扁平上皮癌とその細胞像


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*** 角化型扁平上皮癌 ***


やっと、細胞像のところにはいります。
組織型は、分化度やその他特徴的な定義に基づいてさらにいくつかの亜分類に分けられています。
子宮の扁平上皮癌では稀少症例といえるようなものもいくつかありますが、主に2種類に分けられています。

まず、左の絵は、角化した大型の癌細胞が沢山出現する、角化型扁平上皮癌組織図はこちら)です。
角化する、ということは、本来扁平上皮細胞が正常な分化をとげて初めておこるはずのものです。
しかも子宮の扁平上皮細胞は、本来、皮膚のように垢として落ちてしまう核の無い状態にまで角化することにはないはずなのに、この癌では、無核であったり、細胞が分厚くなったり、著しい角化細胞が沢山出現します。
また、正常なら上皮の表層部分に向かって一定方向に分化し角化していくはずなのが、方向性を失って集団の中心部分に向かって角化し、癌真珠といわれる固まりをつくります。
絵では、2個の渦巻きを描いたつもりで、その中心に向かって細胞が分化しているところを現わしたつもりですが、、、わかりますか?
ぐるぐると渦巻きにそって、細胞質は長くのび、よじれたり、おかしな格好になったりします。
また、核所見は大きくごつごつとして形も不整な、見るからに悪性らしいものが見られるようになりますが、その他にも、完全に脱核してしまって細胞質だけになってしまったもの、クロマチンが多くなったのを反映してべったりと濃染した核をもつもの、などもあり、バラエティに富みます。

細胞診で角化型扁平上皮癌をみると、これぞパパニコロウ染色の真骨頂!と思えるほど、色鮮やかな細胞が出現します。
染色については書く書くといいつつ書かずにいるのですが、オレンジや、赤、濃いグリーンなどなど、細胞質のバラエティさがそのまま反映された細胞像が見られます。
正常の扁平上皮では分化が進んであとはもうはがれおちるだけ、、、というところまで角化した皮膚の細胞であっても、細胞の厚みはあまり無いため細胞質の色は薄いオレンジ色にしか染まりません。
それが、癌細胞では細胞質内の成分が密になり、細胞質を構成する蛋白の量も増えるため、細胞に厚みができ、輝くような強いオレンジ色にそまったりします。絵では、うまく現わせないのが残念ですが、、、。

癌真珠組織図はこちら)がそのままごっそりと採取されることもあり、その場合は、ぐるぐるとかたつむりのように丸くなった細胞集塊がみられます。真珠状にうずを巻いた小集塊は、かならずしも癌に特有の所見ではなくて、良性のいぼのような、角化が通常より進んでしまっている病変には見られるものなのですが、癌の場合は渦巻きの中にやはり悪性を疑えるような核所見の良くない細胞が中に含まれていて、良性のものとは区別できます。



*** 非角化型扁平上皮癌 ***

角化型に対して、角化していない細胞から出来ている扁平上皮癌を非角化型扁平上皮癌山口大学 上田先生、御提供ありがとうございました。m(_ _)m 画像サイズが大きいです!02.12.28.)(組織図はこちら)といいます。
非角化型は、扁平上皮癌の中でもっとも頻度の高い、つまりよくあるタイプの癌です。
従来は非角化型扁平上皮癌はさらに大細胞型と小細胞型とに区別されていたのですが、両者の境目がはっきりしないことが多い、などの理由から、現在の子宮頚癌取扱い規約(注:日本産婦人科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会が協力して発刊。子宮では他に子宮体癌、卵巣癌の取扱い規約があり、各臓器についても同様に発刊されている。一冊4千円弱)では一つにまとめられているようです。
ただ、小細胞型はリンパ管や血管などに入り込みやすく、大細胞型に比べて弱冠予後が悪いとしている文献も多いので、細胞診での推定を行う場合、両者を区別出来るときはできるだけ区別して報告しているようです。ここでは従来通りに別々の絵にしてみました。


