和歌山辯(和歌山弁)講座〜単語編〜

ここでは主に、紀中、特に有田地方の方言を紹介します。

和歌山辯(和歌山弁)とは 和歌山県で話される方言で、紀北、紀中、紀南の各地方によっても、かなり異なる。
特徴としては、
・「ザ行」と「ダ行」の区別がない、さらに「ダ行」と「ラ行」の相乗りが起こる。(ザダラ変換)
・「カ行」と「ラ行」も同様に変換される。
・「サ行」が「ハ行」に変換される。
・子音が落ちる。
等がある。
この特徴は、音の減少・同一化が起こったもので、言語学的に見ると、進化しているものらしい。
東京下町方言の「ひ」と「し」の区別がつかない、というのも同じである。
「ひ」と「し」の2音どころか、カラザダ行の20音が進化して同一化した超最先端の日本語なので、安心かつ大威張りで使ってもらいたい。

特に断りのない限り、語の変化は、現代表記を基準にしてあるので、時間軸上の変化の向きが逆になっている場合があります、ご了承下さい。

また、あがで調べただけやさけ、語源らが間違ちやう場合があるで。訂正や他の説がある場合は、掲示板に知らいて欲しよ。(また、独自研究のため、語源等が誤っている場合があります。訂正や他の説がある場合は、掲示板にお知らせ下さい。)

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名詞

あいた 「明日」のこと。「し」のsh音が落ちたもの。
あっぽけ 「阿呆」の強調表現。(箕島付近)
あま 「ゴキブリ」のこと。
いもと 「妹」のこと。長母音の短母音化が起こったもの。
えぇ 「家」のこと。単独では「いえ」。(例)あがえぇ(わが家)
おかしん 「お菓子」のこと。「ん」は、調子を整える為か。
おとと 「弟」のこと。長母音の短母音化が起こったもの。
かだら 「からだ」のこと。ザダラ変換。
きょうわ 「今日」のこと。「今日(きょう)」に主語を表す係助詞「は」がついて、一語化したもの。当然、「きょうわ」に、主語を表す係助詞「は」がつくと「今日は(きょうわは)」となる。
きんの 「昨日」のこと。「ん」が増加して「う」が落ちたもの。
クリーム 「アイスクリーム」のこと。「アイス」では氷菓子。
ごし 「〜と共に」を表す接尾語「〜ごと」のこと。「と」が「し」になる理由は不明。
(例)「皮ごし食べる。(皮ごと食べる)」
こないだ・こなえだ 「先日・この間」のこと。「の」と「あい」の融合(リエゾン)。
こんだ 「今度」のこと。o音がa音に変わったもの。
さし 「物差し(定規)」のこと。「物」の省略。
さと 「砂糖」のこと。長母音の短母音化が起こったもの。
じてこ 「自転車」の「じて」+親称「こ」。韻を踏んで「えてこ(猿)」になることもある。
じばん 「襦袢」のことから「下着(上)」のこと。拗音yが落ちたもの。
じゃいけん 「じゃんけん」のこと。n音がi音に変わったもの。
たいたん 「煮物」のこと。「炊いた物」の短縮。
たおし 「束子(たわし)」のこと。a音がo音に変わったもの。
たのもと 「食器洗い」のこと、炊事を含む場合もある。棚下(たなもと)からか。
ちぎ 大型の桿秤(さおばかり)のこと。転じて秤全般についても言う。「杠秤」又は「扛秤」と書く。
ちぼ 釦などの小さな突起物のこと。
ちょっきし 「丁度」「ぴったり」のこと。「ちょっきり」とも言う。r音の落ちたもの。
つわ 「唾」のこと。b音がw音に変わったもの。
ながたん 「菜切り包丁」のこと。「菜刀(ながたな)」の変化。
にんにこ 「おにぎり」のこと。「握る」の擬態語に、親称の「こ」が付いたもの。
べっこう 「余計なこと」「要らぬこと」のこと。「別項」か。(田辺付近)
みずせった 「水(海水浴)」用の「雪駄」のこと、ビーチサンダルに同じだが、他に適当な日本語がないところをみると、最適であるにちがいない。
みどんこ 「溝」+親称「こ」の「みぞこ」のこと。ザダラ変換。
ゆんべ 「昨晩」のこと。昨夜(ゆうべ)の訛り。
よんべ 「ゆんべ」に同じ。「ゆんべ」「よんべ」は全国にあり。

