◇CINEMA review◇
update 2000.03.25


左から→タイトル / 監督 / RATING(BEST=☆☆☆☆☆)



update 2001.03.25
●スティル・クレイジー / ブライアン・ギブソン ☆☆☆
70年代に一斉を風靡するも、時代の流れに呑みこまれ、かつメンバー同士の確執から解散してしまったロック・バンド。それから20年後、落ちぶれていたメンバー達が再び集まり、紆余曲折の末にバンドを再結成。失っていた時間と情念を取り戻していく……。いかにも90年代英国映画チックなストーリーで「またかい!」と言いたくなるが、これがコメディ・タッチの小気味良い作品でなかなか楽しめた。あまり期待をせずに観た分、ちょっと得をしたカンジ。もっともPUNK以前の70年代ロックを全くといっていいほど無視している本hpの趣旨とは合わないんだけどね。冒頭のナレーション「疲弊した70年代ロックに終止符を打つべく、神が世に送り込んだ使者がSEX PISTOLSだった……」はなかなか洒落が効いていてGOOD!

update 2001.03.12
●メトロポリス / フリッツ・ラング / ☆☆
フリッツ・ラングの最高傑作はドイツ時代のサスペンス『M』だと思う。あと渡米後の作品だが『飾り窓の女』もストーリー構成が絶妙で良い。イマイチなのは反ナチス映画の『マンハント』。趣旨は理解できなくもないが、あまりにアメリカナイズされていて少々うざい。特にあのエンディングには辟易だ。さて、本作はこうした作品より昔に作られた(と思う)無声映画。あのジョルジョ・モロダーが残存しているフィルムを元に復刻したというSF。まあ歴史的な価値はあるのだろうが、はっきり言って中身は退屈。搾取される労働者の解放云々に主人公の恋愛を絡めるテーマなんて、いまさら……。それでも「ちょっと面白いな」と思ったのは、近未来のSFにも関わらず蒸気機関を動力源としているところ。機械のデザインが如何にも20世紀初頭に流行った未来派っぽくて、これは観ていて楽しかった。

update 2000.08.05
●ラン ローラ ラン / トム・ティクヴァ / ☆☆☆☆
とにかく走りっぱなし。途中ポップなアニメーションも織り込んだスピード感溢れる映像は、まさに「サンプリング処理」されていて、これはナカナカ新鮮。まあ、ギミックと言ってしまえばそれまでだけど、十分楽しめた。ただストーリー自体は他愛ない。ギャグセンスのいまいち垢抜けないところも独逸的か。そうそう、しっかりジャーマンテクノしてるBGMは映像とマッチしてて心地良かった。

update 2000.05.08
●ANNA(アンナ) / ピエール・コラルニック / ☆☆☆☆
センスの良いパケ写に釣られて手に取ったのだが、大正解! ポップ&キュートで最高におしゃれな映画。観終ってから気づいたけど、国内未公開の1966年作品だったとは……なるほど、主人公の女の子は昔のゴダール作品によく出ていた女優だし、あの若い男はゲンズブールだったのか(笑) それにしても、変遷の激しい広告業界とファッション業界を舞台にしているにもかかわらず、まったく古さを感じさせないのはスゴイ!少々古臭いのは登場人物(♂)のヘアースタイルくらいなものか。イカしたBGMも、てっきり最近の流行りモノかと思った。「これ、サントラが出てれば欲しいなー」なんて、マジで聴きながら考えてましたよ(しまった、エンディングロールでクレジットをチェックするのを忘れた)。久々にダビング保存。あとでBGMはMP3化だな。できれば、劇場で再度観たいところだ!

