なぜ検査結果がくいちがうの?


*** 細胞診には再現性が無い?? ***


細胞診、コルポ診、狙い組織診、円錐切除術が、それぞれどんな検査で、どこをどう調べるのかの概要は、ここまででナントナクデモ分かって頂けたでしょうか?
ここからがいよいよ本題、それぞれの一長一短を考えながら、どうして検査結果に食い違いがうまれてしまうのか、その時患者自身は何を考え、どう行動したらいいのか?大変難しい問題ではありますが、私なりの考えを書いていこうと思います。

ほんとにほんとに、くどくって申し訳ないのですが、重ねてさらにもう一度。私は一介の細胞検査士であって、医者ではありません。私の書くことは、私の知っている範囲に基づいて私の判断基準に従って書いたものであり、あくまでも参考にしかならないもの、です。不安や疑問はとにかくまず主治医にじっくり相談し、納得の上で検査や治療を進めていかれますよう、その点をどうぞどうぞよろしくお願い致します。m(_ _)m

掲示板への書き込みや、私のところへ送られてくるメールを見ていると、初回検査でclass IIIaだったものが1ヶ月しかたっていないのに今回はclass I になったのだけれど、こんなに早く治ってしまうことってあるんですか?とか、逆に、前回はclass I だったのに今回はいきなりIIIbと言われてしまいました、とか、ドクターに細胞診は再現性の無い検査だから仕方ないと言われました、組織診の結果の方が正しいので細胞診の結果が悪いものであっても気にしないようにしてます、などといった書き込みを見受けます。
どれも少しずつ正しい、けれど、どれも細胞診という検査がどういうものであるかをきちんと把握しきってはいない、細胞検査士としては、残念な内容といえます。

採取量と場所の差 では、実際にこのようなことが起きてしまうのは、どうしてなのでしょうか?
細胞診では多くの場合、子宮口部分と頚部部分は別々に(一度に両方を採取できる道具もあります)採取して、それぞれをスライドグラスに塗って、それを染色、鏡見します。(施設によって、同じスライドグラス上に2ケ所を塗りわけるところと、別々のスライドに塗るところとがあります。)
先にも書いた通り、膣鏡で見て異常の無い状態から、浅いが広い範囲を採取して異常をピックアップするのが集団検診における細胞診の基本的な役割なのですが、これは、表面を無作為に撫でただけの検査だともいいかえることもできます。だから、視診では確認できない異常個所があり、コルポスコピーが行われず、運悪くそこの細胞が採取できていなかった場合は、異常が発見できない、ということが起こり得ます。

もうすこし詳しく書いてみましょう。表面全体からしっかり採取されていればほとんど一通りの細胞は取れるし、きちんとした結果も得られます。(左の図1では紺色の線と左下の丸の中。中に描いているピンク色のひらひらは細胞のつもりです。今まで細胞は、細胞診で見た時の色に合わせて緑色で塗ってきましたが、組織図との対比で分かりやすいように、この色にしてみました)
実際多くの場合はこのように問題無いのですが、例えば粘液の分泌の多い日に、表面の粘液を最初にぬぐい取ることをせずに、そのまま採取量の少なくなりがちな綿棒で擦過すると、粘液にまみれて細胞がごく少数しか採取されていない標本になってしまったりすることがあります(薄茶の線と丸)。この場合、標本全体の細胞が少なければ、検体不適で再検となりますが、他の部分からは沢山の細胞が取れていて、たまたま病変付近からだけ細胞が採取されていなかった場合は、これを細胞診では判別することはできませんので、陰性の結果が出ます(緑の線と丸)。
逆に、他の部分はあまりきちんと採取されていなくても、異型細胞のある部分がきちんとスライドに乗っ ていれば、異常有りの診断をつけることができます(水色の線と丸)。
こういった、細胞採取時の量や採取部位の問題だけではなく、例えば、細胞の量はしっかり多くても、出血や炎症が強ければそれらにまみれてしまって見逃す可能性が高くなってしまいます(灰色の丸)。そして、細胞診が人間の行う検査である以上、こういった原因が無くても見逃しの可能性というのも、完全に消してしまうことはできません。
細胞診では class IIIa 以上の病変は細胞検査士がピックアップしたものを細胞診指導医が実際の標本を見て判定する決まりであり、診断の責任は指導医にありますが、class I や II の陰性例についてもダブルスクリーニング(同じ標本を複数の人間が見る検査)をする努力がなされています。

