戦いを終えて

実は今大会はいつもほど勝ちたいという意気込みがあまりなかった。
日々の疲れがたまっていたり、前々日の役百記念試合での牌の流れの不調さも手伝って、気力が萎えていたようだ。

そんな感じで始まった初戦、思ったとおり手が重い。風さん、桃さんが着々と手を進めているのにどうしても遅れてしまう。
特に風さんが下に座ったときはポンでツモをとばされる事が多く、牌をしぼることでいっぱいいっぱいになる。
そして風さんの鳴きでツモ数が増える、風さんの下家(この場合は桃さん)に注意をはらう展開になる。
依存さんは私と同じでなかなか牌が思うように来ず、苦戦しているようだ。
そして迎えた南1局、私の親。あいかわらず、風さんの仕掛けが早い。
なんとか流れを変えたい私は、聴牌即リーと勝負にでた。リーチドラ1のクソ手である。
手がつまっている風さんは当然、勝負に来る。ところが桃さんもここで動いてきた。
かなりの手が入っていたのであろう。こういう時は上がった者がいっきに流れをつかむ。
逆に打ち込むともう二度とたちあがれない。緊迫した勝負となった。
そんな中、リーチの私はアンコの西をもう一枚ひいてきた。ふだんなら迷う事なく、アンカンである。
しかし、このところの運のなさから、カンしてリンシャンから他家への当たり牌を引いてきてしまうんではないかと一瞬躊躇してしまう。
でも勝負にでたんやからいまさら迷ってどないすんねん、と目をつむりながらカン!
目をあけると5万。みごとツモっていた。しかもカンドラが表裏のってリーチ、リンシャン、ツモ、ドラ3。親ハネである。
ヒゲのサムが流れをつかんだ一瞬であった。
後で再生してみるとあの5万は桃さんの当たり牌でもあった。勘は間違っていなかった。
こうして最初のセットを+50と得点したヒゲのサムは、こりゃいけるやん、と思ってしまう。

翌日、ヒゲのサムは意気揚々とセカンドセットに挑む。
ここで待ち受けるはパルムさんと聖剣さん。なかなか麻雀をやらせてもらえない。
こんなはずじゃない、とまた気持ちがくすぶりだす。
そうした感じで向かえた2試合目の東2局、聖剣さんに二枚捨てていた中をもう一枚持ってきて、小三ホンイツのハネ満をぶち込む。当たるんやったら、先の中であたれーって、思わず叫んでいた。
三元牌がイヤな感じだったので先切りしていて、安心して切った三枚目の中であった。ショックは大きい。3位、ラスと苦いセカンドセットとなった。

3セット目は、スピード狂の千波さんが相手。(少しは年を考えてほしいものだ、ってあまり変わりませんが)
とにかく先行されたらまず、おっつけない。と思っているそばから、親満をツモられる。
私も早くはっていたが、受けをミスって千波さんの上がりにさせてしまった。自分の責任である。まだ2セット目の落込みが尾をひいているようだ。
ところが次局、ドラの發をポンしてすぐつもれる。千波さんが親だけに、このツモは大きい。
まだいけるやん、という気になる。その後、やはり千波さんの足は止まった。
そして向かえた、南3局、私の親。配牌ドラアンコ、なんとしても上がりたい手。苦しい受けだったが、気力でツモあがり、これを物にして試合を決める。
二試合目はなんといってもチビ様がヒーローであった。千波さん31600点、ヒゲのサム31300点、ちびなのん30700点で向かえたオーラス。みごと三色をツモ上がる。
点差を考えたすばらしい和了だった。それに比べて、せっかく發が鳴けたのにむりやりホンイツに走った私のなんとおろかな事か。

王者卓などといわれた第7セットB組(私には4セット目)。
なんの事はない、油断も隙も無い、ダマし合いの卓だ。
1試合目は、出鼻にハネ満、マンガンとツモった私が運良く勝ったが、これはブービーとブービーメーカーを争う二人がたまたま調子が悪かっただけで、常にでかい一発を警戒してのビクビクした戦いだった。
2試合目、やはり思っていたとおりの展開が待っていた。
なかなか手が動かず、ここは我慢の一手と決め込んでいたのに、ついつい喰いタンに色気をだし鳴いたとたんにパルムさんにマンガンをぶち込む。あ〜ナサケナイ。
後は狼に取り囲まれた無抵抗のかわいい羊になるしかなかった。完敗のラスを喰らう。
でもこのセットでもトータルでプラスしてるし、まだ望みはある。と言い聞かす。

ノーガードの殴り合いになるだろうという思いで望んだ最終セット。
ところが始まってみると以外とおとなしい展開となる。しょっぱな、ゴロさんが依存さんに3900、3900と打ち込むが決定的なダメージになっていない。今大会の依存さんはかなり苦労しているようだ。我慢しているのがよく分かる。
この試合もそんな我慢大会のような展開になった。そして最初に我慢しきれなくなったのが、私であった。普段ならダマで上がりを取りに行くところなのにリーチに出てしまう。当然、上がれない。なんとか流れをつかみにいきたいのに、逆に離れていってしまう。
どもこもならん、と思っている内にネットさんに親満をつもられ第一試合は決まってしまった。
この試合、私が上がれたのはオーラス、三位確保のため上がった1000点1回のみであった。
第二試合、さっきの1000点が良かったのか東1局いきなりゴロさんから親満を上がる。
今大会のヒゲのサムはまるで不死鳥のようによみがえる。かなり精神的にダメージの大きい敗戦があるにもかかわらず、次の試合で必ずよみがえるのである。自分でも信じられん。
この一発で場を征した私は、後は牌の流れにのって打っていけば良かった。
こうしてこのセットで+22を得点する。

