クラス分類のまとめ・つづき



*** クラス II ***


やっとやっと(予定外というか、予想通りというか、、、やっぱり年越ししてしまいました^ ^;;;スミマセン)、クラスII に入ります。

クラスII というのは、基本的にはなんの心配もない状態です。
もちろん癌の心配はないですし、指示された通りの期間をおいて、きちんと検診を行いさえすればいいものなので、クラスI 同様、特に詳しい説明を必要としないんじゃないかな、と思っていました。

だから、細胞の見え方を組織図と対比して描いてきた前の方のページでも、さらっと軽くふれただけで具体的な説明をしないできました。
たぶん多くの医療機関でも「クラスII だから心配ないです。」と説明されているはずだし、中には I だの、II だのと区別をつけることなくひとくくりに「陰性ですよ」と言われるだけの所も多いはずです。
にもかかわらず、このHPを始めて以来、私の所へ頂いたメールの中には

クラスI だと1年後の定期検診なのに、なぜクラスIIだと、半年後と言われてしまうの??」

という主旨のものがいくつもありました。
言われて初めて気がついたのですが、全くなにも問題なしの「年1回の定期検診」と、ほんのちょびっとだけど*念のため*の検査が必要ですの「半年後の検診」では、どこがどう念のためなのか分からなければ、たしかに心配の度合が違ってくるのでしょうね。
検査をする私たちの立場からは(というか、少なくとも私にとっては正直言って、、、)半年後だって1年だって、大して変わらないんじゃないの?と思う気持ちもあったんです。すみません。
でも、なぜクラスII がつくのか、どういう時に半年後(もしくはそれ以外の指示)がつくのかをきちんと知らせることなく、「定期検診でない」指示を書くのは、確かに不親切です。
「もしかしたら、なにか、、、??」と不安を感じながらの半年は、「なにもない1年」よりも、きっと長く感じてしまうでしょうし、、、。

ここでは、できるだけ具体的にクラスII で、なぜ「定期検診でない」検査を指示されることがあるのか、説明してみようと思います。


クラスII のほとんどは、何らかの原因で炎症が起きて細胞がそれに影響され変化した状態を指しています。

細菌やウィルスなどが体に入り込むと、それに対する体の防衛反応として沢山の血液が集まってきて、そのなかに含まれる遊走細胞がこれらの異物を叩きにかかります。
左の絵で、扁平上皮細胞に群がる小さな細胞が、この、免疫系の担い手の遊走細胞です。
絵では、核が複数のもの単数のもの、大きめのもの、細胞質に色のついているもの、などなど描きわけたつもりですが、よくわからないかもしれません。
また、免疫系にはいろいろなパターンや手順があって、詳しく書こうとするとキリがないので、ここでは遊走細胞にもいろいろな種類がある、ということだけ見ていただければと思います。
前にも同じことを書きましたが、これらの遊走細胞は肝心の異物のみならず、周辺の細胞にまで巻添えをくらわせて、ある程度破壊してしまいます。
そして、破壊された組織を再生するために、細胞の分裂は通常よりも多くなり、つぎつぎ分化していきます。
このときの細胞を見ると、分裂も分化も盛んに行われていることを反映して、正常のものよりも核が肥大し、また、クロマチンも多少増えて見えることがあります。
主に、この核肥大があることが クラス II と診断される原因になります。
核内のDNAが活動期にあるときあらわれる、核小体とよばれる赤い球体がみられることもあり、さらには修復細胞とか、再生上皮と呼ばれる特殊な細胞が現われることもあります。
修復細胞は、破壊され欠損してしまった部分を大急ぎでふさいでおく為の、天然絆創膏のような細胞で、大きめで薄くて、急いで作るために核には肥大がある細胞です。
癌細胞とまぎらわしいくらいに、核の大きく核小体の目立つ細胞になることもありますが、クロマチンの所見はおとなしく、大抵は区別がつきます。
これらの、通常よりもやや核が肥大していたり、核所見の強い細胞がみられた場合に、クラスは II と判定されます。
炎症の影響というのは当然腺細胞にもあって、同じように核が肥大したり、分裂が増えて大きめの集塊を作ったりするのですが、ここではその絵は省きました。

さて、こういった炎症の原因になるのは、たいていは感染症によるものです。
ちょっと細かい説明になりすぎるかな、とも思ったのですが、細胞診ではこんなこともわかるんだよ、という具体例のつもりで、主だったものを取り上げて説明してみます。
子宮は外部とじかにつながっている臓器ですからさまざまな感染症にかかる可能性があり、ここにあげてあるのは、そのほんの一部なのですが、まあ、代表的なものばかりです。

