LONG AFTER LOVE/tpt
(4月7日19時 ベニサン・ピット1列目19番席にて観劇)


「LONG AFTER LOVE」・・・恋のずっと後。恋を慕う。

このタイトルにはそんな2つの意味があります。三島由紀夫が「卒塔婆小町」「葵上」「斑女」の3つの戯曲をつなぎ合わせ加筆して1つの戯曲とした「LONG AFTER LOVE」、今回は「卒塔婆小町」「葵上」の2つをつなげて日本初演となりました。どちらも主役を麻実れいさんが演じ、「卒塔婆小町」の「詩人」を山本亨さん、「葵上」の「光」を佐々木蔵之介さんが演じました。2つの芝居を共通しての感想は、ただただひたすら、麻実れいさんの演技のすごさと美しさ、です。

「卒塔婆小町」で麻実さんは99歳の老婆を演じます。かつて「小町」と呼ばれた老婆。最初麻実さんはすっと立っています。そして、ストールを頭にゆっくりとかぶせ、そして腰をゆっくりとまげていきます。その瞬間に老婆になるのですが、その美しい事。シーンとして、こんなに美しいなんて!!見惚れるというのは、こういう事なのかと改めて実感しました。そして思い出話が進み、老婆はかつて「小町」と呼ばれた若い頃の姿に戻ります。あくまでも回想なのですが。その戻り方も見事!いきなり若く美しくなったと見えるって、本当にすごい・・。その舞台は今度鹿鳴館。詩人はかつて小町の恋人だった男になり二人でワルツを踊ります。たくさんの感想ページでそのシーンは本当に美しいと書いてありましたが、まさしく!幻想的というのは、ああいうシーンを言うのかもしれません。

彼女を美しいと言った男は必ず死ぬ。だから「言わないで」と繰り返す小町と老婆。たとえ死んでも「美しい」と言わずにいられなかった詩人とかつての恋人。それだけの魅力を実際に麻実さんは持っていたからこそ、その詩人のセリフが生きていたのだと思います。必死に止める麻実さんの演技は、胸を打つものがありました。倒れて行く詩人を見つめる麻実さん。一瞬の至福の為に死んでいったバカな男を見つめる彼女は、とても切なそうでした。

「葵上」はまさしく「源氏物語」の現代版とも言えるものでした。っていうか、まさしくそれ。光の君が佐々木蔵之介さん。美しかった・・・。六条の君が麻実さん。恐かったです。老婆と小町の美しさではなく、本当に怨念のつまった女という感じで、猛烈に恐かった。ベッドで苦しむ葵を見ながら、六条さんは「あなたが私よりも若く美しい女を妻にしたら、私はその女を殺すでしょうね」といったようなことを言います。その時の目が・・・!!葵を見つめる目が、「やる、この女は絶対にやる!」と思わせるものでした。

最後、断末魔の叫びをあげて息絶える葵。私の席の目の前だったのですが、ウーマン・イン・ブラック並に全身鳥肌がたちました。はっきり言ってびっくりして、すっごい恐かったです。

ヨットの上ではしゃぐ佐々木蔵之介さん。少しピスタチオを思い出したのは私だけでしょうか(笑)。ベッドの上に立った瞬間、一瞬パワーマイムをするのではないかとどきどきしてしまいました(笑)。(←するな)六条さんとじゃれる光さんはとってもかわいかった。そして光さんを包み込む六条さん。恐いけど、危険を伴った美しさというものを存分に見せてくれました。

一つ不満があって、どちらの話でも公園でカップルがそれはもういちゃついているのですが、抱合ってディープキスをして「おいおい、それは」というようなこともしていて。「卒塔婆小町」では気にならなかったのですが、「葵上」のラスト、公園で話す光と看護婦の横の警官と女!激しすぎます(笑)。セリフよりも大きい衣擦れの音たてないでほしかった。気になって気になって中央の二人を見れなかった・・・(笑)。やりすぎはどうかと。「葵上」のラストのカップルはまさしく邪魔だった。

劇場そのものの空気も好きでした。ああ、演劇って思わせてくれるというか、その最初から流れている緊張感がこんなにも心地よいということを、改めて実感。だからこそ、あんなに幻想的な芝居ができたのかも。

話の内容がどうとかなんてこのさいどうもでいい。美しかったというだけで、私はもう満足です。個人的には、「葵上」よりも「卒塔婆小町」の方が好きかも。美しかったし。

劇場を出た後、甘く強烈な媚薬にやられたかのように、ぽけーっとしている私がいました。余韻はかなり長く続きました。

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