大細胞非角化型は、その名の通りに角化していない大きめの細胞から出来ている癌です。
標本によっては、核の大小が著しい場合もありますが「大きい細胞があって、(ほとんどの細胞が)角化していない」ことが決めてになります。
悪性細胞の条件を充分に満たすだけのN/C比(核/細胞質比。高いほど悪性)の高さがあり、核の形は不整、クロマチンは扁平上皮特有のごつごつして不均一な分布をした顆粒状に見えます。
核小体と呼ばれる、核内の化学的成分の密度が高くなったときに見られるものが小さく赤く染まって見えることもあります。
ここで、細胞が大きいというのはどれくらいの大きさを言うのか、クロマチンがごつごつしているというのは実際どんなふうに見られるのか、疑問に思われた方もいると思います。
この後すぐ、書きますが(クロマチンについては染色のところで詳しく書く、、、予定。^ ^;;)ここでは非角化型の説明をしてしまいますので、少々お待ちを。


細胞に変性が加わってしまい細胞質があまりはっきりしない場合も多いのですが、それ以外では、細胞質は多角形で比較的明瞭です。
また、癌細胞がくっついた集団の状態で出現する場合も多いのですが、あまり強い積み重なりにはなりません。
これは、正常の扁平上皮がお互いに積み重なった状態で出現することがなく、一枚一枚薄皮を剥ぐように平面状に出現するのと同じ形態を残しているのだと思います。(平面状、またはシート状に出現する、と表現します)
腺腔の立体的な構造を反映して、腺癌細胞がモコモコと細胞が不規則に積みかさなった形態をつくるのとは対象的です。



大細胞型に対し、N/C比が高く、クロマチンに富んだ、全体に小さめであまり大小のない細胞からなるタイプのものを小細胞非角化型といいます。
非角化、ですからもちろん細胞質に角化を伴わず、N/C比の高いこともあってほとんど裸核に見えるものもあります。
核はクロマチンの増量を反映して濃染していますが、角化型のように、濃縮してべったりと染まるようなことはなく、大きめの顆粒状にぎっしり詰まっているのが普通です。
また、このタイプのものには他のものよりも核の分裂像=増殖が早いも、多くみられるようです。
小細胞非角化型の癌は、内方性に発育する(、、、思い出してくださいね。カリフラワー状に固まりをつくるのではなく、組織にくいこんでいくタイプをいいます)ものが多いため、発見の遅れてしまうことも多く、その場合は癌腫が大きくなりすぎた結果として壊死物が沢山見られることが多いようです。

扁平上皮癌にはこのほかにも特殊型として、いぼ状癌、コンジローマ様癌(これについては次回の更新で少し触れます)乳頭状扁平上皮癌、リンパ上皮様癌、がありますが、どれも少数であり、ここでは触れません。



*** 細胞の大きさ、クロマチンの見え方 ***

さて、ここで、私たちが顕微鏡で見ているとき、細胞の大きさの大体の目安をどうやって知るのか、書いておきましょう。
私の絵のなかに、核の形の不規則な(というより3核になってる)小型の細胞が散らばるように描いてあるとおもいます。
これは、好中球といって血液成分のうちの白血球の一つです。
白血球は免疫系に重要な役割を果たしていて、全身をくまなく廻ってなにかあればすぐそこへ駆けつけてくるのですが、その中でも好中球は最も数が多く、なにも病変がなければほとんど見られることがなくっても、なにかあるとほぼ全身いたるところに出現します。特に炎症のあるところでは数が増え、重要な所見の一つとなります。
この好中球の大きさは、パパニコロウ染色の場合12〜13μm程度でほぼ一定です。
ですから私たちは普段は好中球の何倍くらい、、、で、大体の大きさの見当をつけています。<<きちんと計る方法もむろん、あります。
私の絵では縮尺があっていないので、わかりづらいですが、正常の表層部の扁平上皮細胞で50〜60μm、基底部の細胞で15〜16μm、上皮内癌は20〜40μm、角化型と非角化型の大型細胞では50μm以上のものが多数見られ、小細胞型では20μm前後かそれ以下のものもある、、、といったところでしょうか。
好中球は、核の染色の状態を確かめるときの指標としても用いられますが、このあたりのことも、染色について書くとき、一緒に書こうとおもっています。<<ほんとかな。

