八ヶ岳 本沢温泉〜極楽!露天風呂酩酊メルトダウン山行報告〜極楽酩酊山行によりさらし首 平成12年3月18日〜20日(2泊3日) ★★★ 硬派者:隊長、炊事班長 1/25000 地形図:「松原湖」「蓼科」「八ヶ岳西部」 |
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当初の予定は北ア・常念岳だった。 10年近く前、春・3月の安曇野を旅行した時、初めて常念岳を知った。たっぷりと雪を纏ったその頂は鋭利で、人を寄せつけることを頑なに拒み「寄らば切るぞ!」といった雰囲気を醸し出していた。思えば、そのことが蝿リれの対象としての山狽ニいうものを意識させるきっかけになったのかもしれない。まさかその雪の頂を目指すなどとは、その当時夢にも思わなかった。 その常念岳。今の俺達の実力では、そう簡単には登れない。一の沢は5月までは雪崩の巣。三又からのルートは登れるには登れるらしいが、まったく情報が得られなかったので断念。一般的なのは中房温泉から燕岳、大天井岳を超えるものだが日程的に2泊では無理。上高地からも同様。結局上高地から蝶ガ岳を予定するも低気圧の接近で上高地で足止めになる位なら、他の楽しみを見つけよう、ということになった。 で、「極楽!露天風呂酩酊メルトダウン山行」。 場所は八ヶ岳。通年入れる日本最高所の野天風呂・本沢温泉。北アと比べれば天候もマシ。チャンスがあれば硫黄岳に登り、絶景を拝む。荒れれば、持参する文庫本を日がな一日読み耽るのも一興。どっちにしても極楽温泉と酩酊だけはお約束だ。そうと決まれば緊張感は一気に緩み、雪山の露天風呂に想いを馳せ、前日からすでにメルトダウン状態と相成った。 3月18日。快晴無風。何故か狩猟班長・やすが居ないと天気には恵まれる(ような気がする)。 今回のテーマは萩ノ楽狽セ。労働者諸君及びワーカーホリックの皆々様が、必ずや地団駄を踏む山行にしなければならない。ザックにはペットボトル5本もの酒が入っているし、ビールは小屋で入手すれば良い(八ヶ岳の小屋はほとんどが通年営業している)。 稲子湯からチンタラ歩いて2時間ほどでシラビソ小屋。この時期、アイゼンに付く雪が団子になり、厚底ブーツ状態での歩行に少々イラツクも気分は上々。まずは入山祝いにビールで乾杯。 カヌ沈流極楽山行・隊訓@ 山に入ったら最初の小屋でビールを飲むべし。 シラビソ小屋から硫黄岳、天狗岳(過去の戦歴、H10.11月の天狗岳山行参照)の眺めが素晴らしい。ここから本沢温泉までは、高低差の無いコメツガ林を歩くこと1時間ちょい。やって参りました、本沢温泉。テントを素早く設営し、早速入湯。登山者は他には未だ到着していない。当初この時期の露天風呂は温度も低く、とても入れたものではないだろうと予想し、横澤が冷たい湯に浸かってる絵を撮ったら、内湯に浸かろうなどと考えていたが、さにあらず。まあ、ええもんでしたわ。雪の斜面をトラバースすると乳白色の湯が湯煙を立て、おいでおいでをしている。今回持参したペットボトル5本の酒の一本を持ち込む。う〜む、風流なり。 カヌ沈流極楽山行・隊訓A 露天風呂には酒を持ち込み、ゆっくりとメルトダウンするべし。
硫黄岳の迫力ある爆裂火口壁を眺めながら気分良く酩酊。小屋でまたまたビールを購入し、メルトダウンした体に流し込む。わははは、ざまーみろ!テントに戻り、少々の昼寝、幸せなり。 日が暮れ始めると、横澤が食事の支度をはじめる。具沢山のチゲ鍋をつまみながら、翌日の計画をたてる。「天気が良ければ、硫黄に登る。悪ければ、登らない」う〜む、完璧だ(この一節はもみのマスターの文章を少々パクッてます)。 カヌ沈流極楽山行・隊訓B 登山計画は完璧にたてるべし。
