*** 異常があった場合の検査とコルポスコピー ***



膣鏡で見た段階でなんらかの異常が疑われたり、びらんなどで、触ったら出血の怖れがありそうだと思われる場合などは、先にコルポスコピーによる検査を行ってから、細胞診を行います。また、前回の検査である程度異常のあることが分かっている場合など、コルポ下で観察しながら細胞を採取するということもあります。

コルポスコピーというのは、子宮口を見るための虫眼鏡みたいなもの(なんて言ったら、怒られそうですが)で、なにもいじらずそのまま拡大して観察(単純診)した後、3%酢酸溶液によって表面を加工、白濁させて(加工診)さらに詳しく観察し、表面の色や血管の流れ具合(血管像)などの差によって、異常のあるなしを推定するものです。
酢酸加工は、細胞内のケラチンをはじめとするいくつかの成分がこれによって変化し、細胞層の厚みや密度によって白っぽく色々な見え方をすることを利用したもので、上皮の種類や異常の有無によって、白く見える持続時間は長かったり短かったりしますが、いずれ消失します。
(どなたか、コルポ機器、コルポ加工前、後の写真を御提供下さいませ〜m(_ _)m)
単純診と加工診にはそれぞれ、得意不得意な分野があり、両方を行ってワンセットです。

コルポスコピーについては、今回の更新以前にも書いたことがある通り、行政の行う健康診断での1次検診(特にバスの中での検診など)だったり、産科が中心の町の医院で検診を受けた場合などは行わないことが多いと思います。施設ごと、ドクターによっても必ずコルポを行うところそうでないところと様々で、またもちろん、それぞれの受診者の状態などによっても、行われたり行われなかったりします。
中には逆に、コルポのみでスクリーニングを行って、細胞診はやらない、という施設もあるようですが、細胞診をやっているものの意見としては、これは細胞診の軽視であって望ましいものではなく、受診者の方にはぜひ細胞診をやっている医院に転院なさることをお勧めしたいと思います。:-p

このように、集団検診を含め、最初の検査である1次検診では「必要に応じて」行われることが多いコルポ診ですが、一旦class IIIa 以上となって精密検査が必要であるという指示が出ると、コルポ診は必須となり、初診の施設でできない場合は、コルポ診のできる施設を紹介されるはずです。
なぜ精密検査にコルポ診が必須なのかは、この後すぐ次の項目に書きますので、先にコルポ診の概要についてささっと触れておきましょう。

コルポ像
子宮口を膣の側から拡大したものを簡単な略号で描き現したものが、左側のピンク色の大きいな丸=コルポ像です。
コルポ所見は、簡単な略図と略号を使ったスケッチとして表わされて(場合によっては写真も添付)記録され、病変の広がりを把握し、組織型や浸潤深度の推定をするのに用いられます。後で出てくる、精密検査時に必須であるのはもちろんですが、問診内容と共に、私達細胞検査士が検鏡する際にも重要な所見となります。

この絵では、1990年ローマで採択されたコルポスコピー新分類に基づく略号を少しだけ書いてみましたが、この他にも数多くの略図、略号が用いられています。
血管像の種類や加工時の白濁の度合いや形状、その消失までの時間などから、病変の組織分類がなんであるか、どれくらい浸潤しているかなど、コルポスコピーによって、多くのことが推定できます。(ただ、私自身通りいっぺんの知識しか持ち合わせておらず詳しい分類や所見の読み方などは分かりませんので、ここでは省略させて下さい。)

丸いコルポスコピーの略図の下の小さいひし形は、サービコスコピーといって外子宮口から頚管内部へ少し入った所を観察、記録したものを表わしています。サービコスコピーは頚部腺癌を見つける為にはもちろん、SC-J(円柱上皮ー扁平上皮ー境界部)が頚管の内側にあって通常のコルポ診だけでは見えない場合も重要な所見を得ることができる検査なのですが、まだ、コルポ診をする施設のすべてがサービコスコピーも行ってるというわけでは無いようです。(頚管内に異常があった場合は、頚管のソウハを行い、それを病理診断するか、円錐切除を行うことが多いのではないかと思います)


