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アリオン

アリオンは名高い音楽家でコリントス王ペリアンドロスの宮殿に住んでいました。ある時、シチリアで音楽の競技会があることを知ったアリオンは、この音楽競技に参加したいと王に懇願しました。しかし、不吉なことを感じたペリアンドロス王は彼を思い留まらせようとしましたが、アリオンの意志は強く、ついに音楽競技への参加を認めました。

アリオンの音楽の才能は素晴らしく、この競技会においても見事優勝し多額の賞金を手にして、意気揚々とコリントスへ帰る船に乗り込みました。出航後は穏やかな天気で順調な風が吹いていました。しばらく航海を続けていると、なにやら水夫達が怪しげな合図を送ったり、こそこそしているのに気づきました。水夫達はアリオンの持つ富を狙っていたのです。突然彼らがアリオンを取り囲み大声で叫びました。

「アリオンよお前に死んでもらわねばならない、陸に墓が欲しければ大人しくここで殺されろ、そうでなければ海に飛び込むが良い。」

「お前達は、私の命が欲しいのか。もし賞金が欲しいのなら、私はその賞金で私の命を買おう。」

「いや、俺達はお前を生かしておくことが出来ない、もし、お前がペリアンドロスにこのことを伝えたら俺達の生きてゆく場所がなくなってしまうからな。」

「そうか、では、私の最後の願いを聞いてくれ。私は、私の死の歌を歌いたい。その歌が終わったら私は潔く海にこの身を投げ込もう。」

いまや、海賊と化した水夫達はアリオンのこの最後の願いを聞き届けました。アリオンは船崎に進み出て、青い海を見下ろしながら竪琴に思いを込めて唄い、そして、海へ身を投げたのです。水夫達はこれで露見することは無いだろうと考え船を進めました。

しかし、アリオンの歌声は、海のものをも引き寄せていたのです。彼が海の中でもがいていると一匹のイルカが彼を背中に乗せ無事、コリントスの海岸まで送り届けたのです。

コリントスに着いたアリオンはすぐにペリアンドロスの抱擁で迎えられました。アリオンの災難を聞いたペリアンドロスは直ちに港に出向きアリオンの賞金を奪った水夫達を取り押さえました。このとき、アリオンが血を流すことを嫌ったため、彼らは皆、国外への追放となりました。