負けるもんか、こんなオヤジになめられてたまるか。 目をこれでもかってくらい見開いて、おっさんに低く静かに言い放った。 ジャンパーめくっていいですか? そのとき初めておっさんの顔を確認。酔っ払いだ。顔が赤い。酒臭ぇ。 おっさん、気まずそうに私の膝からジャンパーをのける。 周囲の人は、何があったのかわからず「???」といった状態。 それまでうつむいてた私は顔を上げて、 おっさんの顔をキっとにらみつけていた。ずっとずっと。 そしてひたすら考えていた。 このおっさん、どこで降りるんだろう。 あわせて降りて捕まえてつきだそうか。 あぁ、でも私が降りるときに降りなかったら後が面倒だなぁ。 その前に、ダッシュで逃げられやしないだろうか。 あ、でも、走って逃げたら罪を認めるってことだよな。追いかけようか。 おっさんはというと、ちらっと私の顔を見た後は、 社内吊り広告を見てるふりして、視線を宙に泳がせている。 え〜、次はぁ〜新宿〜、新宿でございます〜。・・・ おっさんの体がぴくっと動いた。私はおっさんの目を見た。おっさんと目があった。苦笑いしながらおっさんの口が開いた。 降りよっか、お嬢ちゃん。 (え!なに!?自首してくれるの!?うわぁ案外ワケないじゃん。) 私はちょっと声をやわらげて、じゃぁ、行くとこ行きましょうか(にこにこぉ)と言いながら、 おっさんが着ていた紫色のトレーナーをぐわしっとつかんだ。
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