和歌山辯(和歌山弁)講座〜単語編〜
ここでは主に、紀中、特に有田地方の方言を紹介します。
特に断りのない限り、語の変化は、現代表記を基準にしてあるので、時間軸上の変化の向きが逆になっている場合があります、ご了承下さい。
また、あがで調べただけやさけ、語源らが間違ちやう場合があるで。訂正や他の説がある場合は、掲示板に知らいて欲しよ。(また、独自研究のため、語源等が誤っている場合があります。訂正や他の説がある場合は、掲示板にお知らせ下さい。)
和歌山辯(和歌山弁)講座〜会話編〜へ名詞 |
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あいた | 「明日」のこと。「し」のsh音が落ちたもの。 |
あっぽけ | 「阿呆」の強調表現。(箕島付近) |
あま | 「ゴキブリ」のこと。 |
いもと | 「妹」のこと。長母音の短母音化が起こったもの。 |
えぇ | 「家」のこと。単独では「いえ」。(例)あがえぇ(わが家) |
おかしん | 「お菓子」のこと。「ん」は、調子を整える為か。 |
おとと | 「弟」のこと。長母音の短母音化が起こったもの。 |
かだら | 「からだ」のこと。ザダラ変換。 |
きょうわ | 「今日」のこと。「今日(きょう)」に主語を表す係助詞「は」がついて、一語化したもの。当然、「きょうわ」に、主語を表す係助詞「は」がつくと「今日は(きょうわは)」となる。 |
きんの | 「昨日」のこと。「ん」が増加して「う」が落ちたもの。 |
クリーム | 「アイスクリーム」のこと。「アイス」では氷菓子。 |
ごし | 「〜と共に」を表す接尾語「〜ごと」のこと。「と」が「し」になる理由は不明。 (例)「皮ごし食べる。(皮ごと食べる)」 |
こないだ・こなえだ | 「先日・この間」のこと。「の」と「あい」の融合(リエゾン)。 |
こんだ | 「今度」のこと。o音がa音に変わったもの。 |
さし | 「物差し(定規)」のこと。「物」の省略。 |
さと | 「砂糖」のこと。長母音の短母音化が起こったもの。 |
じてこ | 「自転車」の「じて」+親称「こ」。韻を踏んで「えてこ(猿)」になることもある。 |
じばん | 「襦袢」のことから「下着(上)」のこと。拗音yが落ちたもの。 |
じゃいけん | 「じゃんけん」のこと。n音がi音に変わったもの。 |
たいたん | 「煮物」のこと。「炊いた物」の短縮。 |
たおし | 「束子(たわし)」のこと。a音がo音に変わったもの。 |
たのもと | 「食器洗い」のこと、炊事を含む場合もある。棚下(たなもと)からか。 |
ちぎ | 大型の桿秤(さおばかり)のこと。転じて秤全般についても言う。「杠秤」又は「扛秤」と書く。 |
ちぼ | 釦などの小さな突起物のこと。 |
ちょっきし | 「丁度」「ぴったり」のこと。「ちょっきり」とも言う。r音の落ちたもの。 |
つわ | 「唾」のこと。b音がw音に変わったもの。 |
ながたん | 「菜切り包丁」のこと。「菜刀(ながたな)」の変化。 |
にんにこ | 「おにぎり」のこと。「握る」の擬態語に、親称の「こ」が付いたもの。 |
べっこう | 「余計なこと」「要らぬこと」のこと。「別項」か。(田辺付近) |
みずせった | 「水(海水浴)」用の「雪駄」のこと、ビーチサンダルに同じだが、他に適当な日本語がないところをみると、最適であるにちがいない。 |
みどんこ | 「溝」+親称「こ」の「みぞこ」のこと。ザダラ変換。 |
ゆんべ | 「昨晩」のこと。昨夜(ゆうべ)の訛り。 |
よんべ | 「ゆんべ」に同じ。「ゆんべ」「よんべ」は全国にあり。 |
代名詞 |
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こえ | 「これ」のこと。「れ」のr音が落ちたもの。 |
そえ | 「それ」のこと。「これ」に同じ。 |
あえ | 「あれ」のこと。「こえ」に同じ。 |
どえ | 「どれ」のこと。「こえ」に同じ。 |
だえ | 「誰」のこと。「こえ」に同じ。 |
(補足) |
「こ、そ、あ、ど、だ」が日本全国共通なのは、はっきり言って驚きである。 なお、南の日高地方では「こい」などとe音がi音となる。 |
