音戸山通信第21話 00/05/28

稲荷山の住宅(2)

とても楽しく、決してあわてないペースで進んでいる稲荷山の住宅の続編です。施主家族は基本的に前回の第2案(妻入り大屋根案)が気に入り、ご主人は早くもチェコ旅行で入口ドアの把手(ドイツ製)を購入して来られた。僕の方は安易に出来上がった先の案が全体としてどうも腑に落ちないので、主に収納という点で改変を行い、主要スパンを2間とし、平面を簡略化してみた。ために、お気に入りの西面の2階展望テラスはなくなる運命に。(残念ではあるけれども、防水やら法規制などを考えると、ずっと楽になった。)結局なんだか普通の家のような間取りになったのだが...。

以下、スケッチをもとに現段階の案を説明しましょう。

                             1F 平面

基本的にはあまり変わっていないが、主要スパンを西(左)から2間、2間、1.5間、1.5間という割付けに変更。主にキッチンの面積を増し、階段を楽にするため。勝手口をキッチンに付けて欲しいとの要求に応えて、食堂北面にドアを付けている。下屋とは言え、軒高が近くなっているので、2階家部分の水平力を食堂のコーナーで受けてやりたいところ。出窓の隅の2本の柱同志を斜めの板壁で繋いでやればいいかもしれない。(図には描いていない)

階段はできればオープンとし、巾もあと30cm増やして本等をおけるスペースを取ってあげたい。中心に丸太柱(また株付き?)をもって来る。階段下のスペースはキッチン収納に。食堂のベンチは作り付けとし、とくに収納は考えない。(収納のために払う犠牲が大きいというのが理由。)ただ、窓は低めにして、上部に本やカセットテープ等を置く棚にしようということに。

土間の東側にも収納を。寝室がちょっと狭くなった。(8帖+押し入れ2間)ちょっとピアノは無理かな。西側に風を通す窓を。南にはテラスを。WCは便器を手前側に移動。洗濯機は2槽式でないと落ちが悪いとのこと(水が滴り落ちるね)、隠さなくてもよい、残り湯を使う、となると、ここは木床はやめてタイルにしよう。すぐ腐っちまうから。風呂にはジャロジーの出窓が生きる。

                               2F 平面

ここではちょっと先行して吹抜けをやめた案を載せている。(施主にはまだ伝えていない。)現段階ではまだ前回同様、吹抜けが生きている。巾が1.5間の吹抜けは岩倉でも試みたが、ちょっと狭い。ましてやここではリビングルームを二つに分けてしまう。土間からの連続した登り梁で透かした天井にしてもいいのだが、ここはあっさり吹抜けをやめて、町家のように、大引天井をしっかり見せたらよいのではないかというわけだ。吹抜けとはいかないまでも、斜めに昇っていく天井を食堂側では見せられる。また、土間を音戸山の家や堺の家のように半外部のコートとせず、町家や農家のような内部的な土間空間にしてみようかと思う。気密性をたもてるか、洗濯物を干せるかなどの問題があるけれども。(平面図ではまだ前のまま。次回にしよう。)

2階は東側に納戸を付けて、ご主人の作業部屋(書斎)、西側に畳の6帖としている。中央にロフトを設けてそこに寝てみたいという娘さんの願望も分かるが、大抵の場合、そう長続きしない。もともとそういう小屋裏空間は人が寝るに相応しい場所ではないのだ。どうも暑苦しい空気が溜まるせいかもしれない。(わが家の子供たちはよく辛抱している。)それで、あまり薦めない。たまにはそんなところに寝てみるのも一興だけれどもね。

                                断面

吹抜けをやめたら例の大黒柱の迫力は半減するけれども、階段に接しているからちょっとだけ見える。屋根の勾配は、風致地区でもあって、日本がわら(桟がわら)の4.5寸勾配としている。もちろん、通気工法を採る。土間上部のみはガラス屋根。一旦、瓦の屋根を切ってから、下屋としてつけることで、雨水の流れを軽減している。それで水圧も下がり、漏水の危険性もちょっとは下がる。また、汚れも押さえられる。勾配も緩くしないと怖くて歩けない。1年に1、2回は簡単に掃除してやらないとね。(これは僕がやらないといけないだろう。)

室内側は昇り梁を化粧にして見せる。上部には換気用のジャロジーをつける。(北側のみ)2階床は杉厚板を2重に引き、間に15mmほどの隙間をつくり、電気配線用のスペースとするとともに、吸音材を詰めて階下に伝わる振動を少しやわらげる。畳はその上に引くか、あるいは固定的に考えて、上の板を無しにする。できれば、2階は畳がありがたい。なんといってもうるさくないからね。

床下は、現在の敷地の土が泥っぽいこと、盛り土地盤に重なることなどから、ベタ基礎様のコンクリート土間床を考える。床高はほんのちょっと高めにしようと思う。(何とか床下にもぐれるように。実際には根絡み貫のために通れないが。)

 

                          南立面

                          西立面

立面では、モルタルなどの塗り面に、荒板を膨らみを持たせて張った農家調のものを基調としている。これにはいろいろなバリエーションが考えられるので、模型を作って決めたい。栗材などがいいが、高いだろうな。外壁も通気工法がいい。

外構はまだイメージが掴めていないが、土間へのアプローチはレンガをまばらに引き、他は芝生がいいのだが。まあ、草混じりの芝ということに。塀は簡単な木製フェンスに生垣(ばらがいいななどと言い合っています)。なるべく素朴な感じにしたいものです。

(さのはるひと)