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口臭


  おっさんの口は臭い。
  夕方過ぎのそれは凶器と呼んでもよかろう。

  ま、もっとも、確かにその代表格はおっさん連中だが、
  夕方ともなれば、老若男女、
  どちらかとゆーと、臭くないほうが少なかろう。

  で、逆に、そちらの、臭くない方の代表は、
  やはり、年頃の娘さんなのだろう。
  そーゆーことにしておいてあげよう。

  さて、例によって遅い時間帯の有楽町線。

  その日は珍しく酒が入っており、
  既に二日酔い?の頭痛が始まっていたので、
  文庫本ではなく、CDを聴いていた。

  と、前触れもなく、ツンとした臭気、刺激臭。

  しばし呼吸を止めてみたが、
  一過性ではないようで、つまり、常駐したらしい。

  ニンニク、だな。

  イヤそーに眉間にシワを寄せつつ視線を漂わせると、
  正面の席の左の左に、その原因が見つかった。

  若い、若そうな娘さんである。

  問答無用な若さ、ではない。
  若いけれど年上に見られる、または、
  それなりの歳だけれど若く見られる、の、どちらか。

  ふくよかな谷村有美、って感じだった。

  口元が、うれしそ〜に、もぐもぐ動いていた。
  膝上のバッグが開かれ、なにやら包み紙が見えていた。

  ひょい、ぱく、もぐもぐ、もぐもぐ、もぐ、もぐもぐ。

  挽肉のようなものがちらと見えた。
  印象は、半分くらいに切った餃子。
  皮の薄めの中華まんの類いだろうか?

  とまれ、ニンニクが入っているのは間違いないようだ。

  ぱくぱく。
  もぐもぐ。

  そして、刺激臭。

  因みに、満員電車。
  流行らないことを祈る。


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