音戸山通信 2003/12/10

照明をつくってみました

 今年は何だか忙しくてちっとも心にゆとりがありません。京都弁の「せわしな」というところかな?でも実際に暇がないということ以上に、積極的にゆとりを生む心のはたらきが鈍っているということなのかもしれません。それで、せねばならない他の仕事を放って、ちょっとこんなページを描いて、みなさんに季節のご挨拶代わりに送ることにしました。

書斎の照明

 ここで紹介するのは、京都市内にあるS先生のマンションのお部屋です。ずいぶん長いことかかって、内装工事をやってきました。まだ完璧にできあがっていないのですが、このプロジェクトについてはまた後日、あらためて紹介することにいたしましょう。ここでは、最近ようやく点灯した二つの照明について紹介しておきます。

同上

 まず、書斎というのか、アトリエ、仕事場の机を照らすペンダント。秋田杉の天井板の残りを使ってこしらえてみました。写真ではよくわかりませんが、2枚の穴のあいた仕切り板のほぞに紙をはさむ板が外からはめ込まれています。紙はタイの手漉きの厚い紙を糊張りして腰を強くしたものを使っています。縁を三角に折り曲げて補強しています。ランプはあまり熱くならない蛍光球(電球色60W相当3灯)を使っています。同じ電球色でも、メーカーによって色合いが違いますね。写真では見えませんが、細いワイヤーで釣り下げています。コードがうまく処理できなくて悩んでいたのですが、現場でくねくねと巻いて下げてみたら、案外よかったように思います。天井に設けた太い配線収納棹にレセプトが2つありますが、変ですね。いずれ、他のデザインに変えたく思います。

和室の照明(こもの)

 もう一つ、最近、こものさんがつくった照明を和室に下げてみました。以前に僕がつくったもの(60W相当2〜4灯)があったのですが、寝ながらひもを引いて消せないと、使い勝手が悪いようですし、どうも、苦労した割に部屋に合わないような気がして、はずしました。現在、堺で新築したO邸にぶら下がっています。今度のこものさんの方が一回り小振り(40W相当2灯)です。

以前のもの(上から撮影)

 秋田杉があまり残っていなかったので、お風呂に使った青森ヒバのフローリング材を薄く削って芯にしています。斜に風車に入れて、穴を上下にずらしていますね。紙は先のものと同じものを使っています。紙は僕のものもこものさんが加工、製作してくれました。

和室照明(こもの)

 僕ならきっと風車をまっすぐにして、やはりほぞを付けて紙押え板を外からはめこんだデザインに統一するところですが、さすがに同じ手は使いませんね。あえて穴をずらしたところに、女性らしい可愛いい感じが出ています。40W相当の蛍光ボールをはじめて使いましたが、細長い見えは感心しませんでした。写真ではわかりませんが、ヒバを杉の底板に自分で削った竹釘で止めています。これが案外うまく行きますので、これから使って行こうと思います。中央に垂れているのがスイッチの釣り紐ですが、美しくないので、何か別の紐を探します。でも、こものさん、第一作として、なかなかのものでした。次のデザインを考えている様ですので、期待していましょう。僕も、ダイニングテーブルを照らす杉板だけの箱照明を制作中ですが、最後の組み立てのところで夏から足踏み状態です。早く作って、お見せしなくては。

 照明は椅子と同様、自分でつくると楽しいものです。椅子ははじめて腰掛ける瞬間、照明ははじめて点灯する瞬間、ともに他には得難いよろこびがあります。(よろこびが得られない場合もあります。)その瞬間は、それまでのスケッチやイメージを超えることがしばしばだからです。その点は、空間をつくって行くときにも同様です。飾り照明は、意外に簡単で、それ自体が眺められる楽しいものですが、機能する照明は、そう簡単ではありません。意外に苦労します。この点も、建築や空間と同様ですね。機能するだけの単なる道具なら、苦労しないで済むのに、僕たちはどうして苦労するものをわざわざしようとするんでしょうね?

(文と写真 さのはるひと)