病変がまだ小さく、目立たない場合、最初の検査では水色の線の部分が採取されて、例えばclass IIIa の結果だったのが、2度目の検査では緑の線だったとすれば、結果、class I に下がることもあるでしょう。この場合、IIIaだったものが、短期間のうちに治った、というワケではなく、たまたま病変からの採取が無かっただけ、ということが分かって頂けると思います。
むろん、例えば炎症が強くて異形成と紛らわしい細胞が出ていた場合などは、消炎治療をすることによって短時間で実際に治ってしまう場合もありますし、すでに治りかかっている状態の病変を見つけた場合でも、2度目の検査までの時間のうちに実際に完治してしまっていたということもあるでしょうから、一概にクラスが下がったのは細胞が採取されなかったせいだ、というばかりではありません。

広い範囲に病変がある場合 病変部位が大きければ、それだけ、異常のある細胞が採取される可能性は高くなりますから、検査の再現性は高くなります。
けれど、例えば右の図2の緑色の線と丸のように、最高病変部位を採取できなければクラスは下がりますから、場合によっては、それが経過観察の為の半年後再検指示になったり、ただちに精密検査を行うように言われたりの、大きな境目になる場合があります。

採取器具によって細胞の採取量や状態が違ってくることは前のページにもちょっと書いた通りですが、その他にも例えば、あらかじめコルポスコピーによって頚部を拡大観察して、もし異常が疑われればそれだけ丁寧な細胞採取が行われるでしょうからサンプリングエラーは減りますし、標本を検鏡する際にコルポ所見も情報源として追加されますから、より精度の高い検査を行うことが出来ると思います。
集団検査で出た結果と、病院で診察した時に出た結果に食い違いがある場合などは、このような手順の違いが関係してくる場合もあるのではないかと思います。

では、左上の図1の紺色の線のように、しっかりと採取され固定された良好な標本であれば、細胞診の再現性はバッチリです、と言えるかというと、この場合でも2回目の検査では異常のある細胞が出てこなかった、ということもあります。
以前、私のHPの掲示板で「class IIIa と出て、3ヶ月後の再検査と言われたが、3ヶ月間を何もしないで待っているのはイヤだ。生理が終わり次第、早々に別の病院に行って検査をしなおしてこようと思う。」という投稿がありましたが、この場合、2度目の検査結果は陰性になりやすいのです。なぜかというと、扁平上皮の層は下の方に行くほどお互いががっちりと組み合わさっていて簡単にはバラバラにならないような仕組みになっているので、細胞診検査で一番表層部を取り除いてしまう(紺色の線の上の部分が無くなったと考えて下さい)と、弱い異型であればあるほど、下の方の細胞はそうそう簡単には剥がれるものでは無く、異常のある細胞が採取しづらい状態になるからです。
細胞診の検査で正しい結果を得る為には、最低でも2週間(扁平上皮が再生するのに必要な時間はこれくらいと言われています)、できれば1ヶ月の間隔を空ける必要があり、それより前に繰り返し検査をしても細胞が採取されずにクラスが下がって報告されてしまうことがあります。検査の結果クラスが下がることは、患者さんにとっては嬉しいことでしょうが、この場合は正しくない結果のせいで次の検診までの期間が空いてしまうことになり、その間に悪い方へ進行してしまう可能性もあり、望ましくありません。


 
*** 組織診と細胞診がくい違う? ***



組織診と細胞診 細胞診の結果が、採取された部位によって、時期によって、採取器具によって、細胞検査士の能力差によってもある程度は(=誰が見ても分かる病変なら問題ないのですが、難しい病変の時、能力差は出やすくなると思います)違う結果になってしまうことは、これまでに書いてきた通りです。
では、狙い組織診の結果が絶対に正しくて、細胞診の結果は信じられないものなのか?というと、必ずしもそうではありません。

狙い組織診は、文字通りにコルポスコピーで最高病変を「狙って」その部分を採取してくる検査ですが、コルポの所見が炎症などによって見づらいものになっていたり、また、コルポスコピーの所見で推測できる病変にはある程度の幅があるので、最高病変は絶対にここ、という場所を特定しきれなかった場合など、最高病変部位を採取し損ねる事があり得ます。
この場合、表面全体からまんべんなく細胞を取ってくる細胞診では最高病変を採取してくることができたのに、狙い組織診では陰性、という結果が出ます。