代名詞

こえ 「これ」のこと。「れ」のr音が落ちたもの。
そえ 「それ」のこと。「これ」に同じ。
あえ 「あれ」のこと。「こえ」に同じ。
どえ 「どれ」のこと。「こえ」に同じ。
だえ 「誰」のこと。「こえ」に同じ。

(補足)

「こ、そ、あ、ど、だ」が日本全国共通なのは、はっきり言って驚きである。
なお、南の日高地方では「こい」などとe音がi音となる。
ここたい・ここたし 「ここら辺り」のこと。ra音が落ちたもの。s音が追加される場合もある。
そこたい・そこたし 「そこら辺り」のこと。「ここたい」に同じ。
あっこたい・あっこたし 「あそこら辺り」のこと。促音化されているが「ここたい」に同じ。
どこたい・どこたし 「どこら辺り」のこと。「ここたい」に同じ。
あが 「我(わが)」のこと。w音が落ちたもの。
うら 「わたしら」+「(は、が)」のこと。「わいら」のw音が落ちて変わったか、「うちら」の省略か?相手に対しても言うことがある。
おいやん 「おじさん」のこと。「じ」のj音が落ちたもの。愛称「〜やん」は関西辯共通。
てき 「あなた」、「お前」のこと。相手を表す意味の「的」か。主語を表す係助詞「は」がつくと「てきゃ」となり、転じて「てきゃ」単独で相手を表すこともある。複数形は「てきゃら」。
わい 「わたし」のこと。「わたし」→「わっし」→「わし」となり、s音が落ちたもの。
わえ 「わい」のe音がi音に変わったもの。