ここたい・ここたし | 「ここら辺り」のこと。ra音が落ちたもの。s音が追加される場合もある。 |
そこたい・そこたし | 「そこら辺り」のこと。「ここたい」に同じ。 |
あっこたい・あっこたし | 「あそこら辺り」のこと。促音化されているが「ここたい」に同じ。 |
どこたい・どこたし | 「どこら辺り」のこと。「ここたい」に同じ。 |
あが | 「我(わが)」のこと。w音が落ちたもの。 |
うら | 「わたしら」+「(は、が)」のこと。「わいら」のw音が落ちて変わったか、「うちら」の省略か?相手に対しても言うことがある。 |
おいやん | 「おじさん」のこと。「じ」のj音が落ちたもの。愛称「〜やん」は関西辯共通。 |
てき | 「あなた」、「お前」のこと。相手を表す意味の「的」か。主語を表す係助詞「は」がつくと「てきゃ」となり、転じて「てきゃ」単独で相手を表すこともある。複数形は「てきゃら」。 |
わい | 「わたし」のこと。「わたし」→「わっし」→「わし」となり、s音が落ちたもの。 |
わえ | 「わい」のe音がi音に変わったもの。 |
動詞 |
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いがむ | 【五段】真っ直ぐではなく、「曲がる」こと。「歪(ゆが)む」の変わったものだが、変形する意味の「歪む」とは区別される。「いがんじゃう」と形容詞化されて使われる。 (例)「いがまんと、まっすぐせえ。(曲がらないで、真っ直ぐしなさい)」 |
いごく | 【五段】「動く」こと。U音がi音に変わったもの。 (例)「いごかんと、じっとぉしてぇ。(動かないでじっとしていなさい)」 |
いごかす | 【五段】「いごく」の他動詞。 (例)「わえの車、いごかいてきてよ。(私の車を動かしてきて下さい)」 |
いぬ | 【五段】「帰る」こと。古語「去(い)ぬ」。 (例)「あがえぇ、いんじゃうんけ。(我が家に、帰っているのですか)」 |
うつる | 【五段】「ペンなどのインクが紙にうつる」こと。「うつらん」と、否定の意味だけで使うようだが、よく分からない。 (例)「このペンうつらん。(このペンは書けない)」 |
うめる | 【下一段】「水を入れて(浴槽の)湯の温度を下げること」こと、どうやら共通語らしい。 (例)「風呂、埋めやな熱て入れやん。(風呂は、水を入れて湯温を下げないと熱くて入れない)」 |
えぞる | 【五段】字や絵の上を「なぞる」こと。「絵取る」の、ザダラ変換だが、「なぞる」と混ざった可能性もある。 (例)「えぞったら、よけぇいがんだ。(なぞったら余計に歪んだ)」 |
えどる | 【五段】字や絵の上を「なぞる」こと。絵を写し取る「絵取る」から。 (例)「字ぃむさいさけえどっとこ。(字が汚いのでなぞっておこう)」 |
おく | 【五段】仕事や作業を「中断する」「終える」こと。作業道具を「置く」から。 (例)「このへんでおいとこか。(このへんで終わっておこうか)」 |
かやす | 【五段】「(ひっくり返す、戻すなど)返す」こと。e音がya音に変わったもの (例)「かやさんよに持って行きな。(ひっくり返さないように持って行きなさい)」 |
こまる | 【五段】「歯の間に物が挟まる」こと。内に置かれるの意味の古語「込まる」の意味の狭くなったもの。 (例)「歯ぁへ物こまっちゃう。(歯に物が挟まっている)」 |
こらえる | 【下一段】「許す」こと。「我慢する」の意味の変わったもの。 (例)「もう、こらえてよぅ。(もう許して下さい)」 |
さげる | 【下一段】「(ぶら下げて)持つ」「持ち上げる」こと。下に置いてある物を「提げる」の意味から、持ち上げる意味が強まったもの。 (例)「ちょー、箪笥さげてくれよ。(ちょっと、箪笥を持ち上げてくれよ)」 |
しける | 【下一段】「つまらなくなる」「白ける」こと。「白ける」あるいは「湿気る」の転だと思われる。以前は「しけちゃう」最近は「しける」の形で使われているようだ。 (例)「おまんのギャグしけるわ。(あなたのギャグは白けるよ)」 |
しゃるく | 【五段】「歩く」こと。古語「(〜)しありく」の変化か。「でしゃるく(出歩く)」となることも多い。悪い意味で使うことの方が多いかもしれない。 (例)「夜中にでしゃるいてからに。(夜中に出歩いたりして)」 |