update 2000.05.05
●23(トゥエンティースリー) / ハンス・クリスティアン・シュミット / ☆☆☆
都内のミニシアターでは昨年あたりから、新しいタッチの独映画が次々と公開されているが、本作もそのうちのひとつ(のハズ)。さて、カルト小説に感化された主人公の大学生ハッカーはKGBのスパイに取り込まれて、国家の機密情報を盗み出すハメに。当初、己のハッキング能力を誇示することでいい気になっていた彼も、コトの重大さに気づいてからは仕事のプレッシャーに耐え切れず、また警察の影に怯えてコカインに逃げ道を求めるようになる。そして次第に自我が崩壊していくのだが……。その精神面の脆弱さ、その堕ちていく様を、オタクな主人公ハッカー役の俳優(見るからに今時のコンピュータおたくってカンジでまさにハマリ役)が切迫感に満ち満ちた演技で実に巧く見せる。特に、話が進むにつれて徐々にシリアスなサスペンス調ドラマへと変質していく後半部分は圧巻だ。また本作は実話をモチーフとしているが、ハッカー達の犯罪行為とチェルノブイリの原発事故を結びつけるなど凝った脚色を施すことで、さらに衝撃的な事件を演出している点も見逃せない。冒頭で原発反対デモに積極参加していた主人公が図らずも原発事故を引き起こした(のかもしれない)というのは皮相的だ。所々、アメリカ(帝国主義!?)に相対するリビア(カダフィ大佐)の姿をドキュメンタリー映像で挟み込んでいるのも意味深で面白い。ストーリー展開のテンポも良く、全編96分はあっという間。テーマそのものはありがちで、観る前はそれほど期待していなかったが、けっこう楽しめた。

update 2000.01.25
●フェイス / アントニア・バード / ☆
いちおうアクションムービーの範疇に入る1998年公開の作品。日本語吹き替え版のビデオで観た。それにしても、ふだん字幕作品ばかりを観ているせいか、日本語でしゃべられると妙な違和感を覚えてしまう。なんていうか……軽薄な印象!? もっともこれには作品自体のデキも影響しているのかもしれない。配役にはここ数年ブレイクしたビッグネーム達が連なっているけど、皆いまいちアクション向きじゃないから、演技が臭く感じられる。ストーリーも平凡で惹きつけるものがない。おかげで約100分間、ずーっと醒めた目で鑑賞してしまった。いま乗りに乗っている英映画とはいえ、それなりの面子を揃えただけで、こういう駄作を作っちゃあイカンよ!

update 2000.01.17
●マイ・ネーム・イズ・ジョー / ケン・ローチ / ☆☆☆
学生時代には一度も入ったことのなかった早稲田松竹だが(そもそも当時は映画に対してネガティブだった)、社会人になってからは年に1、2回程度、足を運ぶようになった。いわゆる二番館なので、鑑賞料金は通常、大人1300円と割安。しかも、最終上映回なら夜間割引の800円で観れるというのは、さすが学生街にある名画座(でもないかぁ?)の面目躍如といったところか。池袋の文芸座が閉じた今、都内で夜間割引のある映画館はもうここしか残っていないのではないだろうか。
 今回、観に行ったのは最終日の最終上映回。月曜日にもかかわらずほぼ満席だった。 90年代半ば以降、ケン・ローチの作品は本国上映の1、2年遅れで公開されるようになっ ている。キャパシティー的にもミニシアターより一回り大きい上映館が使われるのが常で、固定ファン層がしっかりついた感がある。これはもちろん、英本国のみならず世界各地で高い評価を得ている彼の作品自体が、日本の観客にも受け入れられていることを意味しているわけだが、一方で昨今の英映画ブームに後押しされたという側面も小さくない。ただ、いずれにせよ認知を高めるキッカケを作ったのは、彼の作品の真価を知り、それを世に問うた映画関係者の努力であろう。6年前、千石の三百人劇場が当時、最新作だった『リフ・ラフ』と『レイニングストーンズ』を立て続けに公開、さらに同年秋、川崎市民ミュージアムが約1か月間に渡り、過去の全作品を取り上げた大々的な特集を組んだ。こうした動きが呼び水となったことに間違いはないと考える(……なーんてエラそーに書いてるけど、コレ、市井の映画ファンによる勝手な推測に過ぎません。でも大きくハズしてはいないと思う)。
 さて、本作品の主人公は、ヤバイ仕事と縁を切り、アル中からも立ち直った中年男(スラム在住で当然、失業者)。その彼が穏やかな日々の中でようやく幸せをつかみかけた時、自活能力のない仲間の窮地を、持ち前の情の厚さから見過ごせず、つい自らの禁を破ってしまう……というストーリーだ。スペインとニカラグワの内戦を題材にした前二作ほど、ヘビィな内容ではないが、社会的弱者の置かれている厳しい現実とそれに立ち向かう姿を描くのは同監督の十八番であり、かつ一貫として取り上げているテーマ。例によってエンディングに安易な結論は用意されておらず、むしろ観る者に問題提起を投げかける形で終わる。まさに白痴的なハリウッド映画とは対極にある作品。そういえば数年前、朝日新聞のインタビューに対し、監督自身「将来、私がハリウッドで映画を撮る可能性?……まずありえない」と答えていたな。

