奴隷強化登山 鳳凰三山縦走

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平成12年 11月18日

硬派者:フカマチ、ユウ

地形図:1/25000 夜叉神峠、鳳凰山


いかん… 暗くなってきた。

鳳凰の稜線に陽が沈んでいく。完全な闇が訪れるまでに、あと30分とかからないだろう。

しかし急ごうにも、両膝がガクガクで力が入らない。

厳しい急登で知られるドンドコ沢登山道を駆け足混じりで一気に下降してきたため、ここへきて俺のカラータイマーが点滅しはじめてしまったのだ。

くそっ!これっていわゆるグロッキー状態ではないか。

前に足を出すと膝が痛いので、自然と横向きに歩く。登山道をカニ歩き… 我ながらみっともねぇなぁ。ユウはどうなんだろう? ヌヌ! わりかし普通に歩いているな。しかし奴はいつもポーカーフェイスだ。ホントはとってもグロッキーなんじゃあないかぁ? ハハハ、ざまあみろ… ハッ! 俺は何を考えているんだ。まったくどうしょうもねぇなぁ。

グヌヌ… それにしてもこのカニ歩き、実に気にいらねぇ、絶対気に入らないゾぉ!

しかし、頭脳明晰な俺様はいつでも冷静なのだ。こんなときは落ち着くことだ。落ち着け、落ち着けぇ〜。そう、冷静な男というものは、こんなときはまず現在の状況を分析したりするもんなんだよな。

え〜っと、時計を見ろ。現時刻、午後5時か。

いまんとこ、ユウとふたりで南アルプス地蔵岳直下のドンドコ沢登山道を下降中。地図を見て現在地を把握しようじゃないか… え〜っと、さっきこの沢を渡ったから、このへんかな? 青木鉱泉まで、だいたい1.5キロか。この先、どうやら沢沿いにトラバースしているみたいだな。

昨日寝たのは午前4時だった。酒を呑んでついつい盛り上がってしまったのが失敗だった。ユウも俺もかなり疲労しているのは、睡眠不足のせいも大いにあるだろう。しかしまだ限界ではない。まだ歩ける。

え〜っと、ここまでの道のりを整理しよう。青木鉱泉から15分ほど走ったところに車を止め、中道を4時間登り薬師岳へ。頂上で昼飯を食い、鳳凰の縦走に2時間。睡眠不足なのか、頭が痛くなる。ユウが地蔵岳のオベリスクに登って遊んでいるあいだ、俺は15分ほど昼寝をした。そういえば、なんだか忘れたが妙な夢を見たなぁ。

地蔵岳を走って降り、鳳凰小屋で一服したのが3時。ドンドコ沢登山道の下降は一般には3時間かかるが、そこを2時間で下り、日没前に青木鉱泉に着く予定だった。というわけで、今のところ1時間の遅れだ。

そもそも、青木鉱泉側から日帰りで鳳凰三山を縦走しようというのが無謀だったのか?鳳凰小屋のニイちゃんも「このルートで日帰りですか、ゲンキですねぇ」と言っていたゾ。

まあ、いい。とにかく俺の膝はグロッキーで、騙しだまし歩かないと、いつ本格的にぶっ壊れるかわからん状態だ。ユウはしっかり歩いているが不安そうな顔をしているな。まあ、それもそうだな。この道をロストしてしまい、ビバークすることにでもなったら困るよな。ビバークすること自体はいい。それはそれで楽しそうだしな。ビバークの用意は持ってきてないが、これでも俺たちは硬派野営集団の端くれだ。どうにかなるだろうよ。だが問題なのは、俺たちにはビバークでも、きっと遭難したと思われるに違いないことだよなぁ。カヌ沈隊だけならまだしも、大袈裟に探しにこられると金もかかるしなぁ。意地でも歩くしかないな。

ああ、すっかり暗くなってきた。ヤバイなぁ。足元が見なくなってきたぞ。ユウ、そろそろヘッデン出そうぜ…

なぁぁぁぁぁにぃ!! ヘッデンが灯かない!? 最初からヘッデンを持ってきてない俺が言うのもナンだが、電池くらいチェックしてこよ〜ぜ〜! ん!? マグライトがあるはず? 探せ! よく探せ! おおお〜、あったかぁ。どれどれ、ん〜? なんじゃコリャ! ほとんど消えそうじゃないか〜!

なんだよ、本格的にマズイじゃん。ほら、その白っぽいのは石だぞ。気をつけろよ。アラ… 自分でコケてどうすんじゃ。ん? 大丈夫だよ。俺はまっすぐ歩いてるよ。

ん? 人の顔が見えた? そんなもんいるワケないじゃね〜か、変なこと言うなよ。気持ち悪いなぁ。

アレ? 道がなくなったよ、ちょっと戻ろうぜ。違うよ、そっちじゃないよ。コッチはなんだか、地面がフカフカしてるじゃん。たぶんアッチだ。ん? なに? そんなの俺の勘だよ、勘。ほらな、赤いペンキがついてるじゃないか。

おい、二股だよ。なになに、山沿いルートと沢沿いルート? どっちに行こうか。うん、そうだな、沢沿いだな。道をロストしても沢沿いに降りれば帰れるもんな。

ん? また道がなくなったぞ。対岸にあるんじゃない? ユウ、ちょっと見てこいよ。俺はここで待ってるからさ。

ん? なになに? 道があった? 沢の音でよく聞こえないんだよ。そっちでいいの? うがぁ! やっちまった。靴が濡れちまったよ。トホホ…

ややっ! 向こうにぼんやり光が見えたぞ? 青木鉱泉かなっ!? えっ? 見えない? 眼の錯覚かなぁ。まだ着かないのかなぁ…。ユウ、ちょっと休んでいい? ボクちゃん疲れちゃったよ。腰を下ろすぞ。なに? 時間がもったいない? まあまあ、そんなこと言わずに一服しようぜ。ゆっくりいこうよ。

フ〜…。 静かだねぇ。空気がいいねぇ。星が綺麗だねぇ。やっぱり山はいいねぇ。

ん? おう、そうだな。今度は仙丈に登ろうな。無事に帰れたらだがな。ん、甲斐駒? おう、そうだな、甲斐駒も登りたいなぁ。頂上から眺めた八ヶ岳もよかったなぁ。けっこう尖がってたよな。それにしても、ドンドコ沢って遡行できんのかなぁ。デッカイ滝があったもんなぁ。

フ〜…。 しっかし俺たち、なんでこんな所でこんなことやってんのかねぇ…。

 

<記 フカマチ>

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観音岳を眺めるユウ

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観音岳中腹からの富士山

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観音岳最後の詰め

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薬師岳から、雪が積もる北岳・仙丈ケ岳

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薬師岳から眺める地蔵岳・オベリスク

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甲府盆地は雲がうっすらかかりよく見えない

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薬師岳から眺める甲斐駒ケ岳

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この時、フカマチさんはヘバっていた

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ユウがオベリスク中腹にいるが・・・見えない

 


コースタイム

青木鉱泉→5h→薬師岳→1h→観音岳→1h→地蔵岳→30min→鳳凰小屋→3h→青木鉱泉


硬派夜営集団カヌ沈隊

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