[ 宇田尚純のひとり語りVol.1 ]
アプリコット


この公演の後しばらく活動休止を宣言した宇田さん。追加公演がなかったら見ないままだったろうな。というのも、「宇田さんの1人語りかー。UDA・MAPかなー。それを2時間かぁ、ちょっとつらいなー」などと思って前回見なかったのよね、正直に言っちゃうと。もちろん予定的に難しかったことと体調の問題もあったんだけど。ただそこで無理をしなかった理由の裏にはこんな気持ちがあったのよ。
で、今回もどうしようかなーと思っていたんだけど「しばらく宇田さんを見られない」という思いと、「涙が出た」というレビューを読んで「え?語りで涙が!?」という驚きを体験したいというその2つの気持ちから見に行ったのでした。

宇田さん、ごめんなさい。見くびってました。なめてかかってました。甘く見てました。っていうか私も最後の演目「幸福の黄色いハンカチ」のラストには泣いちゃいました。さらに白状すると、最初の前座朗読と「寅次郎恋歌」以外の演目はほとんど泣くのこらえていた状態です。そんな自分に、自分がびっくり。
「語り」というか人の言葉の持つ力に改めて愕然とした。私が好きな「演劇」って、ミュージカルでもダンスのようなパフォーミングアートでもなくて本当に「誰か」が「セリフ」を「語る」ことによって成り立つ「芝居」なんだよなーと再認識。このひとり語りは「芝居」と呼んでいいものかどうかわかんないけど、宇田さんの言葉によって色々な情景が目の前に広がってたのは事実。そしてその情景に心奪われて、確実に「語られていた世界」に没頭していたのも疑いようのない事実。それはやっぱり宇田さんという役者さんの表現力以外の何者でもないような気がする。

今回の演目は「前座朗読劇場『注文の多い料理店』by宇田さんに良く似た男(もちろん宇田さんだよ)」「男はつらいよ寅次郎恋歌」「刃傷・松の廊下」「パリ、テキサス」「朗読劇場『中坊公平・私の事件簿』」「幸福の黄色いハンカチ」でした。
すべての演目で宇田さんはいろんな表情を見せてくれました。もちろんその合間にも。声を変えた瞬間に確かに別人に見えた。顔の向きを変えているだけで、違う人に変わったのもわかった。宇田さんって、すごい演技上手な人だったんだ。すごい役者さんだったんだ、と今ごろ認識したような気がする。ヘタだとは1度も思ったことなかった。でも、ここまで上手でここまでひきつけられるほどの役者さんだとは正直思ってなかった。
「幸福の...」で泣いたけど、でも1番感動したのは「パリ、テキサス」かな。ジェーンがマジックミラー越しに「トラヴィス」と名前を呼ぶシーン。たったその一言。その一言でもうすごい感動した。映画見たこともなくて宇田さんの説明もかいつまんだ説明だけでわからないことだらけのはずなのに、その短い「トラヴィス」という言葉を宇田さんが語った時に、私はジェーンの気持ちが伝わってきたかのような錯覚に陥った。だから、よく涙がこぼれなかったなーというくらいのもんです。

宇田さんの人柄ってのもよく見えた(ような気がする)2時間でした。「幸福の...」に入る前、宇田さんが自分の大学時代の思い出をちょろっと話してくれたんだけど、私はその思い出話を2時間してもらっても耐えられると思う。耐えるとか耐えられないという次元じゃなくて、「聞きたい」と思ったのよ。それくらいあの人の話は耳に心地よかった。聞いてて少しも苦痛じゃなくて、むしろ「もっと聞かせて」「続きは?」と思うテンポで喋ってくれる。2時間あっという間で、一瞬も「退屈」と感じなかった(ほどよく笑いも散りばめられていて)。誰かが喋ってるの聞いてるだけで、音響も「あったっけ?」程度のものなのに、あんなに充実した2時間って。
そしてあんなに饒舌に演目をこなしていった宇田さんが、カーテンコールでは「ありがとうございます」を連発するのが精一杯というかのようにしどろもどろになっていて・・・。そこにも人柄が。ほほえましいわ。

「また会いましょう」というその言葉を信じて待ち続けたいです。必ず戻ってきてくれるんだろうなー。だって、演目の最後が「幸福の黄色いハンカチ」だったじゃないですか。信じて6年も待ち続けて、そして最後「幸福の再会」を果たした話じゃないですか。これが最後ってのは、宇田さんからの「待っててね」ってメッセージのような気がしてみたり。
とにかくこんなに感動するとは夢にも思ってなかったし、こんなに充実するとは本当に思ってもなかった。だから1日でも早く「Vol.2」が見たい!だから戻ってきてね、宇田さん!

めずらしくアンケートがすらすらといっぱい書けたのもびっくり。そんなアンケートの最後に、私はこう書きました。
「今日という日にこの場にいれたこと。小さなことかもしれないけど、大きな幸せです。ありがとう。」

(3/27 19:30 新宿pamplemousse)

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