早春の豆焼き沢合宿

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平成13年4月 7日〜8日

硬派者:隊長 炊事班長 狩猟班長 潜水班長 フカマチ

1/25000 地形図:「雁坂峠」


春である。
桜の花は見事に満開。ピカピカの1年生が新しいランドセルを背負い、通学路の一歩を笑顔で踏み出す。その路傍には土筆が顔を出し、新緑が芽吹き、冬を忘れた蟻たちがせわしなく働きはじめる。我が愛しのライオンズもそこそこの滑り出し。何といっても新外国人の活躍が目覚しい。
ん〜、良い季節だ。カヌ沈に入隊して、はや2年。ワタクシもリーダーを任されるまでに成長した。
「リーダー」… ん〜、なかなか良い響きだ。ぐふぐふ。

そもそも、だ。小学校ではときおり学級委員を勤め、中学校では剣道部の副キャプテン、高校では帰宅部ひとすじ、大学では焚き火同好会の創始者であり、友達を集めて作った某キャンプ集団の隊長でもある… というような、このリーダー街道を突っ走ってきたオレ様をしてだ。カヌ沈では「体力がゼロ」だの「根性無し」だの「ふかまち○こ」だのとコキ下ろされ、屈辱の下っぱ生活を送ってきたわけだ。
しかし!今回の合宿では、ワタクシが「リーダー」なのだ。ぐふぐふ。そこんとこ、よろしいですか?
だいたいからしてカヌ沈も、いつまでも三大幹部のトロイカ体制に甘んじているわけにはいかないのだ。時代はいま、ペレストロイカ。忙しい忙しいを連発する隊長を一日も早く失脚させ、封建制度に終止符を打たなければ、組織の新たな展望というものは開かれないのでアル。ぐふぐふ。

さて、そんな個人的背景を持った今回の合宿である。当初の計画であった丹沢の水無川の地形図を丹念に眺め、リーダーたるべきイメージトレーニングに寝食を忘れて勤しんでいたところ、計画は目前にて急転直下。諸々の事情により270度の大改革になったのであった。
「もしやこれはペレストロイカに抗するトロイカ勢力のゲリラ工作による影響下で起こる市場の反撥であろうか!?」
などと分析するが、如何せん旧体制の力は健在。抗議空しくも幹部会の決定は絶対なのであった。いつものように山小屋に集合し、犬小屋に2次集合。目指すところは奥秩父の滝川豆焼沢である。まあ、悪くないプランではあるな。

「プシュッ!」
缶ビールを開ける音で、内部紛争の幕は切って落とされた。
「やすテメェなにビール呑んでんだよっ!オレが運転してるのにっ!」
その音に素早く反応し、エクソシストのように首を回転させ激怒する隊長オザキ。しかしそのとき既にビールを手にしていたのは、狩猟班長やすのみならず、潜水班長トラオ、隊員フカマチにいたるまでのまさに四面楚歌であった。挙げ句の果てには、炊事班長ヨコサワが手渡されたビールを「ゴクッ ゴクッ ぷはぁ〜」と飲み干す。腹心による踏み絵行為に、ブルータスお前もか状態。「こんな集団、もうやめようかなああああーっ!」とついつい本音を漏らす隊長。バックミラーに映ったその眼光は、最近丸くなったそれとは違い、かつてのギラギラとした光を放っていた。
午前1時、豆焼橋手前の見晴らしの丘駐車場に到着。
「まあ、まあ、呑みましょ♪」
と焼酎の封を切れば、隊長のゴキゲンも回復するというもの。明日の晩の酒にまで手をつけ、いつもの与太話に花を咲かせると、いつしかダラダラムードを一致団結して織りなしていたのであった。