 
*** 狙い組織診 ***



狙い組織診とその病理組織像 細胞診やコルポ診で異常があった場合は、狙い組織診が行われます。

私のHPの掲示板でも、組織診検査を行った、とか、組織診の診断結果を待って、、、という話しが頻繁に出てきますが、それはほとんどこの、狙い組織診のこと指しているようです。

狙い組織診はコルポスコピー下で、病変の広がりと境界を確認し、最高病変と思われるところを中心に1〜数カ所を採取します。
切除鉗子(普通上下に開閉する、長い柄のあるものを用います=これもどなたか写真下さいませー〜m(_ _)m )で、パチンパチンと摘むように採取したものを、ホルマリンで固定し、それを薄切りにして病理標本にします。

以前私が勤めていた施設では、ドクターによって違いましたが、おおむね3〜4mmから6〜7mm程度の小さな丸っぽい組織切片を1〜多くて5、6個所程度採取し、それを順番にひとつのブロックに並べて標本にしていました。
左の子宮口部分のコルポスケッチは、先に描いたコルポ像の略図を少し省略したものですが、紫色の文字で「異常所見」とある、斜線部分=白色上皮(W)とちっちゃい丸ポッチ=赤点斑(P)がこの場合の異常所見部分であり、この部分を中心に、パチンパチンと挟み採ったのが水色の四角で囲ってある狙い組織診で採取した部分、、、のつもりです。絵の縮尺はいいかげんなので、あまり信用せず(^_^;;ゞだいたいこんなもん〜というイメージ像のつもりで見て下さい。
また、この絵では、異常所見では無い部分も採取したことになっていますが、実際には異常部分を1ケ所だけ狙って採取、ということも多く、どこをどう採取するかは、担当医の判断に任されます。

採取した組織はホルマリンで固定するとさらに小さく固まってしまい、また、実際の色はもっと白っぽい薄茶色で、どっちが上皮部分でどっちが支持組織部分なのか、たった2〜3mmの固まりの中で見分けるのは難しいことも多いのですが、切断面を目をこらして見ると上皮の側だけつるんと光って見えるので見分けがつきます。そちら側を揃えて並べ、パラフィンブロックに包埋(ほうまい)し、4〜8μ程度に薄切、染色して標本にします。
まん中の、マグロのにぎりを、黒い線で薄切りにしているような絵が、組織切片の標本作成イメージなのですが、、、こんなんで分かるでしょうか?<疑問だー(^_^;;ゞ
ともあれ、標本作成は病理担当の臨床検査技師の仕事であり(私も昔はやってました(^_^)/)標本の善し悪しが診断結果に大きく左右することもある、重要なポイントとなります。もちろん、出来上がった病理組織標本を見て、それが何であるか、どこまで浸潤しているかを判断する病理医の診断が、その後の検査・治療方針を方向付ける最も重要なポイントです。

狙い組織診の組織切片は、小さくても、支持組織と呼ばれる皮の下の部分から癌や異形成細胞の組織構築までがはっきり分かること、どの部分の病変なのかが特定できること、が特徴であり、細胞がバラバラで、その細胞がどの部分から出てきたどのような構造のものなのかをなかなか特定できない細胞診との大きな差となっています。細胞診、コルポ診、狙い組織診の3つが一致していれば、ここまでの検査でほぼ間違い無い結果が出たといえ、従って狙い組織診の検査結果次第で次にどうするかの大半が決まります。


*** 円錐切除術 ***



円錐切除の切開線 狙い組織診で結論が出なかった場合の次の段階は、円錐切除、となります。
円錐切除というのは、文字通り子宮頚部を膣側から円錐状に切り取る治療方法のことで、左に描いたのは先述の「子宮がん検診の手引き」にある円錐切除の要点図に、私が多少手を加えたものです。

