ピルグリム


多分、私が初めて購入した鴻上さんの戯曲は「ピルグリム」だったと思う。その頃はまだ 鴻上さんの芝居を生で見たことがなく、ビデオとかもなかったから頭の中で一生懸命想像して 戯曲を読み進め、そしてその言葉の持つ迫力とか力とか何か何とも言えないものにKOされていた ような気がする。私はまだ20歳そこそこだったかなんかで、全てを理解するにはまだまだ経験も 知識も感受性も全てが足りなかったけれど、それでも私はあの話に「やられた」と思った。 私の心に衝撃を与えるに十分な話だったと思う。
「あなたたちにとって私は必要な存在であり、そして同時に不必要な存在だった」といったことを 語るシーンがあるけれど、あの言葉は私には重かった。そういう感覚を「あなた」の立場からも 「私」の立場からも理解できてしまっただけに、重く、とても痛かった。

そのセリフと心が受けた衝撃とともに、私の中で「ピルグリム」はどこか特別な位置に 存在する「戯曲」となってた。

だから正直「ピルグリム」再演というNewsは私にはものすごいものがあった。

当初見る予定だった 千秋楽は仕事の都合で見れなくなり、前半にとったチケも体調不良で行けなくなるかと思ったが 親にも嘘ついて(ごめんなさい)逃げるように劇場に向かった。あの新国立のロビーで開場前に おにぎりを必死で食ってたのは私です。薬飲まなきゃいけなかったからしょうがなかったんだよぅ。

私は、第三舞台版を知らない。それが幸か不幸か、今回の芝居に素直に感動した。そうは 言っても不満がゼロなわけではなくむしろ不満だらけだったりするんだが、それでもあのラストシーン を見ただけで私は十分感動したのだ。
あえて不満点から言うと(←言うなよ)、とりあえず「きょーへい」役の彼。どうよ、あれ。あと ニューロマンサーの彼女。どうなのよ、あれ。そしてあのいけてないラップは何なのさ。あと、 マッドサイエンティストの天宮さん、声聞こえないし。たくさん出てくる「その他大勢の人々」も 私は特にいらんかったし。そして演出の指示だろうが仕方なかったのかもしれんがそれでも何でも 右近さんが。右近さんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ごめん、全然あわなかった。駄目だった。 まったくもって駄目だった。全てにおいて駄目だった。多分歌舞伎見てたらそんなこと少しも 感じなかったと思うのだけど、今回あの役には全く似合ってなかったと私は感じた。駄目だった。 ああ、もう(以下エンドレス)
1番謎なのはあのコンピュータシステムなわけだけど。戯曲は伝言ダイアルで、まぁそういう 時代だったからなんだろうけど「オアシスダイアル」につながったりかなり重要な役目だったのに 対して、今回は単に「六本木がネットワークとかコミュニティに興味を持つ」為だけの存在だった のが何ともかんとも。その為だけの存在なら、あそこまで細かに説明する必要はなかったんじゃ・・・ 。と、思うんだよね。もっと短くなったんじゃ?って思えて。
あと、佐藤さんの使い方が勿体無かったような気がする。何もハラハラじゃなくても良かったんじゃ ないかなぁーって思うと。
不満点だらけのような気がしないでもないが、富田さんは良かった。山本君も良かった。 タンジェリン・ドリームの宮崎さんも良かったと思う。富田さんは 特にペンギンになった時がかわいかった。不覚にも「いいのよ大丈夫、あなた自身があなたを 否定しちゃ駄目よ、肯定ペンギンでっす!」には笑った。(カーテンコール、ペンギン姿で かわいかった) あと、きょーへいの彼の演技は嫌いだが鏡の洞窟のシーンは大好きなので 許す。(←偉そう) あそこ好きなんだよー。

大森さんは絶賛。そしてもう最高だね、山下さん。泣けたよー、テンクチャーが六本木を 殺そうとする時に突然声をつまらせて「あなたを愛していました」と言う時なんかもう・・・。 大森さんはもともと「良さそう」と思っていたけど、その通りだった。想像以上と言っても 良かったかも。私が何度も何度も戯曲を読み込んでいたので、勝手に想像されていた大高さんの 黒マントを良い意味で壊してくれたと思う。私は坂の下にある日記の話のとことかすごく好き なんだけど、大森さんの語りは引き込まれた。

ラスト、黒マントが笑ってマントを翻した瞬間に「LIFE IS LIVE」が流れ鏡に囲まれた 時、正直鳥肌立った。この劇場そのものが「鏡の洞窟なんだ」ということなのね?ということに 頭が行くまで少し時間がかかった。あのラスト見れただけでも、私はこの再演を見た価値があったと 思ったよ。

(でも、このラストも色々検索すると第三舞台版の方が圧倒的に良かった みたいで、そういうの読んじゃうと「うぉー見たかったよぅよぅよぅ」と思っちゃうんだよねぇ。 見たかったなぁ)

(1/15 19:00 新国立劇場 中劇場)

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