すえる | 【下一段】「腐る」こと。「す」は「酸」で、酸っぱくなること。 (例)「こえ、すえちゃあ。(これは腐っている)」 |
せちがう | 【五段】「折檻する」こと。古語「殺害(せちがい)」の動詞化したもの。 (例)「せちごちゃろか。(折檻してやろうか、いてもたろか)」 |
たかる | 【五段】「上に乗る」こと。「群がる」の意味が狭くなったもの。 (例)「ボール、屋根へたかっと。(ボールが屋根に乗ってしまった)」 |
たつ | 【五段】「嫌になる」「飽きる」こと。単独ではなく、「たってくる」と使う。もう十分ある意味の「足る」の変化か。 (例)「おんなじことばっかりで、たってきと。(同じことばかりで、嫌になってきた)」 |
たとむ | 【五段】「たたむ」こと。「と」のア段がオ段に変わったもの。 (例)「布団たとむ。(布団をたたむ)」 |
ちやう | 【五段】「違う」こと。「ちゃう」に変化する前段階か、あるいはその逆か。 (例)「こんなん、わえのんとちやわれ。(このような物は、私のとは違いますよ!)」 |
つく | 【五段】自転車、乳母車などを「押す」こと。「(杖等を)突く」と同義か。 (例)「自転車パンクしたさけ、ついてか。(自転車がパンクしたので、押していきます)」 |
つまえる | 【下一段】口を「閉じる」こと。徳島辯では「片付ける」ことだが、関連性は不明。 (例)「口つまえて食べやんとか。(口を閉じて食べないでおきます)」 |
つままえる | 【下一段】「つまえる」に同じ。 (例)「(怒って)口つままえてやんと…。(膨れっ面しないで…)」 |
つむ | 【五段】「混む」こと。「沢山ある」の意味の「詰む」。 (例)「道つんじゃーる。(道が混んでいる)」 |
つめる | 【下一段】「(指を)挟む」こと。(固い約束などで)指を切り落とす意味の「詰める」ほど挟んでしまうか、指でつまむ意味の「抓める」の変わったものか。 (例)「痛いよ〜、指つめた。(痛いよ〜、指を挟んでしまった)」 |
とごもる | 【五段】「とごる」に同じ。「とどこおる」→?→「とごもる」→「とごる」か。 (例)「でんでん溶けんととごもっちゃーる。(全然溶けないで溶け残っている)」 |
とごる | 【五段】「(水などに入れて)溶け残る」こと。「滞(とどこお)る」の短縮か。 (例)「さととごっちゃーる。(砂糖が溶け残っている)」 |
にえる | 【下一段】「内出血する」こと、果物などを落としてその部分が柔らかくなることにも使う。 (例)「足うって、にえてもと。(足を打ちつけて、内出血してしまった)」 |
ぬがる | 【五段】「刺さる」こと。雨で土がどろどろになる「泥濘(ぬか)る」から、泥濘みに「はまる」意味に変わったものか。さらにそこから、「刺さる」意味に変わったものと思われる。 (例)「田んぼへ足ぬがっと。(田んぼに足が刺さってしまった)」 |
ぬわる | 【五段】「ぬがる」に同じ。 (例)「刺(とげ)ぬわっちゃあ。(刺が刺さっている)」 |
ねずる | 【五段】「(食べ終わった後の皿などを)舐る」こと。行儀悪い場合にしか使わない。 (例)「ねずりなさんな。(なめてはいけません)」 |
ねぶる | 【五段】「瞼を閉じる」こと。眠ることと瞼を閉じることが同じ様子であることから。「眠る」の「む」と「ぶ」が変わったもの。 (例)「目ぇねぶっちゃあ。(目を閉じている)」 |
はつ | 【五段】「叩く」こと。1発の「発」か?強意の「はったかす」、繰り返す「はちまわす」もある。 (例)「頭はつろ。(頭をたたくよ)」 |
はつる | 【五段】「削る」「取る」こと。古語の「斫(はつ)る」。 (例)「わいの分はつってよ。(私の分を削って)」 |
ひきちらかす | 【五段】「散らかす」こと。「引き散らがす」と音便化することもある。 (例)「また、引き散らがいちゃあいしょ。(また、散らかしていますね)」 |
ひしる | 【五段】高い声で鹿が鳴くことを表す語から、(子供が)甲高く大声で叫ぶこと。擬音語からだと思われるが、語源は不明。(参考)散木集 (例)「がいな声でひしんな。(大きな声でさけぶな)」 |
ひく | 【五段】火事を「引き起こす」こと。風邪を「引く」と同義か?「火事ひく」と複合語で使われる。 (例)「おいやんとこ、火事ひいた。(おじさんのところが、火事を出した)」 |
