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雑記 20031201


  会社で嫌なことがあって、テンション低めの帰り道。

  のんびり歩きながら見上げた空には星が見えたが、
  月は湿気にぼやけてひとまわり以上大きく見えた。

  かなり遅い時間帯なのに、
  前後に、適度に距離を空けて、何人かの背広姿。

  ふぅ。

  雑木林の優しいシルエット。
  風に揺られ、ざわざわと。

  ざわざわざわざわ。

  その横を通り過ぎようとした、その時。

  ガサガサ!、ジジッ!、ばしっ☆

  と、右頬に衝撃。

  痛くはなかった。

  ぶつかった次の瞬間にはその正体の見当はつき、
  数秒もせずに正解と判明した。

  アブラゼミ。

  私にぶつかって、そのまま落下。
  枯れ葉の散らばった舗装路の上で、じたばたじたばた、ジジッ。

  ふむ。

  寿命かな、などと思いついたが、
  ま、いいか、と、そのまま現場を去った8月のある夜。

     ミ☆

  「神戸在住」という、一風変わった線のマンガ。
  月刊アフタヌーンで連載中、作者は、いまいち謎な、木村紺氏。

  いきなり脱線するが、どうも漫画という言葉に抵抗がある。
  コミックでも、なにか違う。

  作品、では広すぎる。
  絵本でもないし。

  適当な言葉をしらないので、
  とりあえずマンガ。閑話休題。

  その特徴は、まず、線にある。
  軽妙、という表現で良いと思う。

  丁寧に描かれた線には、妥協のない、
  ある種の根性が感じられる、気がする。

  しかしその最大の特徴は、その表向きの軽さ、
  もちろん良い意味での軽さとは裏腹な、
  ストーリィの、テーマの、重さ。

  やるせなくなるくらいの、
  切なくなるくらいの、重さ。

  恐らくそれは、線と同様、
  丁寧に描き込まれた「現実」の重さなのだろう。

  特に忘れられないのは、阪神淡路の震災の話。
  収録は単行本の3巻。

  ここだけは、読み返した回数が多い。

     ミ★

  和光市駅には高くて大きな屋根がある。

  ホームが完全に覆われているわけではなく、
  線路に沿って、幅3mくらいの細長い空が見える。

  その狭さを実感するのは、やはり、快晴の日だ。

  曇天、雨天の場合、そこから様子を見ることもあったが、
  狭いな、などと感じたことはなかった。

  玄関を出て、馬鹿みたいに蒼い空に洗われ、
  しばし歩き、薄暗い駅のホームから、
  蒼い、けれど細長い、空と、再会する。

  荒天の時は大いに頼もしく、
  快晴ならば恨めしく、悲しくもあって。

     ミ☆

  我が家の電子レンジは小賢しい。
  いや、オーブンレンジか。

  マグカップに牛乳を注ぎ、温めた。
  小賢しいことに、牛乳専用のモードとボタンがあり、
  そのボタンを押すと、勝手に適温にしてくれる。

  これがまた、猫舌のくせに熱いものが好きな私には、
  絶妙な温度設定だったりするから、小憎らしい。

  チン☆

  少し放っておいたら、ピー、ピー、という警告音。
  お知らせのつもりなのだろうが、音が偉そうだ、小癪である。

  でも、その音を聞いて、
  申し訳なさそうに台所へ急いでしまうのは、ちと情けない。

     ミ★

  半蔵門線と有楽町線の間の、
  ちょっと長めのエスカレータ。

  たまたま前に立ったその女性は、
  細身の白いジャケットに赤いマフラー。

  逆サンタクロースかいな。

  下らない第一印象を抱きつつも、もう少しよく観てみると、
  長めの黒髪が背に軽やかに流れて、なんとも心地よい風景。

  ちらりと見えた白い光は、文庫本か新書版か、
  それともハードカバーか、なんて、本のサイズはどーでもいい。

  勝手なもので。

  きれいな人?
  お嬢様風?
  美人?

  などと。

  そのくせ、内心、
  なんらかのオチを期待していたりして。

  エスカレータを降り、
  足早にその横を通り過ぎた。

  横目も使わず、振り返りもせず。

  少し前までは、
  こういうことはできなかったような気がする。


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