朝日に硫黄岳が輝いている。午後から天気が崩れるとは俄かに信じ難いが、硫黄に登り、夏沢峠に下るまでは何とかもってくれよ、と祈りながら軽荷で出発。昨日はトレースが無かったが、どうやら先行者がいるらしく、しっかりとトレースがついている。有難いような、残念なような・・・。雪山では、やはり自分でトレースをつけこそ、その山に登ったという実感が湧いてくるものだと思う。正直ラッセルはつらいが、新雪に覆われたまっさらの尾根にトレースをつけて行く魅力というのは、ちょっと言葉では言い表せないものがある。 トレースが付いているので、当然ながら先行者に追いつき、交代でラッセルする。横澤先生も珍しく意地を見せるが、その尋常ではない発汗に「大丈夫ですかあ?」と心配されていた。無理も無い。向こうはTシャツ一枚、こっちはフリースの上にジャケットまで着込んでいるのだ。夏沢峠からはラッセルも樹林帯の中だけで、すぐに森林限界に達し、雪も締り、良いペースで歩を進める。 山頂からは迫力満点の赤岳が眼前に迫る。来年はいよいよ赤岳東稜、権現東稜、旭岳東稜などのバリエーションルートを目指すのだ。 下山は翔ぶが如く。 崩れるはずの天気は一向に崩れるふうも無く、未だピーカン。下りるべきか、下りざるべきか。 明日は確実に吹雪くとのこと。百も承知。しかし、である。本沢温泉の自家製どぶろくを飲まずして、下山できようか? カヌ沈流極楽山行・隊訓C 本沢温泉のどぶろくを飲まずして”極楽”を語るなかれ。
本日も先客はおらず、宿の内湯というには少しもの哀しい狽オゃくなげの湯狽ナ汗を流し、外の休憩所で横澤がつくった鶏の味噌づけと野菜炒めをつまみながら、どぶろくを呷る。このどぶろく、なかなかのものである。ものの20分で空になってしまった。宿に入り、ますます怪気炎を上げる。、酩酊一直線。秤ト沢峠から本沢温泉までトレースをつけた人達狽ニいうことで、他の登山者にちやほやされたものだから尚更である。本沢あたりの小屋で一泊するのは、往年の登山者達といった人が多く、体力にはいささか不安のある人がほとんどなのだ。外はいよいよ吹雪き始め、明日のラッセルを皆に期待されながら就寝。 深夜、猛烈な喉の乾きに目を覚ます。ペットボトルにはウイスキーとウオッカしか入っていない。飲んでも飲んでも喉の渇きがいえない、そんな夢を何度と無く繰り返し見る。寝返りをうつと、目前に、南アルプスの天然水のペットボトルが!悪魔が囁く。この時、俺は性悪説者となった。人間が持って生まれた性質は悪なのだ。所詮それに抗うことは叶うまい。如何に硬派野営集団カヌ沈隊の隊長といえど。 悪魔に魂を売った俺の右腕は、微かな良心の呵責をものともせず、真直ぐに、ただ真直ぐにお隣さんのペットボトルに伸び、「ちょいと、頂くよ」と心でことわりを入れた。 見事に空であった。 カヌ沈流極楽山行・隊訓D どんなに枯渇しようとも人様のペットボトルに手を伸ばすなかれ。
結局、宿中徘徊しストーブにかけてあったヤカンなど探すが、神は許してはくれなかった。そっと外に出て、貪るように雪を口に入れた。その後も、喉の乾きは癒えず、翌日、贖罪としてシラビソ小屋までトレースをつけたことで神は許し給うた。懲りもせず、朝の9時からビールを頂き喉を潤す。幸せなり。 カヌ沈流極楽山行・隊訓E 酒による喉の渇きは、酒によって潤すべし。
労働者諸君及びワーカーホリックの皆々様、如何であったろうか。歯噛みをしながら地団駄をふんで頂ければ幸いである。 <カヌ沈隊隊長記> 酩酊極楽山行(炊事班長編) これで何回目になるだろうか?夜の外環状線を走っている。関越自動車道に入る頃にはユーミンの曲も終わろうとしている。気分はなかなか良い。はじめは隊長の家は遠いと思っていたが、当たり前のように松戸から川越、またある時は向島から川越とまるで恋人にでも会いに行くように車を走らせている。「またどうせ用意なんかしてないのだろう」「酩酊してんのかなあ今日も?」と考えつつ山行は始まっていく。 先週末「もみ」で合宿の計画をつめた。