ひねきる | 【五段】切れるほど強く「ひねる」こと。 (例)「口のはた、ひねきっちゃおか。(口のそばを、ひねってやろうか)」 |
ふてる | 【下一段】「捨てる」こと。「す」のs音が落ちて変わったもの。 (例)「こえ、ふてるで。(これ、捨てますよ)」 |
へくる | 【五段】「盗む」こと。元は、口をぱくぱくして食べ物を取る様子の動詞化「ぱくる」。「ぱ」のa音がe音に変わったもの。 (例)「じてこへくられた。(自転車を盗まれた)」 |
へつる | 【五段】「はつる」に同じ。a音がe音に変わったもの。 (例)「どころへつれやんか。(どこか削れませんか)」 |
ほたえる | 【下一段】「ふざける(て暴れる)」こと。近世語で当時の意味では第二義。第一義はあまえる、つけあがる。語源は分からない。 (例)「ほたえよすな。(暴れるな)」 |
まう | 【五段】目が「回る」こと。「目ぇまう」と複合語で使う。完了、存続を表す「ちゃう」がつくと、「目ぇもうちゃう」と音便化する。 (例)「がいに飲んださけ、目ぇもうちゃう(沢山酒を飲んだので、目が回っている)」 |
まくれる | 【下一段】「転落する」こと。「まくれ落ちる」と複合語で使うこともある。 (例)「四駆ちごたら、まくれてまうで(四輪駆動でなかったら、転落してしまうよ)」 |
もじける | 【下一段】「壊れる」こと。元は、形を変える意味の他動詞「捩(もじ)る」で、自動詞化で「け」がついたもの。 (例)「もじけてもた。(こわれてしまった)」 |
もつぼれる | 【下一段】「縺れる」こと。 (例)「がいにもつぼれちゃあ。(非常に縺れている)」 |
やつす | 【五段】「めかす」「着飾る」こと。「窶(やつ)れる」の他動詞。「窶す」本来は「みすぼらしくする」「目立たないようにする」という逆の意味。 (例)「今日(きょうわ)やついて、どこ行くんよ。(今日めかして、どこに行くんですか)」 |
やぶつ | 【五段】紙などを「破る」こと。敵を倒す場合には使わない。ザダラ変換の一種か。 (例)「この紙、見やれやんよにやぶつで。(この紙、見られないように破るよ)」 |
補助動詞 |
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よし | 「なさい」のこと。本来は動詞の命令形の一部「よ」に「し」が付いたもの。 (例)「あがでしよし。(自分でやりなさい)」 |
(補足) |
「し」は、「さい」の短縮「せ」の母音変化か、接続助詞「し(朝も早いし、等の「し」)」か。南の日高地方では「しなさい」を「さんせ」と言うことから、「せ」と同じものの可能性が高いと思われる。 |
形容詞・形容動詞 |
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あかい | 「明るい」こと。「る」が落ちたか、朝の空が赤いことからか。 (例)「もうあかなってきと。(もう明るくなってきた)」 |
あらくたい | 「(勢いや状態が)激しい」「度を越している」「荒々しい」こと。「荒し(ク活用)」の連用形に強意の「たい」がついたもの。 (例)「がいにあらくたい。(とても荒々しい)」 |
うすべったい | 「(厚さが)薄い」こと。「薄い」に強意の「べったい」が付いたもの、共通語らしい。「薄べんべろい」と言うこともある。 (例)「わいの給料袋薄べったいわ。(私の給料袋はとても薄いよ)」 |
おきい | 「大きい」こと。長母音の短母音化が起こったもの。 (例)「てきゃの犬、がいにおきい。(あなたの犬は、とても大きい)」 |
おっとい | 「恐ろしい」こと。s音の落ちたもの。「おとろし」「おっちい」もある。 (例)「あのおいやん、おっといで。(あのおじさんは、恐ろしいよ)」 |
おもしゃい | 「面白い」こと。r音が落ちて変わったもの。 (例)「おもしゃい本見ちゃーるの。(面白い本を見ているんですね)」 |
かいだるい | 「かったるい」のこと。「かいだるい(腕弛い)」は「かいなだるい」の変わったもの。こちらが本家。 (例)「かいだるいわ(かったるいわ)」 |
きぶい | 「きわどい」こと。古語の「きぶし」。「厳しい」の転。 (例)「そえ、きぶいわ。(それはきわどいわ)」 |
