不思議体験1 1000年女王

1000年女王

話の内容から日時をほぼ特定していただけます

今から16年くらい前、私は千葉県の柏市に住んでいました。西口の、スーパーアキヤの前を通って、交番の前から入っていくすずらん通り(すずらん荘というアパートもあった)があります。
近くに五角スーパーというお店があり、そのすぐ裏にベンリーというコンビニのはしりのような店が建ちました。今回の話はそこであったことです。

毎週木曜日は7時から、アニメ番組の銀河鉄道999を見るのが大好きで、そろばん塾から早く帰っていつも見ていました。でも、最終回に限って、そのことを忘れてそろばん塾の友達と長話をしてしまったのです。
家につくと、ちょうどエンディングの曲が「メーテル〜またひとつ〜」と聞こえてきたのを今でも憶えています。

そんな悔しい思いをしたために、次回から始まるというアニメの’1000年女王’は絶対にストーリーが抜けたり、最後を見逃したりしないようにと小さな心に誓ったのでした。

翌週、爆発に始まる第1回を見て第2回の予告を見た後か、もしくは第2回を見た後か、どちらかの週のこと。私は例のベンリースーパーへ行きました。ガラスのドアを入ってすぐ左がレジ、すぐ右の、壁際に漫画単行本の低い棚がありました。そこに見つけたのです、1000年女王のコミックス。1巻から、5巻まで発売されたところのようでした。

私は嬉しくなって、その本を全部買いたい、と思ったのですがお小遣いはそんなにもらっていません。その時買えるのは1冊だけでした。私は悩みました。今の段階で一番新しい5巻を買うか、最初の1巻から買うか、でも、テレビでもう見たところ(第2回まで)と重なっているのももったいないし・・・
そこで、とりあえずテレビで放映したところと重なっているのはどこなのか、立ち読みしてみることにしました。
まだ1巻の、前の方でした。
1巻は見たところも多いし、全く見ていない2巻を買えば、テレビのちょっと先を知ることが出来るな、と考え、2巻から順に買って最新刊まで買ったら、次に1巻を買おう、と決めました。

もちろん、3巻から5巻にも興味があったので少しだけ、どうなるのか見てみました。でも、買う前にストーリーが解りすぎても面白くなくなってしまうし、ババッと軽く流して絵を追うだけにし、おしまいにしておきました。

3巻からパパッとページを流し見ると、ストーリーは判りませんでしたが、なにやら友達ぶるロボット、小さいけどおっかなそうな少女などが目に入ってきたと思います。
「ああ・・ストーリーが判らないようにしておかなきゃ。後でつまらなくなっちゃう」
そう思って、5巻についてはパラパラ漫画を動かすより早いほどに頁をはじいて、ほとんど見ませんでした。
この後も6巻・7巻・・と続いて発売されるんだろうな、何巻までいくのかなぁ、と思っていました。

その日2巻を買って帰った私は、翌日もしくは2.3日後には3巻を買おうとペンリーへ行きました。ところがそこで大ショックを受けます。
昨日はあったはずの本が、1巻をのぞいて跡形もなくなっていたのです。

ほんの少しの間に、たぶんお金を自由に使える大人が(勝手に大学生くらいの男だと想像していた)買って行ってしまったのだ・・・。私は小遣いの限りある自分の身をとても悔しく感じました。全部買いたかったのに金額が足りないために・・・。

愕然としつつもしかし気を取り直してレジのお姉さんの所へ行き、あったはずの本はもうお店には無いのかと訊ねました。ひょっとしてまだどこかにとってあるのかも・・・と思ったのです。が、そのお姉さんは少し調べてから、「無いけれど、取り寄せることはできます、取り寄せますか?」と聞きました。
そこで私は生まれて初めて自分の意志で取り寄せなるものをしました。お店にある申込用紙に名前や住所や電話番号を書いて帰ってきたのです。
もちろん、一気には買えないのでまずは3巻だけ。

最後に、入ったら電話で連絡します、と言われました。

連絡が来るまでの間に、私はアパートの前の芝生にある木の茂みに、ある捨てられた新聞を見つけました。何故目に付いたかというと、1000年女王の漫画の乗った面が表になっていたからです。それは、産経新聞の日曜版で、そこに連載されていたからです。
「へぇー、新聞で連載されているんだ・・・知らなかった。ライバチくんみたいなものなのかな。大人が読むんだろうな・・・」などと思いました。
たしか印刷時に色指定でむりやり色を入れたようなカラーだったと思います。7月2日か5日版と書いてあった気がするのですが、何かの記憶とごっちゃになっているかもしれません。1週間かその前の週に発行された物だな、と思ったのは憶えています。

その後2週間位して、取り寄せた店から来た連絡の電話は母がとったらしく、怒った口調で勝手にものを頼むなと言われました。まだ4時半頃だったので明るく、「でも欲しいんだもん」と思いながら早速ベンリースーパーに行きました。着いてから、頼んだときのお姉さんだったので名乗ると、意外な返事が返ってきたのです。

「実は、出版社に注文したら、まだ3巻は発行されていないそうなんです・・・」

えっ?と耳を疑う私に、お姉さんは続けて、発行されて店に入ったら電話で連絡するように、予約しますか?とたずね、私は「そんなはずは・・・」と思いつつもただ「お願いします」としか言えませんでした。

3巻を手に入れたのはその後ずいぶん経ってからです。6ヶ月くらい待ったかもしれません。手に入れたコミックは初版本で、一番後ろに書かれた発行日が、確かに私が店の棚に5巻まで並んでいたのを見つけたあの日にはまだ出版されていなかった本である事を証明していました。 当然、4巻も5巻もまだ存在していません・・・。

しかし、この漫画本に関する「不思議なこと」は、これだけでは済まなかったのです・・・

その後も、おかしいな、という気持ちは解消しないまま、発行ペースがとてつもなく遅いこの漫画本を、発行を待っては1巻ずつ買い足していきました。
(3巻もそうでしたが、4巻以降も、確かにあの日パラパラとめくったとき目に入ってきたキャラクタやシーンとおぼしきものが描かれていました。)

どうして発行もされていない漫画本をこの手に取ることが出来たのか、あの棚にあの本を並べた店員さんはどこから手に入れたのか、謎は解けないままに月日は流れ 。

そして。

1000年女王の漫画は、終了を迎えました。

全5巻でした

つまり、道ばたに捨ててあったサンケイ新聞に連載が続いていたあの頃に、最終巻が発行済みであるはずも当然ないのです。

本が時空を越えてやってきたのか、私が時間を超えて未来に行っていたのか、とにかく一番強烈に不思議を感じた事件でした。(生まれてはじめて「超」不思議!と思った体験だったと言って良いと思います)

ちなみに、私が生まれて初めて友達と見に行った映画も1000年女王なのですが、この時のポスターは3巻の表紙の絵と同じ物です。とても不思議な気持ちがしており、一緒に行った友達にだけ「実はね・・」と、この話をしたことがあります。

今でも何となくこの本を古本屋に出すことが出来ません。

やっと 

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