細胞をみただけで癌がわかるの?

*** いいわけの言葉 ***

癌って、なに??どうしてできるの??
うぅぅぅぅぅん、、、、
と、いっくら、唸っても私にもよくわかりません。
いや、ほんと言うと、勉強不足なんでよく知らない、、、ところが多いんです。ごめんなさい。
そんな不勉強な私が、こんな大それたタイトルつけて、どうするんじゃい!ってお叱りが聞こえてきそうですが、、、でも、でもですね。
「それでも少なくとも旦那より*ちょびっとは*詳しい!」んです。私。

HPを作るとき、事前調査と称して、旦那(理工系大卒)に質問してみました。
細胞の核って、しってる?「うん。」じゃ、DNAは?「知ってる。」じゃ、DNAは、どこにあると思う?「核、、、?かな?」じゃさ、癌遺伝子って聞いたこと、ある?「ある、、、ような気がする」 癌抑制遺伝子ってのは?「知らない」

図書館に行って、一般向けの癌関係の本を、何冊か借りて読んでみました。
知ってるものとして書いてしまっているのか、知らなくてもかまわない、と思っているのか、いきなり「これは高分化の低悪性度腫瘍で、、、。」とか、書いてあったりする本がけっこうありました。
高分化って、言われて、ピン!と来る人は、すでに医学的知識の多少なりともあるひとなんじゃないかな、、、?と思うのですが、どうでしょう。

「はじめに」でも触れましたが、医学に少しでもかかわったことのある人にとっては「常識」のことでも、そうでない人にとっては未知の世界、、、のことってすごく沢山あるように思います。
もちろん、全く医学にかかわりのない方でも、身近な人が癌を患ったことがあったりすると、色々調べて、私何ぞより、よっぽど詳しくなっていらっしゃることも多いでしょう。
でも、たとえば、市の検診で「子宮癌検査のための細胞診をやりましょう。」と言われた人が、
「細胞診って、なに?」「細胞診でどうして癌がわかるの?」
と思ったときに、わざわざ癌関連の本をひっくり返さなくてもすむよう、、、もっとも、細胞診について書いてある一般書なんて、ほとんどないですが、、、私なりの解釈で勝手に「細胞診って、こんなもん。こんなふうに癌だってことがわかるんだよ、、、。」と簡単な説明を書いていきたいと思います。

書こうとしていることを模索しているうち、ほとんど門外漢である分子細胞学の領域に、大きくふみこんでしまいました。
勉強不足を痛感しつつ、とにかくわかりやすいように、を心がけて挿絵もいれての文にしてみました。
それでも、全体にかなりややこしい内容なので、項目の最後に「キーワードとひとこと」の一覧表というのを設けました。
わからん!という人はせめてそこだけでも、見てってください。私なり、、、のまとめなので、さらにわからん!ことになるかもしれませんが、、、そのときはごめんなさい。

「でたらめ」は、務めて書かないように努力するつもりですが、大間違い!!は、どうぞご指摘ください。


*** まずは、細胞の分裂、分化 ***

癌、というと、やたらめったに大きくなったり、転移したりする、できものの一種、、、と思うのが一般的な印象でしょうか?
癌は遺伝子の傷で起きる、、、なんてことも、ずいぶんポピュラーになって、聞いたことのある方も多いでしょうし、癌の原因を現わす一番的確な表現だと思います。
癌は老化現象のひとつだ、なんていうことも、よく言われているようです。

細胞診は、ガラスになすりつけた細胞を特殊な染色によって色づけし、それを光学顕微鏡で見て癌細胞の有無を診断するもの、なので、遺伝子の傷=一つ一つの細胞の、核の中にあるDNAの、そのまた一部分に傷があるかどうか、、、まで、見えるわけではありません。
では、何を見ているかというと、「遺伝子の傷」によって変わってくる細胞形態を、その顔つきの差で「これは、良性」「これは悪性」と区別しているのです。
細胞一個一個は、そのままではほとんどが無色なので、特殊な染色(パパニコロウ染色、ギムザ染色など。染色も細胞検査士の重要な仕事のひとつです)を施すことは欠かすことができません。また、その色合いや形などを認識できるまでには、訓練が必要です。パパニコロウ染色と細胞診での細胞の見え方については、別に詳しく述べます。
まず、ここでは、細胞の顔つきを変えてしまう、そしてもちろん癌の原因である、遺伝子の傷、というのがどんなものなのかを簡単に書いてみようと思います。
それには、基礎知識として細胞の分化と、分裂についてを簡単に説明しなくてはいけません。
化粧品のCMで、よく、「古くなった角質がくすみの原因、、、。」などといいますが、では、「古くなった角質」って、なんでしょう?
何度も何度も録画と再生を繰り返して、横しまばかりが目立つようになったビデオテープのように、使い古された細胞のこと、をいうのでしょうか?
冷蔵庫の奥で干からびてしまったりんごのように、細胞がカサカサになること、をいうのでしょうか?
では、癌細胞はどんな形態をしているのでしょう?傷ついてぼろぼろの細胞をイメージします?それともカサカサしわくちゃな細胞、でしょうか?

