不思議体験4 アルフィーのレコード

アルフィーのレコード

この頃はCDはまだ百恵ちゃんと聖子ちゃん位しかなかったんです
(単に高かったのかな・・・あまり見かけなかった)

私はアルフィーという3人組歌手のファンでした。
好きになったのは俗に言う「あかパラ」(正式には「暁のパラダイスロード」)という曲をラジオで聴いたのがはじめだと思います。

それまで流行歌のレコードなんて持っていなかった私ですが、中3の誕生日のプレゼントに、学校の友達が二人で350円ずつ出し合って、アルフィーの「星空のディスタンス」というシングルレコードをプレゼントしてくれたのです。(そういえばこの頃って消費税なかったんですねぇ・・・)

その子たちは私の隣のクラスで、ある日一人にその教室のベランダに「来て」と呼び出され、はじめは体の後ろに隠しておいたそれを、二人で交互に「た」「ん」「じょ」「う」「び」「お」「め」「で」「と」「う!」と言って、紙袋に入ったまま私の目の前に突き出したのでした。
(ちなみに生まれて初めて自分で買った曲は風見慎吾の「僕、笑っちゃいます」でした。誰ですか、そこで「僕も笑っちゃいます」とか同じ事言ってる人は)

ま、それはいいとして。
それ以後「シンデレラは眠れない」や「My Truth」など、発売されるレコードは片っ端から購入していったのですが、それらは他のアーティストのLPなどと同じ場所に、初めてプレゼントされた時の水色の紙袋に、アルフィーだけ全部一つにまとめておきました。
勉強机からイスに座ったまま右を向けばすぐ手の届く、3段カラーボックスを横に倒した棚の一番右のマスの一番右側に、ずっと同じように置いておいたのです。

そんなある日、上の弟が「アルフィー貸して」と私の部屋に来ました。不思議なことは、その時起きたのです。

「いいよ、そこにあるから」
と答えたものの、弟は見ればすぐ判るはずなのに「どこ?」と探しています。

しようがないな、と出してあげようとして、私もはたと気付きました。いつも手の届く同じ場所に置いてある筈のそれが無いのです。
水色の印刷がされた紙袋ごと、アルフィーのレコードだけがありません。

最初は良く見直せばすぐ出てくると思って、そのあたりを探りました。それでも見つからないので、その棚の、右端のマスに立っているものを全て探し、次に絶対ないとは思いつつ他の二つのマスの中も探しても無く、ついには弟と二人掛かりで棚から全ての中身を床に山と出して一つ一つ調べる羽目となりました。

でも、無くなっていたのです。

結局弟は諦めて戻っていきましたが、私はその後、またも一人きりで大捜索をしました。夕食を食べてからもずっと探しました。もちろん見つかりませんでした。次の日もしました。3日目もしました。

3日目にもついに無かったのでがっかりした時、ふとある事を思い出しました。「彼」はウサギの柄がかわいいと言ってお弁当をくるむナフキンを持っていってしまった前科があります。
さっそく話の中でレコードが無くなってしまった事を言うと、なんと「聴かせてもらっている」と言うではありませんか。

聴く?プレーヤーなんてあるのかな。

「1週間後に返す」と約束してくれたのですが、存在すら怪しい方ですから、話こそしたものの「もう無いものはしようがない・・・」と探すのを辞め、半ば忘れていました。

そしてある日、前日に続いてまたTMネットワークのLPをかけようと机を(勉強していたわけではなく、落書きをしていた)手で押し、座ったまま押した反動でイスを下げ、くるりと振り返って腕を伸ばしたその先に、白地に水色の紙袋が、全く何事も無かったように、戻っていたのです。

なんと!あれだけ探してもなくて、昨日TMを聴いた時にも無かった「あの紙袋」じゃあーりませんか。

私はものすごくドキドキしながら中を開けてみました。

入っていたのは確かに、アルフィーのレコードでした。いつも私が並べているように、古い順にきちんと7枚。
そして、もっとドキドキしながら今日の日付を数えました。

・・・その日は、「彼」と約束した日からちょうど1週間目でした。

おわり

エピローグ

レコードを、本当に「彼」が異次元へ持っていったのかどうかは判りません。
弟か両親か泥棒さんが、こっそり持ち出して、また戻しに来たのかも。

しかしそうだとすれば、間違いなくレコードは「彼」の予言した通りの日に返ってきたのです・・・

不思議な話のメニューに戻る

メインメニューに戻る

 

[ 戻る ] [ 上へ ] [ 進む ]