動詞

いがむ 【五段】真っ直ぐではなく、「曲がる」こと。「歪(ゆが)む」の変わったものだが、変形する意味の「歪む」とは区別される。「いがんじゃう」と形容詞化されて使われる。
(例)「いがまんと、まっすぐせえ。(曲がらないで、真っ直ぐしなさい)」
いごく 【五段】「動く」こと。U音がi音に変わったもの。
(例)「いごかんと、じっとぉしてぇ。(動かないでじっとしていなさい)」
いごかす 【五段】「いごく」の他動詞。
(例)「わえの車、いごかいてきてよ。(私の車を動かしてきて下さい)」
いぬ 【五段】「帰る」こと。古語「去(い)ぬ」。
(例)「あがえぇ、いんじゃうんけ。(我が家に、帰っているのですか)」
うつる 【五段】「ペンなどのインクが紙にうつる」こと。「うつらん」と、否定の意味だけで使うようだが、よく分からない。
(例)「このペンうつらん。(このペンは書けない)」
うめる 【下一段】「水を入れて(浴槽の)湯の温度を下げること」こと、どうやら共通語らしい。
(例)「風呂、埋めやな熱て入れやん。(風呂は、水を入れて湯温を下げないと熱くて入れない)」
えぞる 【五段】字や絵の上を「なぞる」こと。「絵取る」の、ザダラ変換だが、「なぞる」と混ざった可能性もある。
(例)「えぞったら、よけぇいがんだ。(なぞったら余計に歪んだ)」
えどる 【五段】字や絵の上を「なぞる」こと。絵を写し取る「絵取る」から。
(例)「字ぃむさいさけえどっとこ。(字が汚いのでなぞっておこう)」
おく 【五段】仕事や作業を「中断する」「終える」こと。作業道具を「置く」から。
(例)「このへんでおいとこか。(このへんで終わっておこうか)」
かやす 【五段】「(ひっくり返す、戻すなど)返す」こと。e音がya音に変わったもの
(例)「かやさんよに持って行きな。(ひっくり返さないように持って行きなさい)」
こまる 【五段】「歯の間に物が挟まる」こと。内に置かれるの意味の古語「込まる」の意味の狭くなったもの。
(例)「歯ぁへ物こまっちゃう。(歯に物が挟まっている)」
こらえる 【下一段】「許す」こと。「我慢する」の意味の変わったもの。
(例)「もう、こらえてよぅ。(もう許して下さい)」
さげる 【下一段】「(ぶら下げて)持つ」「持ち上げる」こと。下に置いてある物を「提げる」の意味から、持ち上げる意味が強まったもの。
(例)「ちょー、箪笥さげてくれよ。(ちょっと、箪笥を持ち上げてくれよ)」
しける 【下一段】「つまらなくなる」「白ける」こと。「白ける」あるいは「湿気る」の転だと思われる。以前は「しけちゃう」最近は「しける」の形で使われているようだ。
(例)「おまんのギャグしけるわ。(あなたのギャグは白けるよ)」
しゃるく 【五段】「歩く」こと。古語「(〜)しありく」の変化か。「でしゃるく(出歩く)」となることも多い。悪い意味で使うことの方が多いかもしれない。
(例)「夜中にでしゃるいてからに。(夜中に出歩いたりして)」
すえる 【下一段】「腐る」こと。「す」は「酸」で、酸っぱくなること。
(例)「こえ、すえちゃあ。(これは腐っている)」
せちがう 【五段】「折檻する」こと。古語「殺害(せちがい)」の動詞化したもの。
(例)「せちごちゃろか。(折檻してやろうか、いてもたろか)」
たかる 【五段】「上に乗る」こと。「群がる」の意味が狭くなったもの。
(例)「ボール、屋根へたかっと。(ボールが屋根に乗ってしまった)」
たつ 【五段】「嫌になる」「飽きる」こと。単独ではなく、「たってくる」と使う。もう十分ある意味の「足る」の変化か。
(例)「おんなじことばっかりで、たってきと。(同じことばかりで、嫌になってきた)」
たとむ 【五段】「たたむ」こと。「と」のア段がオ段に変わったもの。
(例)「布団たとむ。(布団をたたむ)」
ちやう 【五段】「違う」こと。「ちゃう」に変化する前段階か、あるいはその逆か。
(例)「こんなん、わえのんとちやわれ。(このような物は、私のとは違いますよ!)」
つく 【五段】自転車、乳母車などを「押す」こと。「(杖等を)突く」と同義か。
(例)「自転車パンクしたさけ、ついてか。(自転車がパンクしたので、押していきます)」
つまえる 【下一段】口を「閉じる」こと。徳島辯では「片付ける」ことだが、関連性は不明。
(例)「口つまえて食べやんとか。(口を閉じて食べないでおきます)」
つままえる 【下一段】「つまえる」に同じ。
(例)「(怒って)口つままえてやんと…。(膨れっ面しないで…)」
つむ 【五段】「混む」こと。「沢山ある」の意味の「詰む」。
