おしまい

あとがき

 数多い行事の中で、おとなも子供も楽しみな行事といったら、やはり、お正月ではないでしょうか。私の母は暮になるときまってせともの屋へ出かけ、皿や小鉢、飯茶わん等を買っていたようでした。そして、乾物屋へ寄り、お菓子屋へ寄り、多くの店をまわって買物を済ませ家に戻りました。多くの店に寄ったのですから、私の手にもいくつか荷物を持たされたと思いますが、たくさん買物ができたのがうれしかったのか、やってくる正月に心がはずむからなのか楽しかったことを思い出します。

 おせち料理を作るそばで出来上がった料理を重箱に詰めるのが私の仕事でした。おかざりは父が買いに行くことに決まっていたようです。仕事場をきれいにかたづけ、おそなえ餅を飾りつけると「お正月さんいつでもどうぞ」といった感じでした。

 最近はもちばかりでなくおせち料理までがデパートやスーパーマーケットで売られ何となく淋しい気持ちがします。今、我家では黒豆、田作り、きんとんなどはずっと手作りしています。そしてなべをかきまわしている時、母の顔、父の顔、家族揃ってゲームやトランプに興じたあの頃が頭の中に浮かんでくるのです。

 子供たち遊びを見ていると家族揃って楽しむ遊びから高額なゲームウオッチやテレビゲームのような一人遊び的なものに変わってきているような気がします。

 わらべうたの中に「お正月はええもんだ」というのがありますが、その中に「白い白いまま食べて」という歌詞が出てきます。この歌詞は今の生活の中では不思議にさえ思えます。満ち足りた毎日を過ごす子供達に昔の様子、あそびと一緒にこんなことも話してあげたいと思います。そして心に残るお正月を育ててあげたいと思います。

 うれしいお正月、たのしいお正月を思い出してみました。おもちの話なども加えこたつを囲んで話の輪を広げてみませんか。

−1983年 1月−


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