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時間の話

 前の章で見たように、すべての天体は天球上に張り付いていて、地球の周りを子午線を東から西へと通過するかたちで回転しています。このとき、子午線を通過する瞬間の天体の赤経を、その土地(観測地)の『恒星時』と呼び、ある星が子午線を通過し、再び子午線に戻るまでの時間を『一恒星日』と呼びます。これに対し、太陽が子午線を通過するときを『正午』と名づけ、正午と次の正午との間隔を『一日』とする表現法を『太陽時』と呼び、正午から次の正午までの時間を『一太陽日』と呼びます。しかし、この方法での太陽時は一日の長さが一定でなく、季節によっては一日に数十秒もの誤差ができてしまいます。この原因としては、次のような事が考えられています。

  1. 太陽の通り道である黄道が赤道に対し約24°傾いているため、仮に太陽が黄道上を一様な速度で進んだとしても、赤経の増加は一様にならない。
  2. 地球の公転軌道が楕円であるため、その公転速度は軌道上の位置によって異なる。(ケプラーの法則、後でやります)

 いずれにせよ、一日の長さが不均等である事は非常に都合が悪い!そこで、このような太陽の変わりに、天球の赤道上を一様な長さで動く理想的な太陽を考え、これをもとに一日を規定する事が考えられました。これが、『平均太陽時』です。その名の通りこの理想的な太陽は長年の太陽観測の蓄積に基づく平均値が用いられています。

 地球が太陽の周りを回る事を『公転』といいます。公転一回分がすなわち一年ということになります。恒星の張り付いている天球はこの一年の間に366.2422回の回転をします。つまり

1年 = 366.2422 恒星日

と、いうことになり、一年は366日で約4年に1回うるう日が・・・?おかしいですね、一年は365日で4年に一度うるう日があるはずです。実は太陽は先にも少し話しましたが天球に張り付いているわけではありません。西から東に向かって一年かけて一周しているのです。このため天球が一回転して星々が元の一に戻ってもその頃には太陽は東に少し動いてしまっているのでもう一息動かないと太陽は元の位置に戻らないのです。天球上を一周するということはちょうど一日分の動きに相当し、平均太陽時での一年は恒星時での一年より一日分だけ短くなり

1年 = 365.2422 平均太陽日

となります。

 最後に少し、時間の話をします。通常『一日』というと太陽が南中してから次に南中するまでの時間をいいます。これは古代メソポタミアの遥か以前から存在する時間に関する重要な考え方です。この一日を24等分したのが1時間、さらに1時間の60分の1が1分、この60分の1が1秒であることは皆さんご存知の通りです。・・・が、実は現在の『時・分・秒』の定義はこれとは違うのです。現在ではまず『1秒』が定義されその60倍を1分、さらに60倍を1時間と定義されています。では1秒はどのように定義されているのでしょうか。1956年には『1900年の1年の長さの1/31556925.9747』を1秒と定義されていました。ここで1900年という特定の年を選ぶのには理由があり、地球の一日の長さが100年でおよそ1/1000秒ぐらい長くなるということがわかっているためです。この変化は月の潮汐力により、地球の自転にブレーキをかけているために起こると考えられています。また、これ以外にも、地球内部の液状核の運動と考えられている変化や、固体の地球と大気との運動量の交換に関わると考えられている周期的な変動などの変化があり、1年の長さが厳密には一定でないため、正確に1秒を定義するには、特定の年を指定する必要があったためです。

 しかし、後に(1967年)より安定した精度の高い時間の定義として『セシウム(133Cs)原子の特定の放射の9192631770周期の継続時間』として定義され、現在に至っています。