レプリカ/THE ガジラ
(5月18日19時 世田谷パブリックシアター1階G列19番にて観劇)


この芝居の持つ恐さは、実際にあの劇場に流れている空気に触れないと理解してもらえないような気がする。セリフがあるほうがかえって恐くないのかも。ほんのちょっとの音にびくつく自分。暗い照明。ウーマン・イン・ブラックで味わった恐怖をまさかまたもや味わうことになるとは夢にも思わなかった。ウーマン〜と全く違うのは、レプリカにはリアリティがありすぎることだ。人の心を扱っている分、ヘタすると身近な話になりかねない。どっちの方が恐いか、などという不毛な話はしないけど。(←どっちも恐いんだいっ)

たとえば電話の音にびっくりする。一瞬で止まればそれはかなり驚きますよね。でも。ずっと鳴ってたら。もういい、もう止めて。そう思うほどに鳴り響いていたら。それも恐怖のシーンで。ああ、思い返すとぞっとする。見ている自分が狂ってきてしまいそうな感覚に陥る。それでも止まらない。正気を失う、理性を失う。あんな状態の中で、冷静なんかじゃいられない。この芝居はいたるところにそんな演出がある。心の奥の方に知らない間に恐怖を植え付けられているような、そんな感じ。

とにかく、すごいものを見てしまったよ。恐かった。心底恐くて、アンケートにも「恐い」の文字しか思い浮かばなくて本当どうしていいのか全然わからなかった。静かな劇場。静かなロビー。終演後なのに・・・・・。それも恐くて。だって、登場人物みんなおかしいよ。みんな狂っているよ。役者の素の顔なんて見たくもない。恐いから。衝撃的だった。とにかく恐かった。あー、もう何を書いていいのかわからんほどに恐い。

主人公を好きだと言いながら受け止める事はできない医者。主人公が好きで人形をプレゼントし、その人形に盗聴器を取りつけていた男。いかがわしいものを販売する男。マリファナ常習犯な若者。娘に執着する父親。そして、自分を見失い愛した医者の家庭を崩壊させようとする主人公。潤子を演じた若村さんはまさに熱演。いや、みんな上手だったけど、彼女の狂気は見ていて本当に恐かったんです。KONTA演じる医者に『一緒に生きてなんてもう言わないからさぁ・・・・。一緒に死んで?ねぇ、死んでっ!!』っていうあのシーンで私は心臓が止まるかと思った。そう、彼女の行動は最初からどこかおかしい。プレゼントされた包装紙をびりびりと引き裂く。そういった「・・・え?」といった行為に狂気がちりばめられていて、どんどん恐くなっていくんだ。

結局ストーカーといわれていた男は10年も前に死んでいて、ようは娘と心中しようとして娘だけが助かっちゃったんだけど。(←殺したの?)で、父親が娘を脅して籠の鳥にしていた、と・・・・。父親が恐いの。狂っていく様が恐いの。舞台上でみんなが冷静じゃなくなっていくの。それが恐いの。思い出すだけでぞっとする。父親、最初それでも普通に見えたよ。狂気と正気は紙一重・・・?最初、狂気の塊でこいつがおかしい!!って思っていた若者じゃなかったのね、ストーカー。ふぅ、やっと解決・・・・と思ったら。やっぱり怪しいその若者。主人公を眠らせて・・・。そして幕。その後を想像するととても恐い。人形と主人公が常に同じ格好しているんだよね。そしてみんな、その人形を本当の人間のようにいとおしく抱くの。大事に、大事に。愛するものを見つめる目で、みんな人形見るの。若者がしようとしたことは、10年前の心中事件の再現。それで終わっちゃうもんだから、いやいや、後味の悪いことといったらもう・・・・。

カーテンコールはないし、みんなさっさと劇場出てくし、でも、圧倒的な力を見せ付けられたって感じです。演出の力だ、あれ・・・。拍手がないのが逆に評価って風に私は思ってます。それだけ、みんなに恐怖を植え付けたんだと思う。だから、1秒でも早くあの空気から解放されたかったんじゃないかな。

ストーカーの芝居だけど、ストーカー問題だけじゃないっていうか。人の心の闇を描いているんだよね。ん?レプリカって、複製って意味ですよね。・・・・・。今思ったけど。・・・・・・・・複製、ね。マジで恐い。恐いからここまでっ(・・;)

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