癌の進行度分類について


上皮内癌の次は、微小浸潤癌(初期浸潤癌、とも言います)についての番ですが、その前にここで、癌の進行度は何によって決められているのか、書いておこうと思います。


*** T N M 分類 ***


癌の進行度は、癌がどのくらいの大きさになっているか、周辺のリンパ節にどれほど転移しているか、遠隔臓器への転移はあるか、の3つの要素で決められています。
これは、TNM分類といって、国際的な規約として使われています。

T N M 分 類
原発腫瘍
(T:tumor=腫瘍)
T0腫瘍なし(固まりを作っていない)
T1〜T4がんの大きさ、浸潤の程度により、各臓器別に分類
リンパ節転移
(N:lymph nodes=リンパ節)
N0リンパ節転移なし
N1〜N4リンパ節転移の程度により、各臓器別に分類
遠隔転移
(M:metastasis=転移)
M0遠隔転移なし
M1遠隔転移あり


T0というのは、がんはできたもののまだごくごく小さく、周辺組織への浸潤のないもの、です。上皮由来である「癌」(「がん、ガン、癌」 の項目参照)の場合、基底膜を超えていない、上皮内癌の状態をさします。

一般的にいって、腫瘍は大きくなればなるほど、危険度が増します。それはたとえ転移がなくても、周辺臓器や血管、神経を圧迫することによって、さまざまな弊害が現われるからです。
たとえば、神経の圧迫によって弊害のおこる有名なものとしては、子宮ではなく肺なのですが「パンコースト腫瘍」というのがあります。
これは、右の絵のように、肺の一番上の尖った部分にできた腫瘍が腕や頚の神経を圧迫し浸潤してしまって、そのせいで肩から頚へかけての猛烈な痛みや、知覚麻痺、さらには筋肉の萎縮まで引き起こしてしまう、というものです。

リンパ節転移というのは、リンパ液にのって流れ出た癌細胞が、リンパ節の網にひっかかり、そこで増殖をしてしまった状態をいいます。
この、リンパ節というのは、各臓器の周りに沢山つながっている米粒〜大豆くらいの大きさの組織で、中には、リンパ球やマクロファージといった生体の防衛を行っている細胞がつまっています。
リンパ液を通ってここに流れ込んだあらゆる物は、ここでふるいにかけられ、異物にたいしては、抗体がつくられたり、直接たべられて(貧食=どんしょく、といいます)しまったりして、普通は排除されます。リンパ節は、いわば関所のようなもの、といえるでしょう。
当然、癌細胞も異物ですから、リンパ節では排除しようとしているはずです。にもかかわらず、ここへ転移してしまった、、、ということは、癌細胞が生体の防御に負けない力を持ってしまったことの証明となってしまいます。
臓器からより離れたところのリンパ節にまで転移がある、すなわち、癌細胞が沢山の関所をくぐり抜けてしまった、という方が、一般に予後も悪くなります。

癌の他臓器への転移については、どこが原発であれ、予後は不良となります。
ただ、リンパ節を突破したからといって、すべての癌細胞がどこへでもすぐに転移できる、、、というわけではなく、癌細胞が転移し増殖するのにはさらにいろいろな条件が必要なようです。
たとえば、乳癌は骨に転移しやすい、など、サボテンを沼地に植えても育たないのと同じように、それぞれの臓器由来別に癌細胞の好む組織、好まない組織、というのがあるのです。
だから、より多くの臓器へ転移巣がみられる、、、ということは、癌がそれだけの多くの能力を獲得してしまったということにもなり、当然予後も悪くなります。



*** ステージ分類 ***



TNM分類をもとに、癌の進行度と広がりの程度を、一度に表わすことが出来るように作られたのが、 ステージ分類です。臨床に沿った分類であるので、邦訳では臨床進行期分類、といいます。

ステージ 分 類
ステージ 0 Tis(上皮内癌)〜T1N0M0
ステージ I T1〜T2N0〜N1M0
ステージ II T1〜T3N0〜N2M0
ステージ III T2〜T4N0〜N2M0
ステージ IV T4N2M0〜M1


ステージ分類も、TNM分類同様、臓器別に細かく分類されています。
ここでは、子宮頚部癌の分類を書いてみます。(1997年子宮頚癌取り扱い規約より抜粋)


子宮頚癌のステージ分類
0期 癌細胞が上皮内にとどまるもの
I 期 I a 期 I a 1 期:癌細胞が上皮の基底膜を超えるが、浸潤の深さが3mm以内で、かつ病変の広がりが7mm以内のもの
I a 2期:浸潤の深さが3〜5mm以内で、病変の広がりが7mm以内のもの
I b 期 I b 1 期:明らかな病巣が子宮頚部に限局し大きさが4cm以内のもの
I b 2期:病巣が4cmをこえるもの
II 期 II a 期 頚部をこえて浸潤があるが、膣壁の下1/3には達していないもののうち、子宮傍組織浸潤は認められないもの
II b 期 同上で、子宮傍組織浸潤の認められるもの
III 期 III a 期 浸潤が膣壁の下1/3に達しているが、骨盤壁まで達していないもの
III b 期 浸潤が骨盤壁に達しているもの。または明らかな水腎症や無機能腎を認めるもの
IV 期 IV a 期 膀胱や、直腸の粘膜まで浸潤しているもの
IV b 期 小骨盤腔を超えて広がるもの


0期、I a 期に関しては、自覚症状はほとんどありません。ただまれに、接触出血といって、セックスのときの摩擦で出血することがあります。
癌は血管を豊富にとりこんでおり、また、結合が弱く剥がれやすいため、正常組織よりも出血しやすいからです。
I b 期、II期では、接触出血はもちろんですが、おりものに血がまじったり、不正出血があったりします。
III期では、さらに、神経の圧迫により下腹部や腰、下肢などに痛みを感じたり、尿がでにくくなったりします。
IV期では、癌がぼうこうや直腸の内側に顔をだしてしまった状態なので、血尿や血便がでるようになります。転移のあるものについては、特に、予後は悪くなります。

細胞診で、細胞形態そのものから進行期がはっきり区別出来るのは、次に書く、I a 期の微小浸潤癌まででしょう。
そこから先はステージがIIIでもIVでも、浸潤癌であることしかわからない場合が多いのです。
ただし、たとえば癌細胞と一緒に細胞の腐った破片(壊死物)が沢山認められれば、癌組織がかなり大きくなっていること(大きくなりすぎて血液の配給がうまくいかなくなり、腐ってくるのです)が想像できます。
また、女性の尿の細胞診検査に扁平上皮癌の細胞が認められれば、子宮癌の存在も考慮にいれられます。

このように、細胞診では、細胞そのものの所見はもちろんその他の情報を総動員して、出来るだけ細かく、正確な診断を下そうとしています。



細胞診のクラス分類については、進行癌まで話しが終わってから詳しく書くことにします。


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