前のページの円錐切除の項目にも書きましたが、細胞診では癌を疑っているのに組織診では陰性の場合や、細胞診では浸潤癌を考えられる所見なのに組織診ではそこまで至っていない場合などは、試験的円錐切除を行って、子宮頚部全体の組織構築がどうなっているのかを調べて、始めて確定診断といえることになります。



*** 患者としてできること ***



ここまで読んで下さった方の中には、細胞診も狙い組織診も確実なものじゃないとしたら、じゃぁいったい何を信じたらいいの?と、不安になってしまわれた方もいらっしゃるかと思います。
ひょっとしたら自分は癌かもしれないと不安な気持で一杯の時や、せっかくクラスが下がったと喜んでいたのに、それってもしかしたら採取されてないダケってこともありえるの?とビックリなさった方も多いでしょう。

はっきり言って、そうなのです。
細胞診もコルポ診も狙い組織診も、多くの場合、正しく検査が行われ正しい結果を出すことが出来ています。けれど、たまたま細胞が取れなかった、たまたま最高病変をパンチすることが出来なかった、という場合、それをその場で証明する方法は無いのです。一旦消えたはずの病変が半年後の検査でまた出て来てしまった、という場合、それが本当に一旦無くなったものが再発したものであるのか、それとも前の検査の時に見つけることができなかったものであるのかを、調べる方法はありません。(ただし、見逃しや診断ミスなど、標本として残っている場合は再検証することはできます。採取時のミスは時間をさかのぼることはできないので、証明しようが無いのです。)

では、患者にできる事は何もないのでしょうか?
私は違うと思います。
自分の体は自分のものです。医者に任せてしまうことなく、自分自身で守ろうと思う意識をもって、自分の体の出す信号に敏感になり、検査を積極的に利用することが大切であり、そうすることで自分を守ることができるのだと思います。
そこで、ここでは具体的にどうしたらいいのか、いくつか書いてみることにします。

まず、一番最初に検診を受ける時(1次検診)は、自覚症状がある場合は集団検診を避け、個別検診を受けて欲しいと思います。
前のページにも書いた通り、多くの集団検診ではコルポスコピーは導入されておらず、視診だけで細胞を採取します。何度も書きますが、これは集団検診が自覚症状の無い人から異常のある人をピックアップするためのスクリーニング検査であり、全体からまんべんなく細胞を採取できる細胞診がふさわしい検査といえるからで、コルポスコピーは必要に応じてしか用いられないからです。
それに、残念なことではありますが、集団検診ではどうしても流れ作業的になりがちで、じっくりと問診をして丁寧に検査をする、ということが出来なくなってしまいがちなのも事実です。
かなりの出血が続いているとか、下腹部にいつも鈍痛がする、といった強い症状のある人はもちろんですが、セックスの時にたまに接触出血がある、軽い性交痛を感じることがある、おりものに血が混じることがある、おりものの色が変わった、ニオイがする気がする、といった軽い症状の場合でも、集団検診ではなく個別検診でしっかりとした検査を受けて欲しいと思います。
一度 class IIIa 以上が出たことのある人で、現在はなんの自覚症状の無い人の場合も同じです。半年後の検査を指示されたちょうどその時期が集団検診の時期に重なったからといって、代用してしまわないで下さい。検査する人(医者も検査士も)が変われば、ひょっとしたら、個別検診でいつも同じ医院で同じ人に検査をしてもらうのとは違う結果が出るということもあるかもしれませんから、安心の為に個別検診の他に集団検診も受けてみる、というのはかまわないと思います。(もちろん、一度細胞診をしたら最低でも2週間は間を空ける必要があるのは前述した通りです。)けれど、個別検診でじっくりと問診を受け、しっかりと細胞を採取してもらって検査をするのが大原則だと思います。