(例)「道つんじゃーる。(道が混んでいる)」
つめる 【下一段】「(指を)挟む」こと。(固い約束などで)指を切り落とす意味の「詰める」ほど挟んでしまうか、指でつまむ意味の「抓める」の変わったものか。
(例)「痛いよ〜、指つめた。(痛いよ〜、指を挟んでしまった)」
とごもる 【五段】「とごる」に同じ。「とどこおる」→?→「とごもる」→「とごる」か。
(例)「でんでん溶けんととごもっちゃーる。(全然溶けないで溶け残っている)」
とごる 【五段】「(水などに入れて)溶け残る」こと。「滞(とどこお)る」の短縮か。
(例)「さととごっちゃーる。(砂糖が溶け残っている)」
にえる 【下一段】「内出血する」こと、果物などを落としてその部分が柔らかくなることにも使う。
(例)「足うって、にえてもと。(足を打ちつけて、内出血してしまった)」
ぬがる 【五段】「刺さる」こと。雨で土がどろどろになる「泥濘(ぬか)る」から、泥濘みに「はまる」意味に変わったものか。さらにそこから、「刺さる」意味に変わったものと思われる。
(例)「田んぼへ足ぬがっと。(田んぼに足が刺さってしまった)」
ぬわる 【五段】「ぬがる」に同じ。
(例)「刺(とげ)ぬわっちゃあ。(刺が刺さっている)」
ねずる 【五段】「(食べ終わった後の皿などを)舐る」こと。行儀悪い場合にしか使わない。
(例)「ねずりなさんな。(なめてはいけません)」
ねぶる 【五段】「瞼を閉じる」こと。眠ることと瞼を閉じることが同じ様子であることから。「眠る」の「む」と「ぶ」が変わったもの。
(例)「目ぇねぶっちゃあ。(目を閉じている)」
はつ 【五段】「叩く」こと。1発の「発」か?強意の「はったかす」、繰り返す「はちまわす」もある。
(例)「頭はつろ。(頭をたたくよ)」
はつる 【五段】「削る」「取る」こと。古語の「斫(はつ)る」。
(例)「わいの分はつってよ。(私の分を削って)」
ひきちらかす 【五段】「散らかす」こと。「引き散らがす」と音便化することもある。
(例)「また、引き散らがいちゃあいしょ。(また、散らかしていますね)」
ひしる 【五段】高い声で鹿が鳴くことを表す語から、(子供が)甲高く大声で叫ぶこと。擬音語からだと思われるが、語源は不明。(参考)散木集
(例)「がいな声でひしんな。(大きな声でさけぶな)」
ひく 【五段】火事を「引き起こす」こと。風邪を「引く」と同義か?「火事ひく」と複合語で使われる。
(例)「おいやんとこ、火事ひいた。(おじさんのところが、火事を出した)」
ひねきる 【五段】切れるほど強く「ひねる」こと。
(例)「口のはた、ひねきっちゃおか。(口のそばを、ひねってやろうか)」
ふてる 【下一段】「捨てる」こと。「す」のs音が落ちて変わったもの。
(例)「こえ、ふてるで。(これ、捨てますよ)」
へくる 【五段】「盗む」こと。元は、口をぱくぱくして食べ物を取る様子の動詞化「ぱくる」。「ぱ」のa音がe音に変わったもの。
(例)「じてこへくられた。(自転車を盗まれた)」
へつる 【五段】「はつる」に同じ。a音がe音に変わったもの。
(例)「どころへつれやんか。(どこか削れませんか)」
ほたえる 【下一段】「ふざける(て暴れる)」こと。近世語で当時の意味では第二義。第一義はあまえる、つけあがる。語源は分からない。
(例)「ほたえよすな。(暴れるな)」
まう 【五段】目が「回る」こと。「目ぇまう」と複合語で使う。完了、存続を表す「ちゃう」がつくと、「目ぇもうちゃう」と音便化する。
(例)「がいに飲んださけ、目ぇもうちゃう(沢山酒を飲んだので、目が回っている)」
まくれる 【下一段】「転落する」こと。「まくれ落ちる」と複合語で使うこともある。
(例)「四駆ちごたら、まくれてまうで(四輪駆動でなかったら、転落してしまうよ)」
もじける 【下一段】「壊れる」こと。元は、形を変える意味の他動詞「捩(もじ)る」で、自動詞化で「け」がついたもの。
(例)「もじけてもた。(こわれてしまった)」
もつぼれる 【下一段】「縺れる」こと。
(例)「がいにもつぼれちゃあ。(非常に縺れている)」
やつす 【五段】「めかす」「着飾る」こと。「窶(やつ)れる」の他動詞。「窶す」本来は「みすぼらしくする」「目立たないようにする」という逆の意味。
(例)「今日(きょうわ)やついて、どこ行くんよ。(今日めかして、どこに行くんですか)」
やぶつ 【五段】紙などを「破る」こと。敵を倒す場合には使わない。ザダラ変換の一種か。
(例)「この紙、見やれやんよにやぶつで。(この紙、見られないように破るよ)」

