巻機山・米子沢平成11年10月23日〜24日 ★★ 硬派者:隊長、炊事班長、狩猟班長、奴隷室長フカマチ、ナカハラ奴隷候補、ガリガリ奴隷候補、ユウ奴隷候補、客人せーいち 計8名 ”ヤブコギスト” 道なき山中を藪をこぎながら最低7日間〜10日間のヤブコギを行うやつらがいる。3日や4日ではただの苦痛なものであるが、6日を越えたあたりから、一種トリップ状態となるという。そんなヤツラが実在するのだ。
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巻機山というピークはない。割引岳〜牛ヶ岳一体の稜線を指してそう呼ぶ。行程が短い為、難易度的には2級であるが、水質の関係上、ナメは非常に滑りやすく初心者を連れたパーティーはノーザイルでは無謀である。カヌ沈隊実働メンバー全員に、客人せーいちさんを加えた大所帯8名の今回の合宿は、秋晴れの中、ナメ滝に映える紅葉を肴にキノコ汁を頂く計画であったが、例によって天候悪化と、メンバー構成、疲労度合を考慮したルート変更に思わぬ落とし穴があった。 | ||||
24日 ガリガリクンの「ボリボリ」というカキピーを食べる音で目が覚めた。 いよいよカヌ沈隊デビューの日が来た。 |
前日駐車場にて星空の下酩酊後就寝
カヌ沈隊実働隊員
林道を歩き工事中の堰堤を越える
快晴であれば素晴らしいナメなのだが
大所帯の為、遡行速度が遅くなる
気温0℃ 濃霧の中下降
左から フカマチ ヨコサワ ガリガリ
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当初の行程は米子橋駐車場から入渓し、沢を詰め、巻機山に出る。昼食を尾根上で取り、巻機小屋経由、井戸尾根登山道にて駐車場帰還。その後キノコ鍋大宴会を企画していた。当日は快晴の予報であったが、翌朝目を覚ますとあいにくの曇天。今にも泣き出しそうな空だ。日帰りピストンコースで気分もナメナメムードたっぷり。パッキングもいいかげん。持ち物もいいかげん。しかし酒だけは満タンにして遡行を開始した。 遡行開始後まもなくぽつりぽつりと雨が降り始める。ここ巻機山は10月下旬といえども、ふもとの雨は山頂で雪となることもあると言う。雨と共に高度を稼ぐ為、気温が急激に低下。遡行開始後まもなく客人せーいちさんの足に泣きが入る。完全な運動不足が原因だ。不調者発生に隊長とこの先のルート変更を相談しつつ遡行。今度は以前から故障を訴えていたナカハラ奴隷候補の膝が泣き出した。全体のペースが極端に遅くなり始める。簡単な滝を高巻き、乗っこし、遡行を続けるが、寒いはずである。全身ずぶぬれ状態で12mのスダレ滝を越えたあたりでは気温は2℃にまで下がっていた。俺を含め、ほとんどのメンバーが震えを押さえることが出来ず、また手先の感覚は無くなり低体温症の一歩手前のような状態になり始めていた。その先のゴルジュは突破不可能な為、ガイドブック通り左岸側の踏み後のしっかりした一般ルートに入る。ゴルジュ帯を越える高巻きルートと稜線へ抜けるルートだ。周囲は濃霧。現在地をコンパスにて確認し、明瞭な梯子を登るような踏み跡の急登を進むが、途中でぷっつりと踏み後が消えた。迷い道だ。戻るべきか考えたが、メンバーの疲労度を考え、危険なナメ沢の下降より、このまま稜線に抜け、登山道経由で巻機山を越え、下山することが賢明と思われ隊長との相談ののち、決定する。 しかしヤブコギ一時間半。途中コンパスの落し物もあり、人は入っている形跡がある。気温は更に下降し、-1℃にまで達していた。勾配は30度以上。濃霧と深い藪の中、数メートル離れた仲間も声を掛け合わなくてはお互いの位置を確認できない状態。幹部3名と緊急会議を開催し、ナカハラとせーいちさんの状態では進行不可能であり、稜線での気温も考え撤退決定。 高巻き→ヤブコギ→下降 はこんな理由であったのだ。ルートを見失ったと思っている浅はかな奴隷たちには悪いが、現在地は常に把握していた。今回の合宿で反省すべき点は、ザイルやハーネス等、登坂用具は装備していたが、日帰り遡行であるが為にその他の装備を軽視していたこと。また超メジャールートであった為、遡行ルートを把握していた者が少数であったこと。個人個人の装備(防寒対策や行動食等 ファーストエイドキットを持参していた者が何名いたかことか?)に自己責任を持てなかったことであろう。特に行動食は奴隷全員他人任せであった為、幹部の投げ捨てたチョコレートやパンなどを泣きながら拾い食いしていた状況であったので、大分辛かったようである。非常装備は個人個人でよく勉強し、経験を積んで、メタや行動食、ファーストエイドキット程度の装備は自己責任にてつねに忍ばせていてもらいたい。フル装備であれば、アノ場の撤退は行わず、何時間かかろうが稜線まで上がり、登山道で非難小屋泊であったはず。幹部を含め、今回はよい勉強になったことと思う、また違った意味で非常に内容の濃い合宿となった。 |
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米子沢より帰還した後は、冷え切った体を温泉で温め、川越犬小屋に宿泊。翌日は快晴の入間川にて、装備を天日干しし、炊事班長の飯をおおいに食らい、おおいに酒を呑み、カヌ沈隊創世記のころの川原乞食にもどったのであった。 |