ケド沢 雪上刺身盛合わせ定食 平成14年4月 7日 ☆ 硬派者:隊長・炊事班長・狩猟班長・奴隷さる 1/25000 地形図:「マップル」 「赤いビキニだ,赤いビキニだぁ」
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「まだやっています?」 「あいあい」.薄汚れたのれんをくぐるとカウンターの中には婆さんが二人.奥の座敷に常連らしき親父がテレビを眺めながら酒を呑んでいるだけである.越後湯沢駅前にあるとある店.時刻は程なく22時になろうとしている. ザックを降ろし,カウンターに座る.「ホルモンと生ね」.600円という値段ながら一人でつまむには十分な量のホルモンがでてきた.一枚一枚じっくりと箸でころがしつつ焼きながら,ビールを呑む.遠くの方でテレビの音が聞こえるだけの時間が過ぎていく.何を話すでもなく聞かれるでもなくホルモンを焼いては食いビールを流し込む.暫くして長靴を履いた地元の親父がやってきてラーメンを注文する.野菜を炒めてスープを作る婆さんの手元を見ながら,思い出したように店の時計をみる.1時...いちじぃぃ??時が止まったような店にふさわしく,時計は止まったままだった.こんな店には地酒の熱燗が似合う.酒を頼んでちびりちびりとやりはじめた. 降って湧いたような山行計画だった. 4月第1週の週末,上越にある日白山集中計画が持ち上がった.隊長は土曜朝から山に行けそうだという.ヨコサワさんとヤッサンは土曜は仕事.そのため,隊長・さるのカンジキ班とヨコサワ・ヤッサンのスキー班に別れ日曜昼に日白山山頂にて合流という計画だった.しかし,隊長は金曜日までどうなるか分からず,最悪隊長をおいて3名で日帰り山行となるという流動的なモノであった.例のごとく,隊長は会社の呪縛から逃れられず,集合は土曜夜,越後湯沢駅となった. カヌ沈に入隊してはや1年が過ぎた. まるでもっとずっと前から一緒に遊んでいるかのような錯覚に陥る.掲示板でのやりとりから始まって,昨年2月に関越硬派連合交流会と称して東京山小屋に見参しカヌ沈メンバーと酒を交わしたのが初顔合わせか.その後,3月のタカマタギ酩酊山行で隊長とサシで呑み交わし,入隊が認められたんだったなぁ.奥利根春合宿2001では残雪の渓にブナの焚き火,柄沢山から宝川温泉の先まで足が痛くなるほど歩いた歩いた.疲れ知らずの隊長とヨコサワさんに完敗だった.胎内・楢ノ木沢岩魚寿司太郎選手権大会,沢にすし桶を持っていく遊びの感覚にのめりこむ.奥利根・楢又沢?南田代?ススケ峰合宿,藪を抜け湿原に飛び出したときの心地よい風.荒川・角楢小屋美味美味合宿でのchain reaction.フカマチに食担は任せられないと思った湯桧曽川高倉沢左俣右沢ダメダメ合宿.一名の廃人を生んだ紅葉の秩父キノコ山行,いい焚き火の傍らでヨコサワ炊事班長の腕が冴えまくっていた.豪快舟盛りの忘年会IN宇佐美,カヌ沈は海に弱かった.停滞宴会と拷問ラッセルの上州武尊敗退冬合宿.ふんふんとひとりにやつきながら杯をかさねる.暫くして連絡が入り,鄙びた店を後にした.
久しぶりにあったヨコサワさんがいきなり何を言っているのか,はじめは分からなかった.氷雨が降り始め,明日の天候も期待できないらしい.であるから,登らないかもしれない,まったり過ごすかもしれないということであった.それはそれ,明日の朝に考えればいいことであるからと,まずは今宵の宿を決めねばならない.民家から離れ,車もほとんど通らないとある橋の下に腰を落ち着け,小さな焚き火のもと,酒を呑み始めた.隊長はまたしても忘れ物隊長であった.かろうじてプラブは持参していたものの,シュラフは持ってきていないという.「だって,ヨコサワがさぁ,特に何もいらないでしょっていったでしょ」「あのねぇ,それくらい必要だとわかるでしょ...」いつでもこんな感じである.
雨はとっくに止んでいた. 激しい雨音だと思っていたのは,橋から流れ落ちる排水の音であった.やれやれと思いながらも,相変わらずの強く冷たい風.遠く稜線はガスに覆われている.相談の結果,うすら寒い橋の下でメシを食うよりも,どこかで食おう.どこかに行くならついでに温泉に入ってしまおう.で,様子をみてだめなら鮮魚センターだな.と,すっかり天候不良による入山前敗退になってきた.とりあえず車へ戻ると,その河原の上は無風状態であった.ここでまた一つの事実が明らかになった.我々が寝ていた橋の下は単なる風の通り道であった.なんだよなんだよ,どうする?と口に出す面々ではあるが,もう心は温泉に向かっていたので,いまさら悪条件の山には気持ちは向くわけもなかった.
最後にまた温泉に入りに行く.温水プールとおぼしき施設の横を通った時,ハンドルを握るヨコサワ炊事班長が「赤いビキニだ,赤いビキニだぁ」と脇見運転をしながら叫ぶ.「なにー」とそちらを見るがそれらしきモノには気づかなかった.「赤いビキニの奴なんか今時いねーよ」とそっち方面の情報収集能力に長ける狩猟班長は言い切る.「いやぁぜってぇいたってぇー」とまだ叫ぶヨコサワ炊事班長の行く末を我々は案ずるのであった.
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酩酊タイム 延べ38時間