始末書
私、カヌ沈隊 狩猟班長やすは、さる平成11年7月18〜20日、カヌ沈隊公式合宿”男を鍛える水泳登山”(梅雨明け直前の陣 ナルミズ沢)におきまして、カヌ沈隊の清水である酒をうかつにも忘れ、禁断症状による呼吸困難、、耳垂れ、寝癖、あせも等、隊長に多大な不快感及びご迷惑をおかけ致しました事を深くお詫び申し上げます。
しかしそれは私の隊長を想う気持ちが大きすぎるばかりに、あえてしてしまった事なのです・・・。
あの忌まわしい事件があった時から既に3日が経ちますが、毎日毎晩一時たりとも事件の事を忘れる時は御座いません。思い出すたびに全身から汗が噴出し、足の指の間はヌルヌルになり悪臭を放ち、強烈なめまいに苛まれております。
出発前日、私は偶像崇拝しておる隊長とのランデブー強化合宿に憂かれ、小躍りし、興奮のあまり毛穴が開き、これから始まるであろうさまざまな出来事を想像し夢中になっていました。前日より山行道具を広げ、いつものように指差確認をしていると、ふと頭をよぎるものがありました。
「カラビナ ヨシ!シェラフカバー ヨシ!っと。そうだわ!お家のお酒を持っていこっと!♪」
少しでも隊長のご機嫌を取ろうと、自宅にある幻の酒”剣菱”をペットボトルにトクトクと移したのでありました。
「ふふふ 準備万端っと♪」
そうつぶやきながらペットボトルの口を再度閉めなおしながら、まだ見ぬ源流イワナ丼をうれしそうに頬張る隊長・・・そんな姿を嬉しそうに眺め、隊長の口元についた飯粒を取ってあげる私・・・。そんな情景を想像し、一人微笑んだのでありました・・・。
出発前日、隊長の御宅にお邪魔し、いつものように散らかったお部屋をお掃除している時、思い起こせばあの時から既に忌まわしい悪夢が始まっていたのでした。
「ううっ いっ・・・いてぇ・・・(痛)」
オマタを硬く閉じ、中腰でお尻を微妙に突き出し、両手を肛門にあてがる隊長。顔面にはドロドロ汗が玉のように噴出し、顎から糸を引いて滴っている。
「どっ!どうしたって言うのっ!だいじょーぶっ!?」
掃除機を放り投げ、駆け寄る私
「オメぇに言うと、心配するからよぉ・・・黙ってたんだっ・・・くっ(痛)」
「俺は 悪性の痔らしい・・・遺伝だ・・・もう先は長くないかもしれない・・・オヤジはヒルを飼っていて、何時もイボの血を吸わせてたんだ・・・。ううっ!うが!はあはあはあ・・・。」
部屋の中の散乱した酒瓶を蹴散らしながらのた打ち回る隊長・・・。
どうする事も出来ず、ただ泣きじゃくる私・・・。
ドロドロ汗が全身に絡み付き、まるでローションプレイのようだ。
「そうだわ!全てコイツのせいよっ!このお酒が悪いんだわ!!お酒のせいであなたは痔になってしまったのよっ!こんなもの!こうしてやる!!!!」
部屋の中にあるありったけの酒を窓の外に撒き散らす私
「やっ!止めろ!それは俺の命だ!やっ!やめてくれ〜っ!」
そう悲痛な叫びをあげていました。
そうです。なにもかも悪魔の水、お酒のせいです。私達の仲がおかしくなり始めたのも、隊長がお酒を飲み始めた13歳の頃からでした。あのとき止めさせていればこんなことには・・うっううっ・・・(涙)・・・ゴメンナサイ・・・私ったら・・・。
でも、私は決意しました。
「そうだ明日にでも源流に行き、ヒルを捕まえてこなくちゃ!それが唯一隊長が生き残る方法だわっ!」
出発の時、隊長の体調・・・ふふっ オザキさんのお尻の調子はいくらかいいようでした。 土合の登山道入り口に車を止め、雨天の中 隊長と覚悟を決め出発準備を整え、呪文のように一つ一つつぶやきながら何度も何度もザックの中身を確認し「これでよしっとぉ♪」とつぶやくと、隊長様は「バカだなァ狩猟班長はぁ♪そんなに確認しなくたって大丈夫だよォ♪」と私を優しく叱って下さいました。そんな心温まるお言葉も、今となっては辛い思いでです。
しかし 一度ザックに入れたお酒を見つからないようにそっと車に置いてきました・・・。そうです 今回の目的はイボ痔の血を吸うヒルを捕まえにいくことなのです。お酒など持っていってしまったら、またあのヒトは浴びるほど呑んでしまい、肛門様は唇のように腫れ上がり、また悪夢の繰り返しとなってしまいます。もうあんな惨めな御姿は見たくないのです。そんなことでは本末転倒。何の為にこんな山奥まで来たのかわかりません。他ならぬ隊長のお体を気遣う気持ちで胸を引き裂かれるような思いで置いてきました・・・。そうとは知らぬ隊長・・・。「山だぁ!山だぁ!」と・・・まるで子供のようにはしゃいでいましたわね・・・ううっ・・・失礼しました・・・(涙)。
日本有数のヤマビルの生息地、広河原に到着。絶好の野営地。最高に吸引力のあるヒルが手に入るはず。しかし浮かれてもいられない ここで一芝居打たなくてはいけないだ。隊長はまず酒といいだすはず。駄目だわ。目を見られない・・・。シートを張って、荷物の整理をしつつ焦って酒を探すふりをする。
「あれっ!」
ガサガサガサ
「ないっ!ないわ!」
「なに!どうした!酒かっ!!!」
黙ってうなずく私
「&▽〒♂⇔∪♀%£∨†√!!!!!!!!!!!!!!!」
急速に隊長の顔から血の気が引いていき、黒目が小さくなっていく。全身からはまたあのドロドロ汗が噴出し、顎から滴り落ちている。まるで即身仏のような格好でピクリとも動かなくなったかと思うと、いきなり獣にも似た奇声を上げ上流へ走り去っていってしまった・・・。それが隊長を見た最後の姿でした・・・。
カヌ沈隊における酒の重要さは入隊時の隊訓にも大きく書いてあった通り・・・。
その掟を破ったのは私・・・。
それはいかなる時でも許されることではないのは承知の上。でも隊長を想う私の気持ちも解って欲しい・・。
今回の不祥事を深く反省し、二度と同じような事態を起こさぬよう、分をわきまえて行動することを固くお誓い申しあげます・・・。
平成11年7月23日
カヌ沈隊 狩猟班長
カヌ沈隊 隊長
オザキ フミヒコ様 |