すいだ | 「粋(いき)だ」のこと。単なる漢字の読み替えだろう。 (例)「あでぇ、すいな格好ひて、どこ行くんよ。(あれ、粋な格好でどこに行くのですか。)」 |
すこい | 「ずるい」こと。 (例)「おまん、すこいで。(あなたは、ずるいよ)」 |
ずつない | 「(食べ過ぎて)お腹が苦しい」こと。古語「術(ずつ)無い」、つまり、なすすべが無いこと。 (例)「ずつないてよ(食べ過ぎてお腹が苦しいよ)」 |
ちさい | 「小さい」のこと。長母音の短母音化が起こったもの。 |
とわい | 「遠い」こと。「とほい」のh音にw音が付いて変わったもの。 (例)「とわいとこ、行かんときな。(遠いところへ行かないでおきなさい)」 |
ぬくい | 「温い」こと。意味はそのまま、気温にも使う。 (例)「温なったの。(暖かくなりましたね)」 |
ひやこい | 「冷たい」こと。「冷や」に強意の「こい」がついたもの。 (例)「クリーム、がいに冷やこい。(アイスクリームが、とても冷たい)」 |
ふわわり | 「格好・世間体が悪い」こと。「風(風体)悪い」の変形。 (例)「わいらけ雪駄れふわわりわ。(私だけ雪駄で格好が悪いよ)」 |
むさい | 「汚い」こと。「無細工」あるいは「むさ苦しい」の略か。 (例)「わえの部屋むさいわ。(私の部屋は汚いよ)」 |
ようさん(だ) | たくさんあること、大げさなさま。「仰山(だ)」のg音が落ちたもの。 (例)「ようさん入っちゃぁらいしょ。(たくさん入っていますね)」 |
連体詞 |
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ほんな | 「そのような」のこと。s音がh音に変わったもの。 (例)「ほんなこと、できやんでー。(そのようなことはできないよ)」 |
副詞 |
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あらくたい | 程度が甚だしいことを表す。強意の形容詞から副詞に転じたもの。 (例)「あらくたいおもしゃい。(面白すぎる)」 |
がい | 量、程度が大きいことを表す。「我意」か。共通語らしい。 (例)「がいなこと買(こ)うてきたの(沢山買ってきたね)。」 |
ちょう | 少しの量、程度を表す「ちょっと」のこと。「っと」が省略されたもの。 (例)「ちょう待てよ。(ちょっと待ってよ)」 |
なっとう | 疑問副詞「どのように」のこと。 (例)「なっとうしょう。(どのようにしよう、どうしよう)」 |
のとろ | 量、程度の大きいことを表す「やたら」のこと。「や」が省略されて「ん」が発生し、変わったものか。(金屋地方) (例)「のとろつんじゃーる。(やたらに混んでいる)」 |
まぁ | 少しの量、程度を表す「もう」のこと。o音がa音に変わったもの。 (例)「まぁちょう前。(もうちょっと前)」 |
まっと | それ以上の量、程度を表す「もっと」のこと。o音がa音に変わったもの。 (例)「まっとおくれ。(もっと下さい)」 |
やにこう | 量、程度の大きいことを表す「(脂が濃いほど)しつこく」のこと。京言葉「脂(やに)濃い」より。(田辺地方) (例)「やにこうつんだーる。(やたらに混んでいる)」 |
よう〜ん | 古語「え〜ず(〜することができない)」の変わったもの。 (例)「そんなん、よう食べやん。(そんな物は食べられない)」 |
わりかし | 程度を表す「割と」のこと。 (例)「わりかしマシやん。(割とマシですね)」 |
助動詞 |
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える・らえる | 受身・可能を表す「れる・られる」のr音の落ちたもの。下一段動詞は、下記の「やれる」よりも「らえる」が付くことが多い。 (例)「がいなこと作文書かさえと。(かなりの量の作文を書かされた)」 |
かす | 他に対しての作用を表す「〜してやる」のこと。未然形語尾「か」に、使役の助動詞「す」の付いたもの。 (例)「おせかいちゃおか。(教えてあげようか)」 |
ちゃう | 完了、存続を表す「ている」の短縮。「ちゃあ」「ちゃる」「ちゃーる」と変わることもある。 (例)「もう、打っちゃあ。(もう、打っています)」 |