掲示板への書き込みを見ていると、円錐切除いうと検査ではなく治療、子宮を温存する為の手術、という意味合いが強く受け取られているようで、もちろん治療的意味合いも大変重要なのですが、実は治療目的だけでなく、診断的な意味合いも強いのです。
診断的意味合い、、、というと、なんともあいまいですが、もうすこし具体的に言うと、細胞診とコルポスコピー、狙い組織診に食い違いがあった場合、広範囲の組織を切除しその構築を見ることができる円錐切除によってはじめて組織全体像をつかむことができる=診断がつく、ということです。
例えば、細胞診は陽性だけれどコルポスコピーや狙い組織診が陰性だった場合や、細胞診は浸潤癌を疑える所見なのに組織診では上皮内癌や微少浸潤癌どまりでさらに最強の病変の特定を行ってから治療方針の決定をしたい場合など、狙い組織診の延長上としてに行われるのが診断的円錐切除術だ、といえます。
ではどうして細胞診やコルポ、狙い組織診の検査結果に食い違いがおこるのか?ということと、食い違いがあった時の治療方針全てを医者任せにすることなく、患者として何かできることがないのか?ということは、今回の更新のツボですので、このあと別ページにして詳しく書きます。

診断的円錐切除術に対し、治療的円錐切除術というのは、狙い組織診の段階で、病変が高度異形成、上皮内癌、微少浸潤癌(の場合は全例では無いですが)であることが確定していて、最初から子宮の温存を目的として治療の意味で行うもの、と言うことができます。もっとも、試験目的であっても結果的に断端部に癌が残っていなければ治療は完了ということであり、あまり細かい区分は必要ないのかもしれません。
(にもかかわらずここで細かく分けたのは、先の「子宮頚癌検診の手引き」書で、頚癌を疑う症例では、がん治療施設による入院手術を原則とするが、異形成の治療的円錐切叙述に関しては、この限りでない、とされているからです。レーザーメスなど必要最低限で十分な量を焼き取ることのできる方法が普及してきて、結果、出血や頚管狭窄がずいぶんと押さえられるようになり、円錐切除術が多くの施設で行われるようになってきている現状を考えると、このあたりの分かれ目は今後ますますあいまいになっていくのかもしれません。)

治療に関しては私はシロウトなのであまり詳しく書けませんが、円錐切除後の出血については私のHPの掲示板でよく話題に登っているようですので、術後出血は1〜2日目に多く、また5〜7日目に第2の小さなピークがある、コールドナイフ(いわゆるメスで切除し縫合する方法)の場合は数日経過後の出血が多い、とされていることをここに書いておくことにします。


下の写真は、LEEP(Loop electroexcision procedure)と呼ばれる特殊な電気メスの全体像と先端部です。
右側の写真で見るとわかる通り、輪っかになった金属線の先端部に電流を流して組織を削り取っていく方法で、イメージとしてはリンゴの皮をピーラー(皮剥き器)で剥いていく感じ、なのだそうです。
LEEP全体像

リンゴの写真 実際に、リンゴの皮を果物ナイフ(手術用メス)とピーラー(LEEP)で剥いて(円錐切除)、比較した写真を送って頂いたのでここに掲載します。
ピーラーを使った右側のリンゴの場合、表に突き出た部分(子宮膣部)はちゃんと剥けていますが、芯の回りのへこんだ部分(頚管部)はあまり奥まで剥いていくことが出来ないことがよく分かると思います。それに対して左側のリンゴは文字通り円錐状に深く切り込めていて、頚部の奥の方の病変まで採取が可能なことが分かります。
また、切り口の大きさや形の他にも、病理の立場からいうと、レーザーメスの切断面は焼けこげていて、ぎりぎりのところに病変がある場合、完全に取り切れているのか診断がつけにくくなってしまうこともあり、切れ味の良いコールドナイフでスパッと切ってある方が正しい診断が得られる、という場合もあります。

このように、ひとくちに円錐切除といっても、出血が多かったり少なかったり、入院期間や手術時間がちがったりするのには、色々な理由があるのです。
どの方法を選択するかは、年齢、細胞診、組織診、コルポ所見、本人の希望などいろいろな条件を加味して決めていきます。
局所麻酔で外来で診断的円錐切除を行う場合などでは、LEEPは多く用いられているようで、もちろん、LEEPで取った断端部に癌が残っていないことがわかれば、これで治療も完了します。

リンゴの企画をし、実際に切って下さった、広島の病理医、佐々木なおみ先生
ならびに コダさん@広島さん 大変分かりやすい写真の御提供を本当に
ありがとうございました。また、LEEPについてと病理診断について、病理医の立場
からアドバイスを下さった 柳井先生 にも心より感謝致します。m(_ _)m



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