治療を前提とする、class IIIb や class IV の場合は、ただちに狙い組織診による精密検査が行われる場合が多いかと思いますが、class IIIa の場合は細胞診のみでフォローすることを指示されることも多いと思います。その期間も、1ヶ月後の再検とか、3ヶ月後、半年後と、人によって症状によって様々でしょうし、そんなに放っておいて大丈夫なの?とか、心配だからすぐにでも確定診断をしたいとか、色々と不安に思うことも多いと思います。
が、class IIIa と言われたからといって、それが癌に進行する割合はわずか数%、それもかなりの時間を必要としますから、慌てる必要も無ければ、悲観する必要もありません。多くの場合は、時間の経過とともに消失します。細胞診のフォローだけで充分なのです。落ち着いて下さい。
ただし、細胞診で何度もIIIa が出ているのに、一度も組織診をやらない、コルポスコープも滅多にやらない、というのではいけません。ひょっとしたらもっと強い病変があるのに見つかっていないだけ、という可能性があるからです。それに続けて何度も出る、ということは、それだけ病変が広い範囲にある証拠、かもしれません。
3ヶ月とか、半年ごとに1度の検査で3〜4回(年月にして1年〜1年半程度でしょうか)もIIIa が続いているのに、一度も組織診をしないようなら、思いきって組織診をしてみたいと相談してみましょう。それでもなおも細胞診のみの検査を続けるようなら、セカンドオピニオンの意味も込めて転院してみるのもひとつの方法だと思います。
その結果、やっぱり軽度〜中等度異形成程度、細胞診でいうところのclass IIIa という結果が出たならそれでヨシ。また細胞診のみのフォローアップに戻れば良いのです。

なんとなく自覚症状があって、検査を受けたら、結果がclass I でほっとした、、、。それは良かった、たぶん、体調が悪くてホルモンのバランスが崩れていたのでしょう、出血は中間期出血だったのかもしれないですね、びらんが炎症を起こしていただけでしょう、膣内細菌に雑菌が混じってしまっていたのかもしれないです、、、問題ないですよ、来年もまたきちんと定期検診を受けることを忘れずに、、、。
多くの場合は、その通りです。きちんと年に1回の細胞診検査を受ければ心配ありません。
けれど、class I と言われたけれど、やっぱりセックスの時に接触出血がある、おりものに血が混じる、性交痛がある、などの自覚症状が消えない場合は、医者に言われた通りの1年間をおとなしく待っている必要はありません。やっぱりおかしいんです、、、ときちんと話してもう一度念入りに検査をしてもらいましょう。むやみに心配してしょっちゅう検査ばかり受ける必要はもちろんありませんが、不安を不安のままで放っておく必要もありません。自分の体のことなのなのですから、検査をしたらそれでおしまい、医者の言われるがままに次の検査まで痛みや出血を不安なまま放置しておく方がおかしいです。

とはいえ、婦人科は自分では見えない場所であるだけにナカナカ自分では監視できない、というのも事実ではあります。もちろん細胞診検査そのものは医者に行かなければできないことではありますが、体調の変化を自分で監視する意味で私がお勧めしたいのは、ジミチで面倒ではありますが、基礎体温表をつけるということです。
かく言う私自身は不妊治療の為、あしかけ7年間も基礎体温表をつけていたことがありますが、そこまで長い期間をつけなくとも、例えば次の検査までの3ヶ月なり半年なり目標を定めて基礎体温を計っておくだけでも、自分の体調、体のリズムがずいぶんと把握できると思います。子宮内の細胞は、ホルモンによって全然違ってきますから、体のリズムが把握できていることは検査の時非常に有力な情報になるのはもちろんですが、例えば不正出血だと思っていたものが実は排卵時の出血だということが分かったり、おりものの量はいつ多くていつ少ないとか、お酒を飲んだ翌朝や徹夜明けの体温はアテにならないとか(笑)、自分自身の通常の状態というのをきちんとつかんでいることは、異常の発見の為にも重要なことだと思います。
また、たまにはお風呂場でそっと鏡をのぞいて、外見上の異常が無いかどうかを確認することも非常によいことだと思います。

最後に、多少なりとも自覚症状があって検査を受ける場合、または一度は陰性の結果が出たものの、なんとなく自覚症状が消えない場合に具体的に何をしたらいいのか、(医師の立場でなく、患者としての立場でもなく、細胞診検査をする立場の者として思うこと、のみですが)大雑把にまとめてみましょう。

生殖器というと恥ずかしい気持が先立ってしまうかもしれませんが、もっともっと子宮の出している信号を普段から積極的に聞くことが、大切な自分の体の一部を守ることにつながっていくのです。
お任せ医療はもうやめて、もっと自分の体を守る為に能動的に検査を利用して下さい。
そして一緒に癌を予防し、癌に立ち向かっていきましょう。



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