update 1999.12.19
●ベルベット・ゴールドマイン / トッド・ヘインズ / ☆☆☆
ようやく1週間レンタルになったので、手を伸ばしてみた。題材が題材ゆえ、もっと派手でドラマチックな内容かと思っていたが、これが意外と淡白。劇中に登場するジャーナリストの目を通じたドキュメンタリータッチの「妙に醒めた」作品だった。おそらく当時のグラム・ムーブメントに一方ならぬ思い入れがある(ハズの)製作者が、あえて自己抑制をして、スタイリストを気取ったのだろう……というのは少々穿った見方か。演出が地味めで、かつ劇中劇のストーリーもほとんど現実のパロディなので、ある程度の時代認識がないと、ワケが判らず楽しめない作品だろう。まあ、個人的にはけっこう楽しめたけれど。それにしても、BGMで「RE-MAKE RE-MODEL」や「VIRGINIA PLAIN」など、ROXY MUSICの初期のナンバーを幾度となく流していたのには感激すると同時に少々驚いた。てっきり、他の代表的なグラム・アーチストの曲を使っているものとばかり思っていたのだが……。しかし、よくよく考えてみると、ヴィジュアル面だけならともかく、当時、音楽的に一番グラムに相応しかったのは、初期のROXYそのものだったのかもしれない。

update 1999.11.24
●セコーカス・セブン / ジョン・セイルズ / ☆☆☆
原題は「リターン オブ セコーカス・セブン」。作中に明かされるその意味はともかくとして、なんとなくカッコイイ響きのあるタイトルに惹かれて手に取った。ジョン・セイルズって人は米インディー映画の始祖ともいえる存在だそうで、この作品も製作費はわずか2万ドル、役者の大部分は素人の友人を使っている(道理でみんなイモっぽいと思った)。ストーリー設定は50年代に生まれ、学生時代を共にした仲間たちが十年経って一堂に会し、週末のバカンスを過ごすという青春映画に得てしてありがちなパターン。お互い古き良き時代を追想しながらも、現在に至るまでの複雑な人間関係から色々とトラブルが生じて……というお約束?の展開が繰り広げられる。こうしたテーマは決して嫌いじゃないが、どうもこの作品に関しては共感するところが少なかった。登場人物が皆ドライでアッサリしているというか、キャラクターがシンプル過ぎていかにもフツーのアメリカンしているのが、個人的にはどうもダメ。たぶん、似たようなテーマの欧映画なら、相当気に入ったんだろうけど。

update 1999.11.11
●マイ・スウィート・シェフィールド / サム・ミラー / ☆☆
最近流行の英国映画で、たぶん脚本は「フル・モンティ」を書いた人。しかし、デキのほうはいまひとつ。英国風のユーモアやジョークを抑えたけっこう真面目な作りだが、高給目当てで鉄塔のペンキ塗りを始めた男たちと旅人の女ひとり……といった状況設定からして、もっとくだけたテイストにしたほうが良かったんじゃないかな。あと、心理描写が淡白なためか、所々ストーリー展開に唐突な部分がある。なんで急にこうなるの?ってカンジ。テンポの緩急にも乏しい。総じて演出に難ありという印象を受けた。セリフもちょっとダサイし。ちょっとネガな指摘ばかりになったけど、いかにも英国的ななだらかな平地が続く風景とモロ音響派しているBGMはうまくマッチしていて、これは良かった。

update 1999.11.09
●クローズ・アップ / アッバス・キアロスタミ / ☆☆☆
「ともだちの家はどこ」「そして人生は続く」などで知られるイランの巨匠、キアロスタミ監督の最近作(?)。貧しく不幸な、しかし映画を愛する男が著名な映画監督に成りすまし、図らずも詐欺を働いてしまうというストーリー。実際にあった事件を題材にして、しかも当事者をそのままキャストに使った斬新な手法が目を引く。法廷内にカメラを持ち込み裁判の様子を撮影しているのはスゴイ。社会派の同監督らしく、作品の根底には混乱した社会に対する批判がさりげなく込められているのだが、登場する庶民たちがみなピュアで変にスレてなく、かつ映画を含む芸術全般に高いリスペクトを露にするところが印象的だった。このすべてが真実なら実に素晴らしいが、果たして……。

