隊長のお言葉
そこそこ期待していたのだ。
先走り奴隷候補フカマチ。
思い返せば去年の年の暮れ。アクセス不足に喘ぐ我がカヌ沈隊ホームページに、奴は突如として乱入してきた。そして合同新年会にて洗脳に成功。「チョ〜〜〜感動したっす!仲間に入れて下さい!」この台詞と共に奴隷候補になる。だが、奴ほど口先だけの男も、そういないことが徐々に判明する。
「まあ、まかしといてくださいよ」
「楽勝っすよ」
奴が頻繁に吐く言葉。硬派で純情なカヌ沈幹部は、ついついこの言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。
早速、奴に奴隷部屋を作らせることにし、「カツ丼とは何か!?」という命題を与えた。
荒涼とした大地。恍惚と空に浮かび光るサガルマータ。俺は靴の裏で生え繁る草を噛みながら、何故か「カツ丼」を想った。全身に巡る日本人の血がそうさせるのか・・・高山病で意識が混濁しているのか・・・純白のコシヒカリの上にアツアツのカツ。
その、ヒマラヤの嶺々に匹敵する美しさ。
何とも形容しがたい色の空を見上げ、寒風吹きっ曝しのなか、俺は重い呼気をひとつ吐く。
カツ丼の主役は、やはり、カツ。カツあってのカツ丼。もし上に乗っているのが鶏肉と卵ならば、それは親子丼、というもの。しかしそれでは一体、銀シャリとは何なのだ。朴訥とした観念に圧倒されながら、苦心の末、ひとつの結論に達する・・・そう、俺は一粒の銀シャリなのだ。ドンブリの高さは時の流れ。幾層にも重なる、その他大勢のうちの一人。いずれ糞になり、溶岩ドームと化した肛門から捻り出されるのもよかろう。虫歯につまって野たれ死にするのもよかろう。しかしである。俺の望みはカツと共に喰らわれ栄養となり、構造の一片の源となること。認識され、意義ある存在であること。
世界の果ての草原の海に跪き、俺は祖国を強く想った・・・。
話を奴隷候補フカマチに戻そう。奴は、そんな俺が崇拝してやまないカツ丼を冒涜した。カツ丼に纏わるいい加減な話をでっち上げ、その上、「つづく」と記しておきながら続きを書く気配すらないのだ。よって、奴隷行進曲を閉鎖することにした。当然の事だ。
カヌ沈隊という名のカツ丼においては、俺が「カツ」なのだ。奴隷などは一粒の米にしか過ぎないのである。
奴には贖罪をさせなければならないな、ウム。