散華
〜小説・土方歳三〜
はじめに
歴史小説を書くわけではない。
あくまでも、娯楽小説を目指している。
筋の通ったオリジナルの物語が書ければいいのだが、残念ながらそこまでの想像力はない。
だから、どうしても通史に沿った物語となってしまうだろう。
その中でどれだけのことができるか。
あがけるだけ、あがいてみようと思っている。
表記や表現も極力わかりやすいものにした。
私はもちろん物語の時代に生きたわけではないので、実際にどのような言葉が使われていたのかはわからない。
様々な文献も存在するが、そのほとんどが漢文的なものであり、口語的なものではない。
作中に、当時使われていないような表記や表現が数多く出てくるかもしれないが、それを踏まえて了承してもらいたい。
これから土方歳三という男が出てくる。
それは間違いなく、私をこの幕末という時代に導いた一人の男である。
司馬遼太郎氏の「燃えよ剣」。
この一冊の本を手にしたことから始まったといっていいだろう。
そこに書かれていたのは、歴史などではなく、その中で散っていった男の姿であった。
男、である。
私もこの男というものを書いてみたい。
だから、これから始まる物語は歴史小説ではなく、娯楽小説なのである。
幕末であって幕末ではなく、新選組であって新選組でもない。
もちろん土方歳三であって、土方歳三でもない。
私が書く一人の男の物語である。
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