update 1999.03.23
●昨年、マリエンバートで / アラン・レネ / ☆☆☆
40年近く前の古い映画だが、その作風が実に興味深かった。ある城で催された上流階級の倦怠感漂うパーティーに一人の男が人知れず入り込み、ある貴婦人に彼の妄想にすぎないまったくの作り話を語り始める。「私は一年前に貴女と偶然出会い、関係を持った、そして一年後に再会する約束をした」と。当然、彼女に心当たりはないのだが、執拗に問いかけ問い詰めていく彼の語り口に引き込まれるように、「その事実」を自分自身の中で意識形成していく・・・・・・。静的な城内での場面を中心としつつ、時折、幻覚的なフラッシュバックが挿入されるモノクローム映像、それに被さる抑制された朗読のような音声。この映像と音声は決して完全に融和することなく、常に一定の距離を保っている。主体となっているのはストーリーを語る音声の方かもしれない。まさに「映像付きの幻想小説」ともいうべきか。斬新である。劇場で観ていたら、かなりのインパクトを受けていたハズ。

update 1999.02.20
●シューティング☆フィッシュ / ステファン・シュワンツ / ☆☆☆☆
昨年、劇場公開された映画のなかでは、最も楽しめた作品のひとつ。「孤児院出身のまったく異なるキャラクターの二人組が、ある目標のために"痛快な"詐欺を繰り返し、蓄財をしていく。そこにちょっと謎めいたヒロインが絡んで・・・・・・」というストーリー。いわゆる青春映画ではあるが、"抑圧された"、"悲惨な"若者たちというステロタイプな構図は、ここにはない。また、お決まりの3大要素〜"セックス"、"ドラッグ"、"バイオレンス"もほとんどなし。とにかく、ウィットとユーモア、イタズラ心に富んだポップな内容で勝負! それが最高にイカしている。テンポの良いストーリー展開は、観る者を飽きさせないし、キャラ設定も絶妙。全編通して、作り手のセンスの良さが窺い知れる。ハッピーエンドも極めて英国的?な"良質"映画だ。

update 1998.10.25
●アサシンズ / マチュー・カソヴィッツ / ☆☆☆☆
確か、朝日新聞夕刊文芸欄のカンヌ映画祭現地報告記事では、「結局"暴力"しか提示することができなかった」と厳しい評価を下されていたが、それはまったくの誤解だ。監督自らが語っているように、この映画は、世代間での意識のギャップ、その皮膚感覚の違いを冷徹に見る者の眼前に突きつけた作品である。前作の「憎しみ」同様、暴力シーンは少なくないが、ここでの暴力はひとつの表現ツールにしかすぎない。その背後には現代社会ひいては現代人が抱える病巣の存在がある。同時代を生きる人間、カソヴィッツ監督と同世代の人間としては、共通認識(共感)を覚える部分が少なくなかった。ただ、主人公の青年の心理描写には、もう少し深みが欲しかった。平然と殺しを遂行する少年とのコントラストをつけるためか、やや臆病な性格に終始しがちとなっている。デジタルな少年とは異なり、彼はアナログな人間であるわけだから、もっと感情の起伏(振幅)があった方が良かったのではないかと思う。次回作にも期待したい。

update 1998.08.22
●GO NOW / マイケル・ウィンターボトム / ☆☆
元々、英映画は好きな方だし、最近話題の新進監督なので期待して観たが・・・・・・これは少々ガッカリ。難病にかかってしまった主人公と、その彼女や仲間たちとの関係といったシリアスな重たいテーマを、決してありがちな湿った話にせず、下ネタ満載の軽妙な会話を交えて描いているのだが・・・・・・ところどころ、あざとい受け狙いの演出が見え隠れして不快。やろうとしている事の方向性は悪くないが、中身が薄いというか底が浅いというか。ケン・ローチあたりの域にはまだまだ遠い感じがした。

