「ゆうかちゃん、ゆうかちゃん。
私といっしょにごはんをたべましょ。」
おうちのお庭のおおきな木の下。
小さなハンカチを両手に広げて、ゆうかちゃんは自分に声をかけます。
やえざくらがぽらぽろとかたまりで落っこちてくるのを
走って追いかけながら地面につく前につかまえて、
ぜんぶでいつつになったらごはんにするというのが
ゆうかちゃんの“ゆうかちゃんとの今日のおやくそく”なのです。
「ゆうかちゃん、ゆうかちゃん。」
そういいながらまた一つ。
白いハンカチの中にピンクのかたまりがぽすんっとおすわりします。
「あとひとつでごはんですよぅ。」
ゆうかちゃんは小さな声でつぶやきました。
「はあい、はい。ゆうかちゃん、ごはんはなあに?」
ゆうかちゃんはびっくりして立ち止まりました。
パパもママもお仕事で、家には誰もいないはずなのに、
確かにゆうかちゃんじゃない声がしたのです。
「あと…ひとつで…ごはん…ですよぉ。」
今度はもっと小さな声で、ゆうかちゃんはよびかけてみました。
するとこんどは
「じゃあもうひとつ、はいどうぞ。」
という言葉といっしょに、ぽすんとお花がハンカチの中に落ちてきたのです。
ゆうかちゃんはくるりと大きな目を回し、ぐるりと上を向きました。
ピンクの花のなかに、かさかさ動くえだが見えます。
そう、あれは、茶色のとりさん。
ゆうかちゃんはすうっと息をおおきくすっていいました。
「みいつけたっ!とりさん、おはなありがとう!」
ちーちちちちちっ
ばさばさばさっ……
とりさんは、おどろいて飛んでいってしまいました。
あれえ、おかしいなあ、とりさんじゃなかったのかなあ。
ゆうかちゃんはとりさんが青空のもっと向こうに行ってしまうまで見送ると、
もういちどまっすぐうえのピンクのもやに目をこらしました。
すると、おやまあ、みどり色の葉っぱにまじって、きみどりいろのくねくね虫さんが
うねうねダンスをおどりながらこちらを見ているではありませんか。
ゆうかちゃんは、今度は大きな声でおどろかさないようにと、
うんと背伸びをしてささやきごえでいいました。
「くねくね虫さん、おはなくれたの、あなたでしょ?」
くねくねくねくね…
うねうねね…
くねくね虫さんは返事もせずにおどりをみせるばかりです。
やっぱり…ちがうのかなあ。
ゆうかちゃんはもう一度ピンクのふわふわを見上げました。
おどりおわったのか虫さんもいなくなり、どんなにじいっと見つめても
ただお花たちがゆらゆらふわふわとしているばかりです。
さわさわさわ…
くすくすくす…
ゆうかちゃんはもういちどじいっと見つめました。
ごはんをたべよ…
くすくすくすー
「あ、みいつけたっ…!!」
「みつかっちゃった…」
耳元で声がしました。今度こそまちがいありません。
「いっしょにごはん食べよ!あっちからはいってね!」
ゆうかちゃんはおうちの中にかけこむと、まどをめいっぱい開けました。
「さあ、どうぞ!」
そうして白いカーテンがふわああっと、おおきく、おおきく、まくれあがりました。