補助動詞

よし 「なさい」のこと。本来は動詞の命令形の一部「よ」に「し」が付いたもの。
(例)「あがでしよし。(自分でやりなさい)」

(補足)

「し」は、「さい」の短縮「せ」の母音変化か、接続助詞「し(朝も早いし、等の「し」)」か。南の日高地方では「しなさい」を「さんせ」と言うことから、「せ」と同じものの可能性が高いと思われる。

形容詞・形容動詞

あかい 「明るい」こと。「る」が落ちたか、朝の空が赤いことからか。
(例)「もうあかなってきと。(もう明るくなってきた)」
あらくたい 「(勢いや状態が)激しい」「度を越している」「荒々しい」こと。「荒し(ク活用)」の連用形に強意の「たい」がついたもの。
(例)「がいにあらくたい。(とても荒々しい)」
うすべったい 「(厚さが)薄い」こと。「薄い」に強意の「べったい」が付いたもの、共通語らしい。「薄べんべろい」と言うこともある。
(例)「わいの給料袋薄べったいわ。(私の給料袋はとても薄いよ)」
おきい 「大きい」こと。長母音の短母音化が起こったもの。
(例)「てきゃの犬、がいにおきい。(あなたの犬は、とても大きい)」
おっとい 「恐ろしい」こと。s音の落ちたもの。「おとろし」「おっちい」もある。
(例)「あのおいやん、おっといで。(あのおじさんは、恐ろしいよ)」
おもしゃい 「面白い」こと。r音が落ちて変わったもの。
(例)「おもしゃい本見ちゃーるの。(面白い本を見ているんですね)」
かいだるい 「かったるい」のこと。「かいだるい(腕弛い)」は「かいなだるい」の変わったもの。こちらが本家。
(例)「かいだるいわ(かったるいわ)」
きぶい 「きわどい」こと。古語の「きぶし」。「厳しい」の転。
(例)「そえ、きぶいわ。(それはきわどいわ)」
すいだ 「粋(いき)だ」のこと。単なる漢字の読み替えだろう。
(例)「あでぇ、すいな格好ひて、どこ行くんよ。(あれ、粋な格好でどこに行くのですか。)」
すこい 「ずるい」こと。
(例)「おまん、すこいで。(あなたは、ずるいよ)」
ずつない 「(食べ過ぎて)お腹が苦しい」こと。古語「術(ずつ)無い」、つまり、なすすべが無いこと。
(例)「ずつないてよ(食べ過ぎてお腹が苦しいよ)」
ちさい 「小さい」のこと。長母音の短母音化が起こったもの。
とわい 「遠い」こと。「とほい」のh音にw音が付いて変わったもの。
(例)「とわいとこ、行かんときな。(遠いところへ行かないでおきなさい)」
ぬくい 「温い」こと。意味はそのまま、気温にも使う。
(例)「なったの。(暖かくなりましたね)」
ひやこい 「冷たい」こと。「冷や」に強意の「こい」がついたもの。
(例)「クリーム、がいに冷やこい。(アイスクリームが、とても冷たい)」
ふわわり 「格好・世間体が悪い」こと。「風(風体)悪い」の変形。
(例)「わいらけ雪駄れふわわりわ。(私だけ雪駄で格好が悪いよ)」
むさい 「汚い」こと。「無細工」あるいは「むさ苦しい」の略か。
(例)「わえの部屋むさいわ。(私の部屋は汚いよ)」
ようさん(だ) たくさんあること、大げさなさま。「仰山(だ)」のg音が落ちたもの。
(例)「ようさん入っちゃぁらいしょ。(たくさん入っていますね)」

連体詞

ほんな 「そのような」のこと。s音がh音に変わったもの。
(例)「ほんなこと、できやんでー。(そのようなことはできないよ)」

副詞

あらくたい 程度が甚だしいことを表す。強意の形容詞から副詞に転じたもの。
(例)「あらくたいおもしゃい。(面白すぎる)」
がい 量、程度が大きいことを表す。「我意」か。共通語らしい。
(例)「がいなこと買(こ)うてきたの(沢山買ってきたね)。」
ちょう 少しの量、程度を表す「ちょっと」のこと。「っと」が省略されたもの。
(例)「ちょう待てよ。(ちょっと待ってよ)」
なっとう 疑問副詞「どのように」のこと。
(例)「なっとうしょう。(どのようにしよう、どうしよう)」
のとろ 量、程度の大きいことを表す「やたら」のこと。「や」が省略されて「ん」が発生し、変わったものか。(金屋地方)
(例)「のとろつんじゃーる。(やたらに混んでいる)」
まぁ 少しの量、程度を表す「もう」のこと。o音がa音に変わったもの。
(例)「まぁちょう前。(もうちょっと前)」
まっと それ以上の量、程度を表す「もっと」のこと。o音がa音に変わったもの。
(例)「まっとおくれ。(もっと下さい)」
やにこう 量、程度の大きいことを表す「(脂が濃いほど)しつこく」のこと。京言葉「脂(やに)濃い」より。(田辺地方)
(例)「やにこうつんだーる。(やたらに混んでいる)」
よう〜ん 古語「え〜ず(〜することができない)」の変わったもの。
(例)「そんなん、よう食べやん。(そんな物は食べられない)」
わりかし 程度を表す「割と」のこと。
(例)「わりかしマシやん。(割とマシですね)」

