大家さんから近くの畑の一部を貸してもらいました。ここまで来たのだから、畑で野菜ぐらい作らない手はありません。町の中では土地を借りるなんて贅沢なことは難しいですから。
役場に就職すれば農村には入れると考え始めた時から、私は自分で農業をやるというよりは、役場の職員として、何かできないかと思うようになりました(今はまた違いますが)。畑を始めた時も、菜っ葉ぐらいできればそれでいいという感じでした。大学の時には友達が園芸部に入っていると聞いて「なんで園芸なの?面白いの?」と言っていたぐらいでした。そうです、私はまだ、農業・園芸・土いじりのこの不思議な魅力を知らなかったのです。
1年目は猫の額程度の畑でした。大家さんに鍬の使い方と畝の立て方を教えてもらうところから始まりました。畑を耕すのはそれが始めてでした。それでも何とか、種を蒔くと菜っ葉程度は簡単にできてしまいました。できたと言っても、虫食いだらけの葉っぱです。夏から秋にかけて、特にアオムシ(みたいな虫)にやられて、チンゲンサイを虫と半分ずつ分けて食べているような状態でした。ところが、ある日、畑に行ってみると、それまで1株に2匹も3匹もいた虫が1匹もいなくなっていました。大家さんが殺虫剤でも撒いてくれちゃったのかと思って、虫がいなくなった原因を聞いてみると、どうも気候が変わったからではないかということでした。あれほどいた虫が数日のうちにまったく姿を消してしまうとは。それにしても、あの虫たちは一体どこに行ってしまったのでしょうか?
借りた畑の他に、家の前の庭にも、頻繁に収穫する果菜(トマト・ピーマン・ナス)を植えました。庭は草に覆われていて、石もかなり混じっていました。草を抜いて、スコップで土を掘り返して、石を取り除きました。そうやって土をいじっていると、ミミズが結構出てきました。ミミズは土を耕してくれると聞いていたので、ちょっと喜んで見ていました。ところが、土を起こせば起こすほど、ミミズは周辺の雑草の中に逃げしまいました。ミミズにとってみれば当然でしょう。棲み家を破壊された上に、直射日光が当たるようになったところにいたくはないはずです。そうはいうものの、そうしなければトマトを育てるのは難しいですし...。
2年目は1畝(ひとせ=約1a)、3年目は2畝と増えていきました。3年目の途中からは、一ヶ所である程度の面積を確保するために、家からはちょっと離れた今の畑を借りるようになりました。一ヶ所と言うのは、重い肥料を積んで、自転車であちこち移動しなくてもよくするためです。3年目に畑用の自転車を買いました(中古を5,000円で)。それまでロードマンで運んでいたのですが、それに比べると2〜3倍は運べるようになりました。と言っても20kgの肥料袋が限界ですから、やはり一ヶ所に行くだけで済むようにする必要がありました。
「畑は草との戦いだよ」と言うのを何度か聞きました。2年間やって見て、感想としては、全くそのとおりとしか言いようのない有り様でした。はじめは、全部取らなくても大丈夫じゃないかとか、もっと大きくなってからでもいいかな、と思って、そのままにしておいたこともありましたが、すぐに、一面雑草だらけになってしまいました。確かに、畑のような草の密度の低いところに、大地の傷口を塞ぐかのように、草が生えてくるのは当然のことです。それを無理矢理人間に都合のよい野菜という名の草だけを生やすという状態を維持するには「戦い」になってしまうでしょう。何か良い方法はないかと思って(楽をしたいと思って)、野菜作りの本を見ていると、クローバーを一面に撒いて、そこで菜っ葉を作ることもできる、というのを読んで(楽ができるかも!)、3年目にやってみようと思いました。
(つづく)
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