癌がなぜ出来るのかについては、まだ完全に解明されてはいません。(私の勉強不足のためばかりじゃないです、、、ほんと、ほんとですってば!)
が、細胞の分裂、分化、老化、癌化は、密接にかかわりあっている、ということは分かってきました。


角質の場合の「古くなった」には、ビデオのような「使い古した」の意味と、りんごのように「カサカサになった」の意味の、両方の意味の「古い」、が含まれていると思います。

細胞というのは、一定の周期をもって、分裂を繰り返しています。
そして、体細胞は大体30〜40回、分裂すると死滅します。つまり、細胞が老化するのです。
意外なことに、これは多くの癌細胞ですら同じで、癌細胞を培養しても、あるとき急に死滅してしまったりします。(染色体の末端部には、あそび、ともいえる繰り返しがあって、それが分裂ごとに短くなってしまうためにこの回数が決まります。癌の病変が進むと、この末端部を引き延ばす酵素、というのが沢山みられるようになる>分裂に際限がなくなる>悪性度が高くなる一因、といわれています。)

図・1は細胞の分裂と時間の経過について、表わしてあります。
緑色の部分が細胞質(それぞれの細胞の機能によって様々な形態をしています)、その真ん中にある、紫色の丸が核(DNAは主にこの中にはいっています)を表現しています。横方向への時間経過は、分裂を何度も繰り返していることを表わしています。分裂を繰り返した細胞=古い細胞、、、録画と再生を繰り返したビデオテープのように、、、といえるでしょう。(細胞分裂=ビデオテープというのは、らせん/リングのパクリ、です。はい。)

一方、分裂した細胞は、そのまま次の分裂までおとなしくしているものと、DNAは変わらずに、その細胞の形態や行動が変化して、細胞の機能を果たせるようになるものとに分かれます。
細胞独自の機能を持つようになることを、分化する、といいます。
皮膚の場合は、扁平上皮という何層にも積み重なった丈夫な組織で出来ていて、それが表面に向かって平べったく、固く、カサカサに分化していきます。図・2は、基底膜(表皮とその下の組織をわける膜)に接した細胞が分裂し、表面に向かって分化していくところを現わしています。図・1の縦方向の矢印も同じです。
一番上の方まで分化してカサカサに固くなった細胞が角質とよばれるもので、たまれば垢として自然にはがれ落ちます。
扁平上皮の場合は、カサカサに固くなる、、、と、いかにも「古くなった」感じがしますが、他の場所では、粘液をはじめ、さまざまな化学物質を作るようになったり、たとえば赤血球では無核になって酸素を運ぶようになる、など、細胞がそれぞれの機能を果たすようになります。
固くもなければ、カサカサもしないので、「古い」かんじはしませんが、分裂してから時間の経過に従い変化した細胞、ですから、確かに時間がたったぶん「古くなっている」ともいえますよね。
分化した細胞に対して、基底膜近くにある分化を始める前の細胞を未分化な細胞、といい、分化を始めたばかりの細胞(図・2では、基底膜の少し上あたり)を幼若な細胞、、、と呼びます。


ところで、細胞が緑色に塗ってあったり、人間の皮膚がピンクと紫に塗ってあることに、???と思った方、いますね?
これは、細胞のほうは、パパニコロウ染色を施したもの、皮膚組織の方はHE染色を施したもの、をイメージして塗り分けてあるからです。
詳しくは、塗沫、染色のところで書きます。