助動詞

える・らえる 受身・可能を表す「れる・られる」のr音の落ちたもの。下一段動詞は、下記の「やれる」よりも「らえる」が付くことが多い。
(例)「がいなこと作文書かさと。(かなりの量の作文を書かされた)」
かす 他に対しての作用を表す「〜してやる」のこと。未然形語尾「か」に、使役の助動詞「す」の付いたもの。
(例)「おせかいちゃおか。(教えてあげようか)」
ちゃう 完了、存続を表す「ている」の短縮。「ちゃあ」「ちゃる」「ちゃーる」と変わることもある。
(例)「もう、打っちゃあ。(もう、打っています)」
過去を表す。a音がe音に変わったもの。終止形のみ「と」に変わる。終助詞「そー」を伴うことがある。
(例)「おれ、電車来そー。(ほら、電車が来たよ)」
やれる 上下一段・カ行変格活用動詞に付き、受身・可能を、サ行変格活用動詞に付き、受身を表す。自発・尊敬を表すことはほとんどない。
(例)「この服、着やれるんけ。(この服は着られるのですか)」

(補足)

サ変動詞では未然形「し」に続く。(例)「落書きしやれる。」
カ変動詞も未然形「こ」に続くが、「き」になる場合もある。(例)「あいた来やれる。(明日来られる)」
やん 動詞・助動詞に付き、否定を表す。
(例)「離せやん。(離せない)」

(補足)

活用は、(未)○(用)やんかっ・やなん(終)やん(体)やん(仮)○(命)○

助詞

いて 「して」に同じ。s音の落ちたもの。
(例)「あかないてよぉ。(駄目でしょうが)」
疑問を表す終助詞「か」の変わったもの。泉南地方でも使う。南の日高地方では「かい」となる。
(例)「こんなん要るん。(このような物は要るのですか)」
元は形容詞を名詞化する接尾語か。形容詞語幹について感嘆を表す。終助詞「よ」を伴う場合もある。
(例)「この饅頭の甘よ。(この饅頭の甘いこと)」
さけ 「〜だから」の意味の大阪辯「〜さかい」の短縮。
(例)「留守やさけ、居てやんなん。(留守なので、居なければならない)」
しか 限定を表す副助詞「しか」が、比較をも表すようになったもの。おそらく「〜しか〜ない」を省略したものと思われる。
(例)「こっちしかええ。(これの方がいい。元は「これしかいいものがない」)」
して 感動を表す終助詞。s音が落ちて「いて」にもなる。後に終助詞「よ(よぉ)」を伴うこともある。
(例)「こえからするとこやして。(これからするところですよ)」
じょ 念を押す「〜(です)ね」のこと。古語「ぞよ」の変化。
(例)「そらそうじょ。(それはそうですね)」
そ・そー さらに念を押し、相手に強制する「(当然〜です)よね」のこと。馬を追うときの掛け声「さ」の変化か?
(例)「はよ宿題せんかそー。(早く宿題しなさいよ)」
のし 「〜ですね」のこと。主に紀ノ川沿いで使われる丁寧表現(女性語)。詠嘆を表す終助詞「な」の変化か、軽い断定を表す「の」か。「し」は不明、「です」の短縮か。
(例)「今日(きょうわ)は、寒いのし(今日は寒うございますね)。」

(補足)

「のし」は、「よし」と並んで、和歌山辯では数少ない敬語表現であるとされる。「し」は「です」「ます」や、一部東北辯などに残る「シー」という敬意を表す非言語などと同じと考えられるが、未確認。
確認を表す終助詞「か」のザダラ変換。
(例)「もういの。(もう帰りましょう)」
強意を表す終助詞「ぜ」のザダラ変換。
(例)「もう捩(もじ)けて使えやん。(もう壊れてつかえないよ!)」
念押しを表す終助詞「ぞ」のザダラ変換。
(例)「もう行く。(もう行くぞ)」
をば 目的を表す格助詞「を」に強意の係助詞「は」が付いて更に濁音化したもの。古語。
(例)「だるぞばをば食べよし。(笊蕎麦を食べなさい)」

接続詞

ほいて 「そして」のこと。s音が落ちて変わったもの。
(例)「ほいて、もじけてもたんやてよー。(そして、壊れてしまったのですよ)」
ほな・ほなら 「それでは」「それなら」のこと。「それなら」→「ほれなら」→「ほなら」→「ほな」か。
(例)「ほな、さいなら。(それでは、さようなら)」
ほんな・ほんなら 「ほな」に同じ。
(例)「ほんな、いてくら。(それでは、いってきます)」

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最終更新日 : 平成21年5月8日(金)