翌朝。計画の5時起きは守られることなく、9時頃まで惰眠を貪る。全員やる気なし。昨晩のダラダラ感を引きずったまま身支度をし、狩猟班長やすとフカマチの狩猟班が先行して出発。課せられた任務は無論のこと、今宵の肴を狩猟することにある。
睡眠不足にからきし弱いフカマチは、小尾根を巻く踏み跡ですぐにアップアップ。ニヤリと黄色い笑みを浮かべた狩猟班長は、ここぞとばかりにとっておきの言葉を使った。しかも嬉しそうに。
「にゃはは、弱っちいのォ〜」
真っ赤な豆焼橋、黄色い雁坂大橋を左手に眺めながら進むと、コンクリートでカティンコティンコにされたトオガク沢にでる。縮小版神田川のようなワサビ沢も哀れであったが、この巨大な階段状の建造物は、はたして沢と呼んでいいものであろうか。どこかに書いてあった、まさに、「なにもここまでしなくとも…」である。
ここから先はグズグズの雪が30センチ程度残っており、仕事道もところどころ崩壊していて歩きにくい。雁坂トンネルが完成して廃道になったのであろうか。
雪渓の支沢を下降して豆焼沢に入る。50センチ程度の残雪に足を取られ、ときおり落とし穴にはまりながらpsn00001.jpg (34631 バイト)ズボズボ進むと2段のトオの滝に出た。狩猟班長が水中眼鏡をつけて釜に頭を突っ込むが、
「一匹もいやしねぇ…」。 やはり今夜の骨酒は無理か!?
トオの滝一段目は左から登れそうだが、左の雪壁を登って巻く。滝上は開けており、第一の幕場適地である。ここで焚き火をし、後続を待つこと小1時間。ようやくやってきた隊長は開口一番
「やす、イワナはぁ?」と、昨晩の反撃にでた。
「サカナがいねぇんだよっ!いないものは釣れねぇんだよっ!」とイイワケするものの
「狩猟班長が狩猟してくんなきゃ困るなぁ」と正論を振りかざしニヤニヤする。まったくこのヒトたちの抗争を見ていると飽きがこなくて面白いものだ。
ひとしきりダラダラしたあと、少し前進したところにテントを張れそうな場所があった。この先はどうやらいっそう雪が深そうなので、あっさりと遡行を打ち切り。時間はまだ14時。隊長の指示で、狩猟班長は釣りに出かけ、他の者は薪拾い。
「おいおい、今回は誰がリーダーなのか忘れてないか?」とフカマチひとり呟く。

psn00002.jpg (35840 バイト)良い焚き火ができた頃、どこからか「ピー」という音がコダマした。ややっ!さてはイワナを釣り上げたことを知らせるホイッスルだな!?と一同色めきたつ。心なしか残念そうな隊長は「こうなったらホメゴロシにしよう」とブツブツ。渦巻く期待と不安のなか帰還した狩猟班長は肩を落とし、
「くそ〜 ウン万円もする竿を折っちまったよォ〜 スノーブリッジ踏み抜いた拍子にバキッと… イワナ? そんなもん釣ってねぇよォ〜」と嘆いた。それを見て小躍りして喜ぶ隊長。
「ああ〜♪ イワナ食いたかったナァ〜 ほら、フカマチも言えよ! イワナ食いたかったナァ〜♪」

寒い、寒すぎる。焚き火に向っていても、暖かいのは顔面とスネばかり。尻から首にかけて、どうにもガマンできない震えが行ったり来たりしているのだ。炊事班長の作ったケンチン汁と親御丼をハフハフと頂いても、酒をグイっとあおっても一向に体内温度が上がってこない。うーん、寒い。そもそもジャージだけでは、雁坂峠から雪の上を吹き降りてくるピューピューの風には、ほとんど裸同然である。仕方がないので、少し間シュラフに潜り込むとしよう。軟弱者だのと言われても寒いものは寒いのだ。
どれくらい眠っただろうか。ふと目を覚ますと、唄声が聞こえてきた。いつもの山賊の唄だ。
「やっほ(やっほ)、やほほほ(やほほほ)、フカマチ(フカマチ)、起きろ〜(起きろ〜)」
どうやら宴は最盛期を迎えているようだ。山賊の唄がエンドレスで輪唱され、酒はもうほとんど残ってない。テンションをムリヤリ上げ、合唱に加わることにする。カキンと冷えたビールが、温まった体に心地よい。すみだ放沓の「TUNAMI」の替歌を炊事班長が熱唱する。この替歌は天才的だ。
「本当は見た目以上 疲れやすい僕がいる」のくだりなどは、いささか胸の痛くなる鋭さである。さらに、即興でできた「やっさんの唄」を、狩猟班長本人と潜水班長が、ゲラゲラと爆笑しながら狂ったように何度も歌いつづける。
やけにギラギラと輝く月が、蒼い雪の世界を創り出すなか、笑い声と共に夜は更けていったのであった。

一貫してダラダラ感の強い合宿であったが、そんなことはどうでも良い。冒頭でも述べたように、カヌ沈は変革のときを迎えているのである。トロイカ体制の基盤が揺らいでいる今こそ、底辺から隆起させるムーブメントが必要なのだ。底上げだ。永きに渡って虐げられてきた隊員、奴隷、奴隷候補の諸君、春を刮目せよ。認識せよ。そして利用せよ。カヌ沈隊第三期は近い。決起の時は来た。台頭せよ。覚醒せよ。つのだせ、やりだせ、せいき〜だせ〜 ときたもんだ。にゃはは〜カヌ沈隊に栄光あれ〜 はい、ごいっしょに〜 ジーク・ジオン! ジーク・ジオン!

では、ごきげんよう。

<記 フカマチ隊員>


 

 

 

 

 

 


硬派夜営集団カヌ沈隊

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