次にクロマチン所見について簡単に書いておきます。
扁平上皮癌の大きな特徴として、腺癌など他の癌にくらべてクロマチンの量が多く、核所見が強く見える、というのがあります。
どうしてクロマチンが濃く染まるのか、、、そのあたりのことは、染色の項目で詳しく書きたいと思っているのですが<<すみません、ずっと言ってますね、、、 ここでは見え方の差にだけ触れておきます。

核の所見は、核内に増えた蛋白質の種類によって、ごつごつとした印象の核になったり、細かい砂のようなクロマチンでパンパンに膨れたような核になったりと、いろいろなパターンがあり、良悪性の区別をするのに必要なだけでなく大まかな組織型を推定するのに大変重要です。

右の絵は、角化型、非角化型と、比較のために腺癌のクロマチンの様子を描いたものです。
扁平上皮癌では、核形の不整核縁肥厚(核膜が分厚くなります。レモンの輪切りから夏みかんの輪切りに変化した所を想像してください)クロマチンの粗大化がみられます。
角化型では濃縮核といって、べったりとペンキを塗ったように見える核が出現しますが、非角化型では出現しません。
逆に非角化型では核小体がよく見られますが、角化型ではまず見られることはありません。
いずれの場合も核はクロマチンを多量に含んで立体的にみえます。

腺癌の場合のクロマチンは扁平上皮にくらべると、ずいぶん細かい顆粒状で、核縁の肥厚も軽度です。
ただし肥厚がないわけではなく、厚いところ薄いところが、不規則につらなっています。
また、核形はごつごつというよりは、ほぼ円形に近いままで変形しており、特徴的な所見として核縁が内側に切れ込んでいる場合が多くみられます。
ハートマークの切れ込み部分のように、、、とでも表現したらわかりやすいでしょうか?
ここでは特徴的な所見として大型の丸い核小体を描きましたが、これは必ずしも必須ではなく、ある場合もある、、、といった程度のものです。
が、扁平上皮癌にはここまで大きい核小体は出現することはなく、また、形も丸くないやや変形したものであることが多く、組織型の鑑別に重要な要素となります。
もう一つ核と細胞質の位置関係も、扁平上皮、腺それぞれの由来細胞の形態を残していて、扁平上皮癌では核は中心性にあり、腺癌では核は偏在している、という点も鑑別にはかかせないポイントです。
右の絵でも少しは表現したつもりですが、、、わかりますか?

ついでに書くと、上皮系の悪性細胞より非上皮系の悪性細胞(たとえば肉腫など)の方が核縁は細く、薄く、クロマチンは更に微細です。ただ、悪性ですので核内のクロマチン量は多く、核形不整で立体的に見えます。
どう説明しても、このあたりのことは、絵ではわかりづらいですね。いずれ実際の写真を載せたいと思ってます。<<CTの皆さん、ご協力をお願いします!

子宮の浸潤癌を鑑別するためには、これらのような細胞そのものの所見を読み取ることの他にも、いくつか重要な要素があります。
それは、出血があること、しかもそれが新鮮血でなく変性したものであること、本来のちつの常在菌でない雑菌が多く見られること、炎症細胞=白血球が多く見られること、壊死物があること、などです。
ことに壊死物は、細胞が死滅した破片のことなのですが、癌腫が大きくなって癌組織全体に栄養供給が行き渡らなくなった結果できるものなので、浸潤癌を強く疑うことになります。




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