<時の車輪> シリーズ
ロバート・ジョーダン
The Wheel of Time (R); Robert Jordan
ハヤカワ文庫FTにて鳴り物入りで始まった異世界ファンタジー・シリーズ。FTシリーズで背表紙の色が違うのは、このシリーズだけです。これを手にした時、私はハヤカワ文庫FTの背表紙がまた変わったのかなと思いました。
完結まで50巻くらいかかるそうです。1999年1月時点で9冊目まで出ています。
それで肝心の内容ですが、ある異世界の片田舎に住む若者たちが数奇な運命に導かれて世界中を旅してまわるという黄金パターンで始まります。そして、結末は………まだ出版されていないので分かりません。大まかなストーリーは、異世界ファンタジーの黄金パターンなので、特に述べることはないでしょう。
肝心なのは、どこが面白いかです。
まず、最初にあげるところは、キャラクターが個性的だという点です。個性的な魅力あるキャラクターというのは、読み物に欠かせない要素です。それでも、この <時の車輪> シリーズの場合は、それぞのキャラクターとの関係で個性的なところと、それを存分に引き出している詳細な内面描写が素晴らしいのです。
人間は、それぞれの考え方や感情を持っています。それは、外面に現れる場合もあれば、内に秘めているだけという場合もあるでしょう。同じ状況におかれても、人それぞれ別の行動をとるかもしれませんが、内面で考えていることは同じかもしれません。また、逆に同じ行動をとっても考えていることは違うかもしれません。それをロバート・ジョーダンは鋭く描いていきます。
人との出会いや別れが大きな運命の渦になってとして、歴史を動かしていきます(このシリーズでは、その運命の渦の中心となる人物を <歴史の織り人> と呼んでいます)。人と人との関係が歴史を作り、時代を変えていくのです。これが、この作品の根底に流れるテーマとなっています。
そして次にあげるのは、描写手法です。ロバート・ジョーダンは、このシリーズを始めるにあたって、主人公の性格付けと描写のやり方をそれまで書いてきた作品と意図的に変えたそうです。主人公の性格については置いといて、描写の方針を『できるだけ詳細に書く』と作者は決めました。確かに心情描写と情景描写は、こと細かく描いています。ですが、この作品の中で(おそらく意図的に)ほとんど説明されていない事柄があります。主人公たちが活躍する舞台となる世界。その世界の描写があまりにもなおざりなのです。
例えば、<時の車輪> の世界を織り成す重要なキーワードがいくつもあります。絶対力、(偽の)竜王、闇王、異能者(アエズ・セダーイ)、ヴァリーアの角笛、護衛士、伝説の時代、……などなど。これらは、(少なくとも最初に出てきた時に)ほとんど説明がなされていません。物語を読み進めるうちの徐々に分かってくるという、描写方法を取っています。それが、一種の『なぞ解き』に似た感じになっていて、読めば読むほどワクワクしてくるのです。
ごく普通の異世界ファンタジー解釈に従えば、このような描写手法を取る理由は「読者は知らなくても、その世界に住む主人公にとっては常識だからだ」となります。そのため、主人公が知っていることは説明無しに出てきて、主人公が始めて見る景色などは詳細に記述しているという解釈もできます。
しかし、重要な事柄は読み進めると分かるという構成に注目してください。この事は、この長い物語を作るにあたって、作者が十分な構想と構成をしてから書き始めた証拠だと思います。ですから、他の商業作品にありがちな、ただただ長い話しをだらだらと続けるということが、この <時の車輪> シリーズには無いでしょう。
どうでしょうか? ここまで見て、<時の車輪> を読みたくなったと言う人は、今すぐ本屋さんに走りましょう。多分、まだ序盤ですので、きっと本屋さんに全巻を置いているでしょう。(私の家から50メートル離れた本屋さんにも売っています)。最後に、この作品に出てくる主要登場人物を紹介します。
- アル=ソア
主人公です。地球上(推定)1000万人の読者が彼の一挙一動を注目しているにもかかわらず、ひたすら <時の車輪> の主人公という運命から逃げ回っています。この物語が50巻にも及ぶのは、間違いなくコイツの責任です。地球上(推定)100万人の読者は、うんざりしていることでしょう。私は4巻目で愛想がつきました。- エグウェーン
ヒロインです。主人公よりずいぶんマシな性格です。ハヤカワ文庫FTの別のシリーズみたいに、途中で主人公を殺してエグウェーンに交代してほしいと思っています。- ペリン
最初、重要登場人物という地位にウジウジ悩んでいたようですが、最近になって悟りを開きつつあるようです。(主人公交代はペリンでも可です。)- マット
今のところは、能天気な困ったヤツですが、そのうち化けるらしいです。- ナイニーヴ
主人公の故郷で <賢女> と言うのをやっていました。他人の頭を杖でぶっ叩くのが趣味のようです。- モイレイン
ある目的で主人公たちの故郷にやってきた異能者(アエズ・セダーイ)です。その高飛車な態度はナイニーヴの怒りを買っています。- ラン
モイレインの護衛士です。ナイニーヴとともに注目の人です。- トム・メリリン
主人公たちの故郷にやってきた吟遊詩人です。異能者(アエズ・セダーイ)が嫌いなようです。- ロイアル
旅の途中で主人公たちが知り合った半獣人です。とにかくよく喋ります。- セリーン
第2部から出てきた謎の美女です。彼女の正体については、初登場の時から思わせぶりな伏線が張られています。Note
早川書房 ハヤカワ文庫
第1部 竜王伝説 The Eye of the World
1巻 妖獣あらわる! ISBN4-15-020239-7
2巻 魔の城塞都市 ISBN4-15-020240-0
3巻 金の瞳の狼 ISBN4-15-020242-7
4巻 闇の追撃 ISBN4-15-020243-5
5巻 竜王めざめる! ISBN4-15-020244-3
第2部 聖竜戦記 The Great Hunt
1巻 闇の予言 ISBN4-15-020249-4
2巻 異世界への扉 ISBN4-15-020252-4
3巻 異能者の都 ISBN4-15-020254-0
4巻 大いなる勝負 ISBN4-15-020256-7
5巻 復活の角笛 ISBN4-15-020258-3
第3部 神竜光臨 The Dragon Reborn
1巻 魔人来襲! ISBN4-15-020261-3
2巻 白き狩人 ISBN4-15-020263-X
3巻 夢幻世界へ ISBN4-15-020265-6
(以下続刊)
4巻 闇の妖犬
5巻 神剣カランドア各巻の感想(ネタバレ度100%)