２９年の国民緊急投票で７０パーセントの指示を

得て可決され、政府は２０３１年をもって連合国に加盟すると

発表した。

　人類はやっと気づいたのだった、巨大な敵に立ち向かう為

には国境を捨てて一つに為らねば成らない事を。

　そして事態は沈静化し、やがてジョンソン神父は地下に

潜伏する様になり、小規模なテロ活動が行なわれる

様になった。

　そのテロ活動は、人間に対して人体実験を行なっている

ようでもあった。

　

　連合国の名は、Ｕ２ と名づけられた。