天使は瞳を閉じて
ミュージカル


10年以上前、「天使は瞳を閉じて」という芝居の1シーンを見た時の衝撃は今も忘れない。 何度も何度も繰り返し繰り返し家族が呆れるほどにビデオテープを見ていた。戯曲を何度も 何度も読み返した。ビデオも見た。DVDも見た。「コーマ・エンジェル」も見た。そして、 ミュージカルとはいえ、ついに「天使は瞳を閉じて」というタイトルの作品を鴻上演出で 見ることができた。このタイトルだから私には意味がある。天閉じ?丼ものじゃねぇ! 誰だ!そんなアホタイトルで呼ぶ奴はっ!?許しがたし。私の思い出を汚すな。(←八つ 当たり)

見る前は不安しかなかった。だからチケットも1回しか取らなかった。だってミュージカルに なっちゃってるし。知らない間にユタカが主人公になってるし。槇原作曲じゃなくなってるし。 何でだ、これは本当に何でなんだろう?私は「槇原のりゆき作曲」とでかでかと書かれた チラシを今も持っているというのに。あ、話それた。
でもそんな不安は不要だった。 逆に1回しかチケットを取らなかったことを本当に後悔した。おもしろかった。そして、すごく 泣けた。泣いた。やっぱり私はこの芝居がとても好きなんだと本当に思った。もちろん、 第三舞台版は絶対に超えない。生で見たわけじゃないのに、私にとってバイブルみたいな もんになってる。このミュージカルは、第三舞台版とは違う場所にある。比較対照ではない。 そう思わせてくれた役者さんたちに感謝。歌も良かったしね。CD買っちゃったし。結構 曲覚えてるつもりだったけど、どうしても天使の羽が降ってくるあのシーンでは「人に やさしく」しか思い出せない。私の記憶では「人にやさしく」をBGMに天野っちが「見るな!」 と連呼している風に勝手に変換されている。ど、どんな歌だったっけ?
そう、そのシーンもそうだけど「何で羽が降ってくるの?」とか今回でようやく意味が わかったよ。(多分) 天野っちの「見るな!」のセリフが加わっただけでこんなにも印象が 違うとは。・・・というシーンがたくさんあって、いかに自分が感覚的に勝手に受け止めていた だけかを再認識・・・。ナイフを手にユタカの背中を思いつめた顔で見つめ、刺そうとして 刺せなくて・・・というケイの表情も今回初めて気づいたし。家に帰ってDVD見たら 長野さんちゃんとそんな演技してたし。見落としてた!!うーん、発見。
役者さんたち全員すごく良かった。(第三舞台組2人だけはこの後たっぷり語る)
特にヒットしたのが辺見えみり。最初不安の対象の1人だったのだけど、「やけにかわいい マリちゃんだこと」としか思ってなかったの。若くてかわいくて、それはもちろん良い印象 なんだけどでもそれでしかない・・・みたいな。(そういやユタカとマリがいちゃいちゃして るシーンで天野っちとあっくんが本当にキスしてしまったよ) とーころが!! ユタカのためにトシオを 誘惑する時のあの豹変振り。「痛みなんて・・・すぐに忘れるわ」のあのセリフと表情に 女の私がどきっとしたよ。いや、いいよいいよ辺見えみり。「LOVEのラの字が見えない のかい?!」のシーンも好きだけど、今回のシーンも非常に大好き!!

不満もなかったわけじゃない。言わなくてもいいんだろうが、強いて言うならチハルは もちっと若い人がやった方が・・・。生方さん好きなんだけど、ユタカとマリとセットで 考えるとバランスが・・・。あとテンコちゃんの「見たくないものなんてないよ」という セリフはカットしないでほしかったなぁ・・・。というか、「見たくないものが見えて」という 歌詞に変わってるし。あと「神様が旅に・・・」の詩があって嬉しかったけど、短かった。 ちょと残念。腹筋ソングはいらんかったと思う。あれは寂しそうにひっそりでも 一生懸命腹筋してるから 笑えるのに、あんな主張しなくても・・・って思ったです。
でも、正直どうでもいい ことなんだよね。不満っていっても、でも、"OK,OK.It's no problem."みたいな。

さて、語るか。まずは京さんだ。最初からとにかく「腹筋が!」という感想を見ていて、 「え?腹筋?脱ぐの?」とか思ったけど本当に腹筋すごかった。割れてた!思わず腹ばかり 見てしまった。そして、いやーかっこいー。演説のシーンはかっこよさの頂点だと思う。 っていうか、そこで「朝日のような夕日をつれて」のダンスが入ってるところに鼻血出るかと 思った!きゃー。マリちゃんとのシーンも好きだし。筧さんのトシオとまた違ったかっこよさ があって、たまりませんでした。あと、テンコちゃんに「トシちゃん」と呼ばれた後に 「議長だろ!?」とすごむシーン。「もう戻れない」ってのがあの一言の口調ですごく 伝わってきて、それがとても切なかった。
で、マスターだ。大高さん。私はもうこの人の マスターが見れただけでもうチケット代お釣り来るよ。泣いたよ。泣けたよ。「傷つけば 傷つくほど底意地の悪くなる奴だっているよ」という大好きなセリフをあのやさしい口調で 言われた日にゃ、ケイじゃなくても「ありがとう」と言いたくなる。ずっと天使として 受け持ってきた区域が崩壊していくのを、マスターはどんな気持ちで見ていたんだろう。 皆が感情をむき出しにしている中で、「見つめるだけの存在」という天使時代のクセが残って いたのか、皆の前では常に感情を押し殺していたマスター。でもウソが下手だから 隠しきれなくて、切なさも悲しさも泣きたい気持ちも全部表に出てしまっていたマスター。 大高さんのマスターには、涙止まらんかった。

とにかくこれは話がとても素晴らしい。色あせない。名作。誰が何と言おうと私に とっては輝いてる作品。しかも、こんだけ熱く語っていても全然「ミュージカル」の 感想じゃないところが素敵。えーと、ミュージカルの感想は・・・。佐藤アツヒロの 「さよなら」という歌は非常に良い歌だったのにCDに収録されていませんが、どういう ことでしょうか?ん?
そういや、最初から私は泣きそうだったの。天野っちの、 「街は幸福だ」のセリフで毎回胸がうぐってつまった。明らかに幸福じゃなくなってきている のに、それでも報告書に毎回「街は幸福だ」と書いて、そして帰る・帰ると言いながら 「僕はどこにもいかない」と言う天使。泣ける。どんどん崩壊に向かう、とても悲しい お話。でも、大好き。悲しいだけじゃないから。

「おや、そこにいるね。さぁ、握手をしよう」
このラストシーンは思い出しただけでも 涙が出そうになる。そして、その時の大高さんの笑顔にも。確かにこの時は、「街は幸福だ」。

今回は劇場の人に怒られようが!と思いながら、羽をもらって帰ってきた。私に とってのコーマ・エンジェルになるのかな。「誰にでもやさしくなれる気がする」そんな力を 持った、天使の羽。とても、とても良い芝居でした。DVD悩む。(悩むなよ)

ところで、これってユタカが主役っつってたけど、ユタカはやっぱり主役ではなかった。 というか全員主役なんだよね、これ。誰を真ん中に持ってきても話が成立するから。 強いて言うなら、天使かテンコ・・・かな?

(11/29 18:00 ル・テアトル銀座)

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