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半額寿司


  たまには漫画みたいなこともあるもので。

  11時半頃だったか。
  総務のおねーさんがてくてく歩いてきて、
  色々と気を遣ってか、控えめな声で宣伝を始めた。

  あのー。
  980円のお寿司、500円なんですけど〜。
  どなたかお買いになる方いらっしゃいませんか〜。

  ‥‥ん?

  んん?

  おぉ!!

  てなもんである。
  やはり寿司とゆー食べ物は特別なのだ。

  私自身はと言うと、ちょっと迷ったが、
  いつものように昼メシは出社時に調達済みだったので、
  無駄にする訳にもいかんし、まぁ、いいか、と。

  昼をその寿司にして、買い込んだブツを夕方に回すとゆー手もあるが、
  その日に限って、夕方、珍しくも事務所へ戻る予定だったので、やっぱりパス。

  因みに結局、この日は、帰社できなかった。
  旧正月で帰国した中国人技術者L氏の置き土産が‥‥、まぁ、いいや。

  で、その500円寿司。

  遠くを眺めると、それらしい包みが幾つか見えた。
  こーゆーのにはやけに素早い連中がぶら下げて歩いてくる。

  おや?

  いやに小さい。
  ちょっと厚めのシステム手帳くらいだろうか。

  元の値段は980円。
  押し寿司だろうか。

     ミ☆

  ところで。

  なぜに500円?

  当然の疑問である。
  いくら半額でも、賞味期限切れなどではシャレにならない。

  近くで質問の声があがった。

  総務のおねーさんも何度か尋ねられたらしい。
  考える風もなく、会話はなめらかに流れた。

  1つ上の階の会社でね、
  お寿司を4つ注文したんだけど、
  どこかで間違いがあって、40個届いちゃったんだって。

  うーむ。

  遠回りとはいえ、小説よりも奇、であろう。
  今時こんなネタを使うヤツはいないからこそ、だ。

  かと言って、面白いわけでもない。

  うーむ。

     ミ★

  時は流れて昼休み。

  あちこちで紐解かれる半額寿司。
  そしてほぼ同時に、あちこちで聞こえて来るうめき声。

  ひょ?
  なんじゃこりゃ?
  む〜。

  遠目にちらとしか見ていないので、
  正確なところは分からない。

  のり巻きが、4×5だか4×6だか5×6だか5×7だか。

  悲痛の声を拾ってみるに、
  どうも具は3種類くらいしかないらしい。
  マグロ、キュウリ、かんぴょう、って所か。

  しかも、しょう油もなし。

  これで980円はないだろー。

  うまい話には裏があるというが、
  それほどうまい話ではないとゆーのが、やるせない。

  買わなくて良かった、うん。


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