update 1998.08.04
●ガラスの墓標 / ピエール・コルニアック / ☆☆☆☆
1969年仏独伊合作だが日本初公開は1996年とのこと(気がつかなかった)。ストーリーだけを見れば典型的なドラッグ〜マフィア映画なのだが・・・ハマリ役の主人公二人、男と女の情念溢れる匂いたつような映像と気の利いたセリフの全てがイカしている。そして、過剰な演出を抑制しながらも、エンディングに向けて徐々にスピードアップしていく展開が素晴らしい。アクションも最高。一切の無駄を省いた凝縮された90分間である。できれば、劇場で観たかったというのが本音。

●日曜日のピュ / ダニエル・ベルイマン / ☆☆☆☆
イングマール・ベルイマンは個人的に好きな映画監督の5指(もしかしたら3指)に入るので、この作品はずっと気にはなっていた。ただ、監督が彼ではなくその息子という点が引っ掛かって、ずるずると見過ごしていたのだが・・・これは明らかに失策だった。イングマール・ベルイマンの幼少期の回想を中心に、葛藤の末、結局、家族と離れた彼の父親の姿を描いた話。幼いイングマール少年にとっては大好きな父親。だが、その父親と母親の確執を目の当たりにしながら、その事実を客観的に捉え続ける少年の視線が印象的。それはまさに、後年の映画監督となった彼の視線そのものか。また30年の月日を経て、もはや死期を間近に控えた父親の、懺悔とも弁明とも言える独白。それに対する既に熟年となったイングマールの冷徹な言葉には強い衝撃を覚えた。これまた、公開時に劇場で観なかったのが悔やまれる。

update 1998.06.21
●ビヨンド・サイレンス / カロリーヌ・リンク / ☆☆+☆1/2
偶然初日に見に行った独映画。聾唖の両親を持つ少女の成長と、彼女と父親の心の葛藤、そして和解までを描いた感動作ってとこでしょうか。でも、けっしてお涙頂戴っぽくならないのがゲルマン的か。印象的なオープニング以外はストーリー、演出ともオーソドックスで平凡といえば平凡だが、そつなくまとまった作品。日本人好みではあるが、「ポネット」程のロングランにはならないと思う。

●青春シンドローム / セドリック・クラピッシュ / ☆☆☆☆
本監督の作品では唯一観ていなかったデビュー作。この手の青春回顧系映画は、共感できる部分の有無が評価に直結してしまうが、親友同士でもお互いに深入りを避けるような、ライトで不干渉な(といってもよい)仲間との関係は、今の若い世代とも共通するところがあると思う。ただ、自己の内面部分での心の葛藤や焦燥感に関しては、表現がやや軽すぎる感じがした。(「そういうライト感覚の青春映画だ」と言われればそれまでだが)。ともあれ、相変わらず鑑賞後に(決してハッピーエンドではないにもかかわらず)ある種爽やかな気分にさせてくれるのはサスガ。充分に楽しめた。個人的には『青春のくずや〜おはらい』程のシンパシーは感じなかったが。

update 1998.02.02
●ピケを越えなかった男たち / ケン・ローチ / ☆☆☆☆
リバプール港湾労働者の労働争議を取り上げたドキュメンタリー。全世界的に見ても港湾労働者の労働環境は恵まれているとは言い難いが、彼の地のそれはまるで19世紀後半の労使関係の如く。サッチャリズム下での経営合理化のしわ寄せは全て労働者側に転嫁され、労働者はこれまで勝ち取ってきた既得権を次々と奪い取られていく。個人的には、かつての社会主義的政策はやや過剰気味で経済社会全体を停滞させる原因になったと認識しているが、新保守主義による最近の英国経済の好調さもマクロ的には評価されても、いまだ階級社会が色濃く残り、自由社会における基本ルールである「機会均等」が実現しにくい状況においては、前述のようにミクロ的には強者vs弱者(資本家vs労働者)の対立図式を強める結果になるのかもしれない。、、、のかな?などと考えつつスクリーンに見入っていました。