トータル+84点。先に終わっている雀さんの+85には1点、およばない。
この時点で暫定2位であった。他家の結果待ちとなり、ヌレ鬼卓へ観戦に行く。
最後逆転ツモでトップをもぎとった鬼だったが、その前の間2ピンツモが糸をひくほどヌレ鬼だった。
結局、決勝卓への進出者はこの鬼と大きな2位を二度とった千波さん、そして雀さんと私と決まった。トップは千波さんで私との差は14点。一回トップが取れればどうころぶか分からない。手の内はイヤというほど分かっている千波さんや。まぁ、いつものように打つだけである。意外と緊張感はなかった。

決勝戦の始まる前、国士さんへ一分間の黙祷。気持ちが落着いていく。そして鬼の音頭でいよいよ始まった。
一試合目、起家千波さん、南家ヒゲのサム、西家雀クラブ、北家ヌレンズの鬼。
一局目、南デンデンで千波さんの親流しに成功。と思う間もなく、私の親はダブりーの洗礼をうけてしまう。こりゃきびしいと思った矢先、雀さんが千波さんから親満直撃。すると今度は鬼が雀さんの親を軽く流す。その鬼の親は順番順番と南家の千波さんがさっと流す。皆、南家の役割を全うしている。展開はまったく息のつく間が無い。そして向かえた南一局、今度はさっきのお返しとばかりに千波さんが雀さんから親満和了。この人も私以上に不死鳥である。
この恐怖の親をなんとか南南ドラ1でのりきった私は、だいぶ千波さんに近付いた。
私も上がり出したら止まらない癖があるので、ここから3連チャンして小銭をかせぐ。
3本場は今までおとなしくしていた鬼が急に勃起し雀さんからマンガン直撃する。
雀さんの親は千波さんが私から1000点を取る。この1000点が最後にものをいう事を分かっていたように。オーラス、ヒゲのサム36200点、千波さんとヌレ鬼30100点、雀さん11600点。
この時を待っていたかのように千波さんから早々とリーチがかかる。私も風牌を鳴き応戦体勢に入る。4-7万聴牌で勝負していた12順目、5ピンをつかむ。千波さんはドラの1ピンを早々と切っている。ドラでも1ハン、タンヤオでも1ハン。ましてやドラに固執しない千波さんである。私は2ピンが雀頭にもなっており、2-5ピン本線と読む。そして東風のルールが以前と変わりオーラス流局で終了となる事が頭に浮かぶ。ここは死にの一手、と決断した。そして16順目、千波さんにつもられた。待ちは2-5万だった。400点差でトップを取られた。でも悔しかったが後悔は無かった。まだもう一試合ある。点差は31点。トップを取れば充分逆転できる。なんてったって私は不死鳥やもん。
2試合目。また起家は千波さん、南家ヒゲのサム、西家はヌレ鬼、北家雀さん。
いきなりタン三を鬼から上がる。出足、まったく好調である。私の親は鬼が雀さんから3900を上がりばん回する。次ぎは私がドラをポンさせた責任で雀さんからピンデンをあがる。流れは来ている。千波さんの動きが早くなった。9ピンをポンした後、パラパラと3フーロ。ドラも無さそうである。こういう時は聴牌即リー。トップだからと遠慮してたら運があっという間に逃げてしまう。思わく通り、1000、2000のツモ。まだまだ来ている。南一局、千波さんの親、6順目で鬼から三暗中の6400をあがる。四暗刻まで伸びそうな手であったが迷う事なくさっとロンボタンを押す。南二局の私の親、雀さんが三暗トイトイを鬼からあがる。親だっただけにつもられたらと思うとゾッとする。南三局、親の鬼はリーチと出てくる。流れは鬼に有らずだが、親だけに警戒してしまう。鬼の現物で千波さんに1000点の打ち込み。安くてよかった。
そしていよいよオーラス。ダンラスの鬼は当然のように国士である。私は9順目2-5ソウのピンフを聴牌。鬼の国士が恐く無い訳ではなかったが思い切って老頭牌を切っていく。早く四枚切れてしまえという思いを込めて。12順目、親の雀さんからリーチがかかる。いきなり初牌の東をつかむ。あたったらどうしようとか悩む段階では無い。ツモ切りする。そして雀さんが5ソウを持ってきてくれた。
ヒゲのサム+40のトップ。千波さん+1の2位。
すぐに千波さんから8点差だと声がかかった。

我が阪神は今年、18年ぶりに優勝したが、私はこの役ラン大会で実に19大会ぶりに優勝することができた。
「あ〜しんどかった」

                  ---------完---------