一番上の
トリコモナス 、というのは原虫類、わかりやすくいえばアメーバの仲間です。
細胞診では、 薄緑色の細胞質と三日月ににた小さな核、赤い細かい顆粒が確認できます。(赤い細かい顆粒は、この写真でははっきりしませんが。)
トリコモナスに感染すると、かなり強い炎症が起きて、特に好中球と呼ばれる、急性炎症のときに わー!っと集まってくる遊走細胞が沢山出現します。
好中球が、トリコモナスにやられている細胞の上に集まってキャノンボールと呼ばれる固まりを作っていることもあります。(ただし、キャノンボールはトリコモナスに特異的なものではありません。)
トリコモナスの繁殖に伴いちつ内のPHが変化する(ちつのPHを酸性に保っている善玉菌、デーデルランかん菌はトリコモナスと共存できない)ため、雑菌が増え、また、トリコモナスが食いちぎった細胞のかけらなども沢山出現して、背景の汚い標本になります。
トリコモナス自体は薬で治るものなので、ちゃんと治療すればいいのですが、この、背景の汚さ、というのが癌検診では問題になります。
別にトリコモナスに限ったことでは無いのですが、炎症が強いと、癌細胞を見つけるのに色々と邪魔が入ってしまいます。
前述の修復細胞に背景が汚い状態が加わったり、閉経期に入っている人でホルモンが少なくなり細胞全体が萎縮してしまったところに、強い炎症が加わってN/Cの高い細胞がぞろぞろ出てしまってたり、、、。
または、遊走細胞の数が多くなりすぎて、上皮細胞を覆い尽くしてしまっている場合。などなど。

そんな所に、小型の癌細胞、特に上皮内癌あたりがパラパラと少数だけ出現していたりすると、大変区別しづらく、また見つけにくいのです。
N/Cが多少高くても、クロマチンの増量は無いなど核の所見がおとなしく、トリコモナスによる炎症性変化だとはっきり分かる細胞だけなら、クラスはII がついても、治療後の再検を指示されることはほとんどなく、1年後の定期検診と言われるでしょう。(日本母性保護産婦人科医会の発行・平成9年11月「子宮癌検診の手引き」より)
ただし、細胞が融解してしまっていたり、クロマチンが変性してしまって粗く増量して見えてしまったりするなど、紛らわしい細胞があった場合は、おなじクラスII でも消炎治療後の再検とか、半年後の再検などを言い渡されることがあると思います。
いずれにせよ、トリコモナスはきちんと治療することが必要です。
治療さえきちんと行われれば、クラスは I にもどり、定期検診の指示に変わるはずです。


カンジダ は真菌、酵母の仲間で、ちつ内に繁殖する真菌の80%を占めています。
カビがはえてしまった状態であり、ちつ炎を伴ってひどいかゆみのあることもありますが、特になんの症状もなく、細胞像にもほとんど変化の見られない場合も多いです。
オレンジ色にそまった芽胞や糸状に分枝した仮性菌糸が特徴で、これらにはパパニコロウ染色では染まらない固い膜があり、細胞質をバックにすると、周りがくるんと抜けてみえます。
顕微鏡ならぬ、虫眼鏡で拡大したところと描いてみましたが、わかりますか?

ガルドネレラの方は細菌の一種です。
ちつ内には他にもいろんな雑菌が繁殖することがあるんですが、ガルドネレラは細胞質の上にくっついて雲のような固まりをつくり、これをclue cell と言って他の細菌と区別しています。
<<私の職場には、このガルドネレラを自分の血液を餌にして飼ってた(培養していた)人がいるんで、ちょっとはずせないかな、と思い、絵にしてみました、、、。(^ ^)

カンジダもガルドネレラも、炎症を伴って核が肥大していたりするとクラスII をつけることもあります。
その場合の指示は、トリコモナスと同様で消炎治療後の再検であったり、半年後の再検であったりするでしょう。
ただ、トリコモナスのように細胞が断片化してしまうことはなく、背景が汚くなることはまずありませんから、たとえII がついても大抵の場合は定期検診ですむと思います。
もちろん、疾患の治療は必要ですから、きちんと産婦人科へ通わなければいけないことに変わりはありませんが。
どうして定期検診でないのか疑問に思ったら、かならず主治医に聞いて下さい。