前々から、3月の連休は北アルプスに行くつもりでいた。といってもあまりハードなコースは日程的に厳しい。「北アルプスいきてえな」「上高地から蝶ヶ岳はどうだ」「晴れてたら気持ちいいぞ」「そうだそうだ」「よし、北アだな、俺達にはちょうどいいコースだ」と山行の予定が決まる。 隊長の家に着く。2、3日前から今週末は天候が悪そうだと話していた。蝶ヶ岳は冬の槍・穂を見たくて決めたコースだったので、せっかく行って何も見れないのでは目的が達成されないと、あっさりと代案を考えた。先週こんな時のことを考えて、ちょうど八ヶ岳の地図も用意しておいた。ずばり「酩酊極楽山行―日本最高所の野天風呂に入りゆっくりと酒をのみ、ちょっと山に登って冬の赤岳を含む八ヶ岳の嶺々、南アルプス白根三山、仙丈、甲斐駒をみるツアー」に変更決定された。 今回のコースを簡単に説明しよう。まず1日目、佐久〜小海にそして稲子湯まで車でアプローチ、稲子湯からみどり池を経由し本沢温泉。2日目本沢温泉から夏沢峠をこえ硫黄岳を往復。3日目本沢温泉から来た道を戻り稲子湯へ。1泊2日あれば十分なコースを3日も遊んでしまった。いかに酩酊度、極楽度が高かったかを物語っている。 稲子湯に着いたのが8時を回った頃だった。稲子湯の旅館に駐車場代を払い、帰りの温泉のことを考える。そそくさと車の中に散乱している荷物をまとめ、身支度を済ます。9時15分に登山届をボックスに投函し出発した。出さなくてもいいかなあ、なんて一瞬思ったが、「今だ下山せず」を読んだばかりだったので、自分たちのことは勿論、他のパーティーのためにも届を提出した。(山梨県警御中とか書いてしまったが、ここは長野だった・・・)。快晴のなか樹林帯を越えてゆく、例によって私は日頃の悪行を浄化するが如く全身汗ダラダラ。隊長は汗一つかかず歩いていた。地図のルートは沢の右岸をマークしていたが、どうも左岸にトレースが付いていた。「まだ着かねえなあのか、げっ、きついなこの登り」なんてぶつぶつ言っているうちに、11時35分ミドリ池に到着した。ミドリ池からは東天狗岳が優々しくその姿を現していた。しらびそ小屋で、今日の行程はあと半分ということで、熱くなっていた身体に麦汁の炭酸飲料を頂いた。12時15分に出発、アイゼンを着けて歩いていたが、雪団子がすごい。隊長は外していたのですいすい行ってしまう。まるで街のコギャルのような厚底サンダルで歩いているようだった。麦汁が効いたのか心臓がバクバクする。つらいのでアイゼンを外したらとても快適に歩けた。あともう少しで、今回の目的地、日本最高所の野天風呂に到着です。 13時35分本沢温泉到着。まずは偵察に向かうが受付をしてテン場へ戻る。テントを張る。ベースキャンプとなるところなので快適に設営する。胸は高鳴っている。隊長もきっとそうだったに違いない。「じゃあそろそろ・・・」「おう、そうだな・・・」何分くらいだっただろう、もくもくと歩く。「ヨコサワ早く来いよ」満面の笑みを浮かべた隊長が振り返った。「うひゃー」日本最高所の野天風呂は雪の中に「ここだよオラ!」と湯気を上げていた。もう言うまでもない。酒を片手に裸になって極楽酩酊の世界にメルトダウンした。今晩のご馳走はチゲ鍋と鳥ごぼう焼飯。酩酊度は高まり、明日山なんか登らんぜ状態で夜は更けていくのだった。 3月19日、2日目。天気が午後から崩れる予報だった。朝5時30に起床。昨日の行程が短かったせいか、一応やる気充分で起きられた。お湯を沸かし、パンをほお張る。「それでは、硫黄岳に登るか、覚悟は良いな」昨日、野天風呂に行く途中、夏沢峠への道にはトレースがなく、「ラッセルだなこりゃ」と話していたので、なるべく遅く出ちゃえば・・・と7時に出発した。先行している7名のパーティーがいた。夏沢峠までは夏時間で1時間、樹林帯をひたすら登る。少し歩くと上のほうにパーティーが見えた。