白い点
道端にゴミが落ちていることなど、珍しくもない。
嘆かわしいことだ。
もちろん、強風に飛ばされたとか、
気付かないうちに落としてしまったとか、
そーゆー理由によるものもあるだろう。
が、根拠らしい根拠はないが、
その割合はごく小さいものになるのではないかと、思う。
個人的には、たぶん、行動する時間帯の問題だろうが、
無造作にゴミを捨てる人間を見かけることは少ない。
ただし、ここで言っているのは紙ゴミの類いで、
タバコの吸殻はまた別である。
こちらはあまりにも自然な日常の風景であり、地面のみならず、
大気をも汚染し続けて飽くことがないのは、皆様ご存知の通り。
閑話休題、久しぶりに紙ゴミを捨てる人間を、
それもすぐ目の前で見たのは、
桜も咲き始めた3月下旬の、ある朝のことである。
舞台は虎ノ門、地下鉄銀座線の駅近くのコンビニ。
いつものように昼飯を調達しようとそこへ寄ると、
ちょうど店内から客が1人出てくる所であった。
初老の、枯れ始めて間もない、ってな風情の、
70歳前後だろうか、地味な服装の男性であった。
前触れもなく、ぽい。
丸めたレシートかと思われる。
あの大きさの感熱紙を丸めると、
ちょうどあんな感じになるはずだ。
それは入り口のマットのほぼ中央に落ち、
白い点となって、私の目に焼きついた。
正直、驚いた。
不要ならば断れば済むし、
レジ脇にはそれ用のゴミ箱もあるし、
店舗の前面にはゴミ箱も設置されている。
わざわざ放り投げんでも良かろうに。
しかも、店の顔とも言える入り口、玄関に。
とはいえそれ以上に、えー歳こいて、というのが、強い。
もはや一種の幻想なのだろうか。
そういえば、ここは虎ノ門、ちょいと歩けば官庁街、
ちょっと風変わりで不思議な人達が集う街でもあった。
まぁ、ああはなるまい、と、
やるせなさをどこかに押し込めて、会社へと急いだ。