図・3は、細胞が分裂するまでの変化を現わした図で、細胞周期、といいます。
細胞周期には G1期(DNA合成の為の準備期間)、S期(DNA合成期)、G2期(細胞分裂の為の準備期間)、M期(細胞分裂期)の4つの相があり、順番に回転しています。
細胞の増殖はいろいろな因子でコントロールされていてますが、G1期(DNA合成の為の準備期間)にある、R点を超える量の生科学的な反応が積み重なると、そこから先は増殖因子が無くても回転が進み、次のG1期に至ります。
細胞分裂の制御はG1期でおこなわれている、といってもいいでしょう。
分裂したあとすぐに次の回転に入って、さらに分裂を繰り返すこともありますが、そこでいったん分裂をやめておとなしくしていることもあります。これが、休止期Gです。

図・3では、核の中がなにやらもにょもにょ変化している所を描きあらわしてありますが、実際にパパニコロウ染色を施された標本を光学顕微鏡でみただけでは、M期の細胞分裂像は見えますが、それ以外ははっきりした区別はつきません。(酵素抗体をもちいた特殊な染色でS期をみることは可能です)
でも、核内のDNA量が増えてくるとそれに伴い核の大きさに変化があったり、濃く染色されたりするので、その細胞がGの休止期にあるのではなく、G1〜活動期にあることは、わかることもあります。

キーワードひとこと
分裂細胞は分裂をくりかえし老化していくが、分裂するかしないか、ふつうは適正に制御されている
分化細胞は分化し、それぞれに必要な機能を獲得していく
細胞周期細胞が次に分裂するまでの回転をいい、DNA合成準備期=G1期に、増殖がコントロールされている


*** がん遺伝子、がん抑制遺伝子 ***

さて、次はがん遺伝子について、です。
がん遺伝子、というとなにやら恐ろしげな名前ですが、もともとは細胞の増殖に(つまり、分裂を進める為に働く)重要な役割を果たす遺伝子、と考えられています。
最初、トリに感染して数週間で癌をつくるウィルス内で発見され、この遺伝子の発現ががんをつくるので、がん遺伝子と呼ばれるようになりました。現在50種類以上が発見されています。
普段は的確に制御されているので、癌化を起こしたりはしないのですが、なんらかの原因で活性化されてしまったり、活性化を防いでいる別の遺伝子(これをがん抑制遺伝子といいます)が無くなったりするとがん化してしまいます。

例えはあまり良くないのですが他に思いつかないので、がん遺伝子をお酒の大好きな大工の棟梁、八つぁん、に例えてみましょう。

この八つぁんは、普段はまじめで働き者、腕のいい大工で皆の信頼も厚く、なくてはならない大切な存在です。たまにお酒を飲み過ぎて、少々羽目を外すことがあっても、いつもは大きな失敗につながることはありません。
ところが、お酒の飲み過ぎが積み重なり、仕事のストレスや、たばこの吸いすぎなど、他の要因も加わって、ついに制御がきかなくなってしまいました。その結果、毎日飲んだくれるようになり、まともな仕事ができなくなり、してはならない指示を出してしまって、居間に柱をなんぼんも立てたり、壁に穴をあけては隠し部屋を増やしたり、台所をつくらずにトイレばかり沢山作るようになってしまいました。そして、彼の建てた家は、部屋数ばかり多い割に、家として機能しないものになってしまったのです、、、。
とまあ、こんな具合です。

この例でいうと、お酒好き、というもともと危ない要素をもっている八つぁんが、がん遺伝子。
少々失敗はあっても大事には至らない、というあたりは、細胞の場合ではDNAが自己修復されたり、修復不能なときはその細胞は細胞死に至って消滅してしまったりして、危険因子が後に残らないことを指します。
お酒の飲み過ぎうんぬん以下が、がん遺伝子の活性化、です。

では、がん抑制遺伝子とは、どんなものでしょう?
八つぁんと一緒に仕事をしているくまさんも、大のお酒好きだったとします。
くまさんは、大の恐妻家で(わが家のこと、、、かな?)普段は奥さんの目が怖くて、思う存分お酒を飲むことなく、我慢しています。
ところが、奥さんが実家の都合で、半年近くも里帰りしてしまいました。
くまさんは、ここぞとばかり飲んだくれて、その結果、八つぁんと同じ様なことになってしまいました、、、。

この場合の、くまさんの奥さんが、がん抑制遺伝子にあたります。
なんか、とほほ、、、な例で、すみません。

キーワードひとこと
がん遺伝子本来、細胞増殖に必須の遺伝子だが、何らかの理由で活性化するとがん化を進める方向に働く
がん抑制遺伝子がん遺伝子の活性化を制御している遺伝子。変異や欠落でがん化を進める

