大洞川 井戸沢ロケハン

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平成11年5月15日

硬派者:隊長、狩猟班長


それにしても、綺麗な沢だった。

得体の知れない怪魚が潜んでいそうな淵の連続。
わずかばかりの濁りもない、おそろしく澄んだ水にもかかわらず、深い青の底は見えない。
この淵にはいったい、どんながいるのだろうか。好奇心が擽られる。しかし、淵に潜るにはそれなりの装備が必要だ。やすはウエーダーだし、2ミリのウエットを着ている俺は、降り続く雨と腰まで浸かりながらの遡上で体温は奪われ、すでに冷え切り、ケツ紙をもってカサカサと苔むした森に入ること数度。まあ、よい。今回はロケハンだ。ダイバーのやすは、俺以上に好奇心を擽られているようだ。「5ミリのウエットでウエートは・・・、いや、石を抱きかかえて突っ込むか。フィンはどうすっかなあ。ボディボード用のフィンがいいかもしれないなあ」と作戦を練っていた。

当日、朝。
あいもかわらず曇天。奥多摩、奥秩父に行く時は9割方雨に降られる。いつものように寝坊し、当たり前のように俺は宿酔い。狩猟班長やすは助手席で

ギラギラと闘志を燃やしている。とはいえ、今日は日曜。こんな時間(10時くらいか)にノコノコ行ったって釣れる訳もない。ただでさえ、ヘボなのだから。が、そこはそれ。川が見えれば、「もしかして・・・」と期待してしまうのは、玉砕覚悟で、

美しいオネーサン

に交際を申し込む、アバタ顔の高校生と同じである。ついでに言ってしまえば結果も同じである。

大洞川が少しづつ林道から遠ざかるのを不安に思い、ガキがおもちゃを取り上げられそうな時のような顔をして何度も俺の顔を降りかえるやす。「はやく、川に降りようよお。誰かに釣られちゃうかもしれないじゃないかあ。さあ、さあ、さあ。」とは、さすがに言わないが、言いたげだ。この人は”辛抱”という言葉を知らない。腹が減ったら最後「メシ、飯、めし〜!飯飯飯飯、飯食わせろ〜おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」と飯を食うまで言い続けるのだ。こう言う場合、父親役の俺は、寝たふり。全く耳を貸さないが、母親役の横澤はお人好しだから、「ハイハイ、分かりました。次のコンビニもしくは食堂に寄るから、ちょっとだけ我慢してね」と甘やかし、食い物を与えてしまう。困ったものだ。

話が逸れた。結局、先走った俺達は、藪漕ぎの際どい下降を強いられながらも、なんとか釣り糸を垂らした。ゆっくりと釣り上がるが、どうも位置関係が把握できていない。地図を忘れてしまったので、微かな記憶だけが頼りなのだが・・・。惣小屋は過ぎたが惣小屋沢に出会わないのだ。午後になって、やっと出合いを過ぎ、井戸沢に入るも雨脚は次第に強くなり、次第に体温が奪われて行くのが自覚できる。辛抱堪らんので、素早く、アツアツのカップラーメンを啜り、釣りから沢登りに切り替え、竿をしまった。

ハイペースで遡上するのだが、次第に暗くなってきた。午後3時とは思えない暗さに焦りが出てくる。タイムオーバー。軽装の俺達はこれ以上先に進むことは賢明ではないと判断し、川を下り始めた。すると、次第に明るくなってくる。そうだったのだ。

深山幽谷

井戸沢は昼なお暗いゴルジュの沢だった。



 

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ウエット着用の隊長 足元は木梨憲武バレー団のようであった・・・。

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ゴルジュを巻きさらに奥地へ

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足を滑らせれば振りだしに戻されるだけでは済まない

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この巨木はどこから流されてきたのか

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美しい淵を前に一服

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この淵に潜り主をしとめたいものだ

 

硬派夜営集団カヌ沈隊

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