と | 過去を表す。a音がe音に変わったもの。終止形のみ「と」に変わる。終助詞「そー」を伴うことがある。 (例)「おれ、電車来とそー。(ほら、電車が来たよ)」 |
やれる | 上下一段・カ行変格活用動詞に付き、受身・可能を、サ行変格活用動詞に付き、受身を表す。自発・尊敬を表すことはほとんどない。 (例)「この服、着やれるんけ。(この服は着られるのですか)」 |
(補足) |
サ変動詞では未然形「し」に続く。(例)「落書きしやれる。」 カ変動詞も未然形「こ」に続くが、「き」になる場合もある。(例)「あいた来やれる。(明日来られる)」 |
やん | 動詞・助動詞に付き、否定を表す。 (例)「離せやん。(離せない)」 |
(補足) |
活用は、(未)○(用)やんかっ・やなん(終)やん(体)やん(仮)○(命)○ |
助詞 |
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いて | 「して」に同じ。s音の落ちたもの。 (例)「あかないてよぉ。(駄目でしょうが)」 |
け | 疑問を表す終助詞「か」の変わったもの。泉南地方でも使う。南の日高地方では「かい」となる。 (例)「こんなん要るんけ。(このような物は要るのですか)」 |
さ | 元は形容詞を名詞化する接尾語か。形容詞語幹について感嘆を表す。終助詞「よ」を伴う場合もある。 (例)「この饅頭の甘さよ。(この饅頭の甘いこと)」 |
さけ | 「〜だから」の意味の大阪辯「〜さかい」の短縮。 (例)「留守やさけ、居てやんなん。(留守なので、居なければならない)」 |
しか | 限定を表す副助詞「しか」が、比較をも表すようになったもの。おそらく「〜しか〜ない」を省略したものと思われる。 (例)「こっちしかええ。(これの方がいい。元は「これしかいいものがない」)」 |
して | 感動を表す終助詞。s音が落ちて「いて」にもなる。後に終助詞「よ(よぉ)」を伴うこともある。 (例)「こえからするとこやして。(これからするところですよ)」 |
じょ | 念を押す「〜(です)ね」のこと。古語「ぞよ」の変化。 (例)「そらそうじょ。(それはそうですね)」 |
そ・そー | さらに念を押し、相手に強制する「(当然〜です)よね」のこと。馬を追うときの掛け声「さ」の変化か? (例)「はよ宿題せんかそー。(早く宿題しなさいよ)」 |
のし | 「〜ですね」のこと。主に紀ノ川沿いで使われる丁寧表現(女性語)。詠嘆を表す終助詞「な」の変化か、軽い断定を表す「の」か。「し」は不明、「です」の短縮か。 (例)「今日(きょうわ)は、寒いのし(今日は寒うございますね)。」 |
(補足) |
「のし」は、「よし」と並んで、和歌山辯では数少ない敬語表現であるとされる。「し」は「です」「ます」や、一部東北辯などに残る「シー」という敬意を表す非言語などと同じと考えられるが、未確認。 |
ら | 確認を表す終助詞「か」のザダラ変換。 (例)「もういのら。(もう帰りましょう)」 |
れ | 強意を表す終助詞「ぜ」のザダラ変換。 (例)「もう捩(もじ)けて使えやんれ。(もう壊れてつかえないよ!)」 |
ろ | 念押しを表す終助詞「ぞ」のザダラ変換。 (例)「もう行くろ。(もう行くぞ)」 |
をば | 目的を表す格助詞「を」に強意の係助詞「は」が付いて更に濁音化したもの。古語。 (例)「だるぞばをば食べよし。(笊蕎麦を食べなさい)」 |
接続詞 |
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ほいて | 「そして」のこと。s音が落ちて変わったもの。 (例)「ほいて、もじけてもたんやてよー。(そして、壊れてしまったのですよ)」 |
ほな・ほなら | 「それでは」「それなら」のこと。「それなら」→「ほれなら」→「ほなら」→「ほな」か。 (例)「ほな、さいなら。(それでは、さようなら)」 |
ほんな・ほんなら | 「ほな」に同じ。 (例)「ほんな、いてくら。(それでは、いってきます)」 |
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最終更新日 : 平成21年5月8日(金)