音戸山通信 プロヴァンス紀行 2003春−7

 

 第五日目 カルカソンヌ  3月30日

  フランス地図(帝国書院)

 カルカソンヌはアヴィニョンから西におよそ250kmほど

 今回の旅行にどうしても行きたかった都市に中世城塞都市カルカソンヌがある。ホテルのあるアヴィニョンから西に250km、2時間半ほどかかる。母と子供たちはTGVでマルセイユに出かけ、夫婦と娘とでラングドッグ州まで出かけることになった。ひたすら高速道路を走る旅である。

 

 西から望むカルカソンヌ ラ・シテ(コンタル城周辺)

 カルカソンヌは古くは5〜7世紀ごろの築城に始まり、13世紀までにほとんどの部分ができあがった。19世紀の建築家ヴィオレ・ル・デュク(Viollet le Duc)の監修で復元工事が行われ、現在のように整備されるのに半世紀を費やした。明治ごろの話しである。さすがに文化や歴史を重んじる国だけのことはある。

 ラ・シテ(La Cite)案内図

 全体は東西2km、南北4kmほどで、2重の城壁に囲まれる。西にオード川が流れ、切り立ったところに中心となる城が位置している。とにかく塔が多い。50本くらいはあるだろう。時代によって形が異なるようだ。城壁の内部は生活もあるが、レストランや土産物屋も多く、たいへんな観光地の賑わいである。

  東門(Porto Narbonnaise)

  美しい2重城壁の間の路 古い部分は8〜9世紀

  12〜3世紀のころに出来上がった部分

 内部は曲がりくねった細い路でくねくねと城に向かうのであるが、城壁の間の空間がとても整斉としていて、散策にはもってこいの路だ。犬を連れた多くの粋な人々が散策を楽しんでいる。ややだらしない観光客があふれる内部とは対照的だ。

  

 中心にあるコムタル城(Chateau Comtal)の堀と門、内部

 城の内部は見学料金がかかり、ガイドに従って行動する。ここから南の先にある劇場のあたりまで城壁の建物の中を歩くので、眺めがとてもいい。かなり高い空中廊をさまざまな塔の内部や重なりを眺めて楽しみながら渡り歩く。屋根は木造で、構造が面白い。

 城の西側を出たあたり

 西側の町を眺める 

 劇場として利用されている 塔が照明塔となっている

 城はどこでも、高いところ低いところをくねくねと巡回することで様々な空間を体験でき、とにかく面白い。わくわくする興奮状態の連続で、ちょっとしたドリームランド。しかも攻撃や防御の仕掛けがあちこちにちりばまれているのだから、子供に帰ったような興奮を覚えてしまう。しかもひとつひとつの塔や城壁の形、動きが本当に美しい。

   甘物屋

 城壁内部の土産物屋やレストランもまずまず楽しめる。中には伝統的な雰囲気をかもし出せる類いのものもあり、素朴な姿が好ましい。料理としては豆を煮込んだカッスラーがあったので、注文してみた。(ピザの方がよかった...。)

  北からの眺め もっとも古い部分のようだ

 中よりも外側からの眺めがよい。オード川をわたる新橋と旧橋とがあり、旧橋からの眺め(冒頭の写真)がいい。川もなかなか好ましく、水遊びをする子供たちの姿が印象的だった。この城壁の脚元にはたくさんの投光器が並んでいたから、よく写真で見るライトアップされた城壁の夜景がいいのだろう。しかし、別路マルセイユに発った3人とアヴィニョンで合流して晩ご飯を食べたいので、4時過ぎには出発したかった。

  城の門あたりでスケッチ

 城内の街のスケッチ

 この辺でまた下手なスケッチを。アヴィニョンは暖かだったのに、ラングドックは雨模様で寒い。城の門の辺りを描いていたが、鼻がむずむずして気が乗らないスケッチとなってしまった。女房と娘が買い物を楽しんでいるうちにと描いていたが、なかなか戻ってこない。ちょっと陽も出て来たので、ベンチに坐って、今度は目の前の街角を描くことにした。屋根や壁の表情がよかったからね。でも、目測を過って、足元がかけなかったのが残念。

 カマルグの落日

 エグ・モルト(Aigues-Mortes)の城壁

 夕方になろうとする時間帯をひたすらアヴィニョン目差して走ったが、途中から陽が差しはじめた。そこへエグ・モルト、サン・ジルなどという馴染みの地名の標識が出てくる。いずれも時間の都合であきらめた地であったが、えい、とハンドルを切って、エグ・モルトへの道に降りた。

 エグ・モルトは水郷地帯カマルグ地方の入り口のようなところで、ここもやはり四角に囲われた城壁の街である。まっすぐな国道をひたすら飛ばして行くのだが、すぐにロータリー交差点に来るので、スピードに乗り切れない。でも、とても雰囲気のよさそうな平らな地を夕日を気にしながら走った。やがて、エグ.モルトのシンボルであるコンスタンス塔が見えて来た。街に入る前に、川を渡る大きな橋で感動的な夕日を撮影。その夕日の残り色を映す城壁も実に不思議な印象だった。城壁の周囲は、まるで開発途中の工事現場 とでもいうような殺伐とした風景だ。市内は落ち着いた町並みで、できればゆっくり散歩してみたい街であった。

(文と写真 さのはるひと)