ヨコサワ反則技の休憩。しかし、ラッセルの後を歩くのでまたすぐに追いつく。覚悟を決めて、パーティーに合流。ラッセルを開始する。7人パーティーのうち4名がラッセルしていた。カヌ沈よりもお年を召していたので、「負けらんねえ」とずっとトップを2人で行った。(かなりオーバーな表現だが良しとしよう)。そのパーティーはベテランが多く無駄のないルーファンだった。8時45分夏沢峠に到着。ここから硫黄までは、風が強い稜線になるので、アイゼンを着け9時出発した。初めは少々ラッセルして、7名パーティーに追いつかれていたが、雪がしまった稜線に出るとペースを上げた。硫黄岳の北側は爆裂火口になっており荒々しさが間近に見える。風は強いがとばされる程ではなく、10時に山頂に立つ。山頂は広く、赤岳がここに来て初めて姿を現す。天気もよく、遠く白根三山、仙丈、甲斐駒を望み、八ヶ岳を北、南と満足するまで望む。気持ちいいので30分も山頂にいた。さあ、下りだ慎重にかつ大胆に下っていく。早い30分で夏沢峠に、そこからは、朝ラッセルをした道を戻る。朝1時間40分かけて登ったところを30分で下る。山頂から1時間で本沢温泉に戻ってきた。余裕で帰れる時間だった。が今回の山行のコンセプトは「極楽酩酊」。テントもいいが1日泊まったからいいや。テントを撤収し、まずは昨日の残りのチゲ鍋をつつきながら乾杯。ここまで来て、宿(あえて山小屋とは呼ばず)も偵察しておかないと。ということで宿泊の受付をする。内湯の温泉に入り、非常食の鳥の味噌漬とモヤシ炒め、それを「極上―本沢のどぶろく」で頂く。最高に幸せなひと時を過ごす。部屋にもどり酩酊していると他のパーティーがそろそろとやってくる。呑んで寝て話して、夕食の6時になる。オレも何を食べたかはっきりとは覚えてないが、ローストした肉、うどんの鍋などがでていたような気がする。隊長もあまり覚えてないらしく、「鍋なんてあったか?」と首をかしげていた。飯食って少し落ち着き、喫煙室にいく。オレ達のとなりに寝た、長崎出身の人(35才位)と名古屋の料理人(62才位)のパーティーと富山の山岳会の人と、酒好き、話し好きの人たちが、消灯の8時30までいろんな話をした。(かなり気分が良く話の内容はところどころ覚えていない)。夜中苦しかったことがあった。酒の飲みすぎで、喉が渇いているが、飲み物がない。夢まで喉が渇いているといった始末だった。隊長は夜中我慢できずに、宿の中を徘徊し、結局外の雪をかじっていたらしい。 3日目、朝から吹雪いていた。しかし、出発する頃には落ち着いた。名残惜しいが、本沢温泉をあとにし、ミドリ池までとばす。また麦汁の炭酸飲料を飲み稲子湯までの道程に着いた。途中下りで、すべり台遊びをし、しまいにはプッチモニ走法を生み出し、気持ちのいい山歩きを楽しんだ。稲子湯で山行のフィナーレとなる温泉につかり今回の行程を終えた。(ヨコサワ炊事班長記) |
みどり池にて やすがいないといつも快晴 ベースとなった本沢温泉から爆裂火口壁 野天風呂に行くのも命がけ 見よこの景色!どうだこの風呂! キモチイィ〜♪メルトダウン1号 湯煙旅情酩酊派 特集!北八ヶ岳 春の日溜りハイク 頂上直下を登る横沢。背後は夏沢ヒュッテ 硫黄岳山頂にて。左から横岳・赤岳・阿弥陀岳 雪解けの沢を見てくつろぐ。春はすぐそこ お世話になった本沢温泉 本沢温泉自家製どぶろくを手にする尾崎隊長 雪の滑り台で遊ぶ男30歳 |
コースタイム
1日目、稲子湯(9:15)〜(11:35)みどり池(12:15)〜(13:35)本沢温泉〜極楽酩酊(6時間)
2日目、本沢温泉(7:00)〜(8:45)夏沢峠(9:00)〜(10:00)硫黄岳(10:30)〜(11:00)夏沢峠〜(11:30)本沢温泉〜極楽酩酊(8時間)
3日目、本沢温泉(8:00)〜(9:00)ミドリ池(9:30)〜(10:30)稲子湯