*** 癌のできるまで ***

遺伝子は、それこそ、体を作り機能させるためのありとあらゆる情報を含んでいるのですから、その一部であるがん遺伝子がん抑制遺伝子も、です)の能力も千差万別で、数も沢山あります
癌が出来るまでの原因もさまざまですが、ばっさり分けると、(分け方が適切でない場合は、ご指摘ください)

  1. 細胞を増殖させる原因物質を沢山作ってしまう場合(この場合、細胞自らが増える物質を作る場合と、他の細胞を増やしてしまう物質を作る場合とに更に細かく分かれます)
  2. 原因物質があるかどうかを探知する機能がバカになってしまって細胞が増殖し続けてしまう場合
  3. 増殖しろという命令を出す経路が狂ってしまう場合
  4. 細胞分裂の回転を制御するブレーキが壊れてしまう場合
  5. いらなくなった細胞を捨てる機能(アポトーシスといいます)が壊れてしまった(つまり細胞が死ななくなる)場合
  6. 細胞の分化がとまってしまって幼若な細胞がたまってしまう場合
に分けられます。
あんまり上手なたとえになっていないのですが、下の八つぁんの家をみてください。

癌は、どれか一つが原因ということではなく、いくつもの遺伝子が段階的に関与していって、癌として発現するようになります
また、癌となった後にも、さらに要素が加わって、悪性化がすすんでいきます。
この、悪性化というのは、増殖速度がはやくなったり、浸潤や転移といった、他臓器へ入り込む能力を獲得するようになったりすることをいいます。
浸潤や転移について、詳しくは、後の腫瘍のところでかくつもりです。

左の流れ図は、大腸癌を例にとった、癌化のモデル図(がんの多段階発令モデル)です。
5qとか、12qとかあるのは、染色体(DNA=遺伝子そのもの、と、それを支える蛋白が折り畳まれて形ちづくられている)のどの部分に問題のがん遺伝子(またはがん抑制遺伝子)があるかをあらわしています。
染色体がXの形になっているのはみたことがありますか?
qというのは、くびれを中心に長い腕のほうをさします。ちなみに短い腕のほうはpであらわします。
一番最初の赤い矢印を例にとって説明してみます。
22対あるヒトの常染色体(形や長さから7つに分類されて、それに順に番号がふられている。他にXY=男、XX=女、という性染色体がある)のうちの5番目の染色体の長い腕にある、APC(またはMCC)という名前のついた、この場合はどちらもがん抑制遺伝子の、突然変異または欠損によって、正常上皮細胞が上皮過形成へと変化するといういみで、、、
って、書いても、、、うぅん、よくわかんないですね。これじゃ。

八つぁんのつくる家だって、原因が一つより、二つ、三つの方が、ボロ屋になりそうですよね。
さらに、八つぁんの他、大工のくまさんも、左官やの七べえも、瓦やの五ろやんもおかしくなれば、ボロ屋はますますボロになるわけです。
八つぁんの場合は、飲んだくれたらそのうち仕事そのものをしなくなって、家なんて建ちそうにないですが、癌の場合はそうはなりません。
細胞分裂の回転がプラスの方向へと回転し続けるようになり、細胞は無秩序に自己増殖を繰り返します。
悪徳業者の親玉に「もっと建てろ」という命令され続けて、とんでもないボロ屋をあっちこっちに建て続けている状態でも想像していただくといいかもしれませんが、、、癌を八つぁんに例えるのにはもう無理がありますね。
上の絵では、描く都合上、できあがった家はみんな同じボロ屋ですが、癌の場合は、それこそ千差万別、細胞の顔つきも、形ちも機能も、さまざまな癌ができあがります。

キーワードひとこと
がんの出来る原因どれか一つではなく、いくつもの遺伝子が段階的に関与して発現する。そのため、できあがったがんの形態も千差万別である


*** 細胞診での見え方 ***

細胞診で通常行われるパパニコロウ染色(Papanicolaou・以下Pap染色)では、分子構造までは見ることができない、と前にも書きました。
にもかかわらず、分子レベルの細かい細かい話しをながながと書いたのは、それが、光学的にある程度鑑別できる形になって、現われるからです。
染色については、また、詳しく書きます。