クラミジアは、偏性細胞内寄生性、つまり生き物の細胞の中でしか生きられず人工倍地では育たない、細菌とはちょっと違う不思議な病原体です。
古代エジプトにも記録が残ってるという古くからある病気、トラコーマ(まぶたの内側にいわゆる結膜炎をおこす)と同じ病原体なのですが、トラコーマの方が先進国ではほとんど姿を消したのに対し、性器に感染するタイプのものはSTD(sexually transmitted disease=性行為感染症)として猛烈な勢いで蔓延しているようです。
アメリカでは、風邪の次に多い感染症として有名ですし、日本でも抗体のある(つまり過去にかかったことのある)人は、成人女性の20%にもなる、なんて資料もあります。
主な症状としては、男性では尿道炎を起こし、女性の場合は、子宮頚管炎、内膜炎、卵管炎などを起こすことで、不妊の原因になることもあります。
新生児への感染も心配され、この場合は肺炎や結膜炎などを起こします。
細胞診で見た場合、頚管腺や幼若な化生細胞などの薄い細胞質の中に入り込み、封入体と呼ばれる泡状の固まりをつくっています。(かならずしも封入体があるわけではなく、これが細胞診での発見を難しくしているのですが。)
クラミジアの封入体はちょっと見たところ粘液が染色されたものとにているのですが、クラミジアの方には小さな砂粒のような顆粒が散らばっていて、良く見れば区別できます。ただし、実際には顕微鏡で見ただけでははっきりしないことの方が多いです。
その場合は抗原抗体反応をつかってクラミジアにだけ反応するような染色を行うこともあり、そうすることによってはっきり感染の有無がわかります。
ただし、細胞診で疑わしいと報告があった場合はさらにこのような手法を使ってまで細胞診での確認をとるのではなく、血清検査を行って確認する方が一般的かもしれません。
細胞所見は炎症を伴って核が肥大していることが多く、クラスII になることが多いと思いますが、薬が良く効くので治療すればそれに伴いクラスも I になるはずです。


さて、感染症の最後は ヘルペスです。
ヘルペスウィルスに感染した細胞は、細胞どうしが融合して、核は多核でのっぺりとしたスリガラス様といわれる独特の形態を示します。
核内にさらに封入体が出来て巨大な核小体のように見えたり、融合して巨大になった細胞が癌細胞に似てみえることもあり必ずクラスII がつくと思いますが、良悪性の区別は細胞診では比較的簡単にわかります。
ヘルペス属のウィルスには沢山の種類があって、たとえば水ぼうそうや、赤ちゃんの初めての高熱の原因として有名な突発生発疹なども、みんなヘルペス属の仲間のウィルスです。

一般的には性器に水泡をつくるのは単純ヘルペス2型だといわれ、同じ種類でも1型の方は派手な口内炎をおこすウィルスだ、とされているのですが、1も2も90%もの人が不顕性感染をしているという報告もあり、性器ヘルペスがほんとに2型なのか、水泡ができた場所だけで1か2かを判断することができるのか、実際にはわからないことも多いようです。
ヘルペス属のウィルスの特徴は、水泡や熱、局所の痛みなどが治癒してもウィルスが体の中に居残り続けて、抵抗力のおちたときなどに、再び活動を始めることです。
普通、ウィルスに感染して治癒すると体には終生免疫ができるはずなのに、それができずに細胞のなかにウィルスが潜んでしまうわけです。
神経細胞に潜んでいることが多く、年齢のある程度いった方がヘルペスをわずらって大変痛い思いをした、、、という話しは、身のまわりでもよく耳にすることでしょう。
これは、子供の頃にかかった水ぼうそうのウィルスが、年をとって、抵抗力が無くなってきたのをみはからって、別の形で悪さをしようと活動をはじめたものなのです。
また、単純ヘルペスの方も、それぞれ口や性器に何度もくりかえして再発したりすることがあります。
再発の原因としてはストレスや疲労、日光、寒さなどなどさまざまで、しばしば長引くこともある反面、まったく再発しない人というのもいる、というから、不思議なウィルスですね。

ヘルペスの性器感染とSTD、さらには子宮頚部扁平上皮癌の原因となるHPV(Human papilloma virus)との間には、歴史的につながりがあります。
これらのこと、特にHPVについては次回詳しく書くつもりでいるので、ウィルスについてもそのときにもう少し詳しくふれるつもりでします。
ほんとは今回、ウィルスについてある程度まとめるつもりでいたのですが、、、これ以上アップを遅らせたくなかったんで、見送ってしまいました、、、。


クラス II がつくものとしては、この他にも老人性のちつ炎や、異物の混入による刺激で起るもの、などがあります。
これらは原因がはっきりしているので、ほとんどの場合はクラス II がついても定期検診でよい、と指示されると思います。
問題になるのは、強い変性が加わってしまって細胞所見が読み切れない場合や、クロマチンにやや増量があり核も肥大しているが、クラス III をつけるほどではない、といった、境界線上にある細胞です。
この場合は、その変化の程度に応じて、ただちに再検や、3カ月後、半年後の再検、という指示がでるでしょう。
また、細胞の採取量が少なくて決めてになる細胞はみつからない場合、という時にも クラス II だがただちに再検、ということになります。
このあたりのことに関しては、個人個人で様々な場合があり、対応の仕方もいろいろですから、とにかく納得のいくまで主治医に説明をしてもらうしかないでしょう。





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