●そうでなければOK! / クレール・シモン / ☆☆☆
最初の数十分は「何だかヘンな作品だな」としか感じなかったが、、、だんだん身近な(といってもよい)現代社会劇であることに気がついた。女主人公は、虚偽の妊娠を申告することで、病床の父を勇気づけ、夫の転勤を回避させ、家族達を喜ばせる。もちろん、これはポジティブな問題解決では決してなく、いつかはバレるに違いない、その嘘は結局のところ現実逃避〜モラトリアルに過ぎない。そして、第三者の目にはナンセンスとしか写らない彼女の必死な行為は、それに固執すればするほど常軌を逸した病的なモノとなる。昨今の新聞の三面記事的で、実は妙にリアルさを感じさせる部分がある。

update 1997.10.21
●インサイド / アーサー・ペン / ☆☆☆☆
96年のカンヌ出品作。VIDEOで観たのですが公開されていましたっけ?ストーリーのほとんどがクローズドな刑務所内で展開。冤罪をかけられたインテリの主人公が閉所で精神的に追い詰められていく様が、劣情を抱く刑務所長との緊迫感のある“やりとり“とリアルな画面で描かれている。この辺はアーサー・ペンお得意のパターンか。アパルトヘイトを題材にしているが、そこにあるのは、人種差別撤廃=白人対黒人というステロタイプな図式でなく、特権意識に浸る平凡な白人の、良識的な知識人に対する強烈なコンプレックス、嫉妬の情である。

●チェッキングアウト / デビット・リーランド / ☆☆
この手のコメディは一寸苦手。ところどころ笑えることには笑えるけど、大爆笑までは至らない。ギャグに毒気も感じられない。馬鹿馬鹿しさも中途半端で今一つ。少々ツライ。

●家族の気分 / セドリック・クラピッシュ / ☆☆☆☆ もはや同監督作品にハズレ無し。ストーリーは終始、うだつの上がらない兄が経営するカフェ内で交わされる家族同士のエスプリの効いた会話で構成される人間模様。舞台劇の映画化だが、単一のシチュエーションながら全く飽きさせない落ち着いた作りが最高。観賞後、精神的に豊かになった気分。

update 1997.8.13
●百貨店大百科 / セドリック・クラピッシュ / ☆☆☆☆
昨年、「猫が行方不明」が口コミロングランヒットとなった。セドリック・クラピッシュの最新公開作、、、とはいっても作品自体はコッチの方が古いのね。「猫が、、、」に比べるとストーリーの筋が通っていてより一般受けしそうな感じ。パリ=ハイセンスで先進的でカッコイイといった変な気負いなしで一般市民を描いている所がこの監督の良いところでなんだかホッとして心地よい。

●ティコ・ムーン / エンキ・ビラル / ☆☆☆
これまた仏映画ですが、一応、未来の月が舞台なんだけどイマイチSFっぽくない映像。話の方はステロタイプ気味で特に新鮮味はないがまとまってはいる。特筆すべきはジュリー・デルピーの赤カツラ姿でしょう。これはメチャ似合っててVERY GOOD!

update 1997.7.9
●テロ2000年集中治療室 / クリストフ・シュリンゲンズィーフ / ☆☆☆☆
やっと見に行くことができました。テーマ的には「ドイツチェーンソー・・・」よりも関心があったので期待度も大きかった。この監督の作品にも大分慣れたので、もう一次接触での不快感はありません。個人的にはグロはあまり好きではないんですけどね。この手の作品は面白いし意味もあると思いますが、問題提起の先がやや不透明な気も(それで良いのかもしれませんが)。

●アルファヴィル / ジャン・リュック・ゴダール / ☆☆
うーん、如何にも60年代SF。昔の方が想像力逞しいですよね。でも、ゴダールの作品は2本除いてすべていまいちに感じる私です。

●シルバーグローブ / A.ズラウスキー / ☆☆
難解というか作り手のマスターベーションというか。全くダメでした、私には。意味もなければ無意味さもない。

●都会のアリス / ヴィム・ヴェンダース / ☆☆☆☆
たぶん唯一観ていなかったヴェンダース作品。一時期ロードムービーには辟易していたこともあって・・・。雰囲気でサラっと観れてしまうが、なんとなく後を引く作品。この頃の作品は好きだな。でも、ココ数年はパッとしないような気がします。基本的にはファンだけど。でもアントニオーニの手伝いをした「愛のめぐりあい」は良かった。




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