左の絵は、扁平上皮が悪性化した場合にどんな風に見えるかを模式図化したものです。
扁平上皮の場合、ふうう高分化といわず角化型扁平上皮癌といったり、角化していない癌(非角化型扁平上皮癌といいます)がかならずしも低分化とはいえない、など、あまり正確な図ではないかもしれません。
腺癌(腫瘍について、参照)だと、だいたい呼び方は一致するので説明上都合良いのですが、ただ、今まで扁平上皮をモデルとして絵を描いてきたので、ここでも扁平上皮をとりあげてあります。
未分化な細胞は、文字どおり分化していないため、全身で、ほぼ似たりよったりの形をしており、未分化癌もこれにならって、全身どこの未分化癌でも同じ様な形をしています。

Pap染色で核の染色に使われるヘマトキシリンは、DNAと蛋白質の集合体(これをクロマチン=染色質と呼びます)を青紫色に染色します。
簡単に言ってしまうと、ヘマトキシリンの色素はプラスに荷電しているのに対し、クロマチンを形成している核酸はマイナスに荷電しており、双方が結合すると色が変わる、、、というもので、このあたりの理屈はなかなか面白いのですが、いずれ機会をみてもう少し詳しくふれることとして、ここでは省略します。
また、Pap染色は湿固定といって、ある程度立体的にみえるように細胞をガラスの上に固めてから染色する方法で、この立体的である、という点がPap染色の大きな特徴となっているのですが、こちらもここではこれ以上ふれません。
固定、染色については、良い検査を行う上での重要なポイントとなりますので、いずれもう少しちゃんと書きたいと思っていますので、もうしばらくお待ち下さい。

核内に傷ついたDNAが大量に作られると、当然クロマチンの量が増え、核の色が濃く染まることになります。
また、正常細胞では細かい顆粒状で核一面に均等に分布していたクロマチンが、ではごつごつとした大きな塊になったり、べったりと塗りたくったようになって、分布も不均等になります。
核内には、ヘマトキシリンに染色されない物質も増えるので、顕微鏡のピントをずらすと立体的に見えるようになります。
また、中味が増えたぶんだけ核は肥大し、まともでない成分が増えたために、核の形ちは不整になります。
核小体といって、核の中の化学的成分の密度が高くなったときみられる塊が、良性細胞にある場合よりも、大きく形も不整になって赤く染まって(これは、ヘマトキシリンでない別の色素の色です)見えることもあります。。

肥大化する核とは逆に、細胞質は、DNAの的確な転写による合成が行われなくなるので、適切な分化をしなくなり一般に小さくなります。
良性悪性の鑑別や、悪性度の判断で重要なポイントとなるものに「N/C比」というのがあります。
核(nucleus)と細胞質(cytoplasm)の比率を、両方の英語の頭文字をとって呼んでいるもので、N/C比が高い、低いという言い方をします。
分化度の高い癌=高分化癌(細胞質がそれなりの分化をしている)では、N/C比はわりに低く、細胞の大きさもそれなりにあります。場合によっては、本来の細胞とはまったく違ったものへ分化してしまうこともありますが、大抵はもとの細胞の形態を残しています
分化度の低い癌=低分化癌では、傷ついたDNAが核内にたまって核は大きく肥大しているにもかかわらず、核に細胞質を作るだけの能力が無くなってきてしまっているので、細胞質は少ししかなく、つまりN/C比は高くなります。
未分化癌と呼ばれるものでは、もともと分裂する能力のある幼若な(小さくってN/C比の高い、ほとんど分化していない)細胞が、どんどん増えていってしまいます。
癌と良性腫瘍の関係については、このあと書きますが、一般に、低分化な癌ほど、ばらばらになりやすく、すなわち転移もしやすく、手強い相手となります。

あまりうまく説明出来たとも思っていませんが、「細胞をみただけで癌と判断できる」ことが、わかっていただけたでしょうか??



キーワードひとこと
クロマチンヘマトキシリンの色素で、青紫色にそまる。DNAと蛋白質の集合体。
癌化による核の変化クロマチンは、増量、粗大化、濃染化、不均等分布になる。中味が増えて、肥大化し立体的になる。
形も不整になり大きな核小体をともなう場合もある
N/C比核/細胞質比。核の割合が多い場合をN/C比が高いという。一般に悪性度の高いものほどN/C比も高い。
癌化による細胞質の変化高分化癌ほど細胞質は大きく残っていて、性質ももとの細胞と近い。未分化癌ではほとんど無い。



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