落ち込み
一人で歩くときのスピードは、
たぶん、平均値の2〜3割増しくらいと思われる。
前に人が見えればそれを目指し、追い抜き、
そのままの歩調を保ち、次のターゲットを探す。
そのまま自分自身の生き方、いや、
こう生きたいと思う様を反映しているようで、こそばゆい。
しかるに、のんびりだらだら歩いて道をふさぐ輩を見つけて
無性に、無駄といっても良いほどに腹を立てるのは、
多分、私のなかの何かの現れなのだろう。
少し前に。
どうしようもなく落ち込んで、
食べ物も喉を通らないような状況に陥ったことがあった。
2日もすると手足から力が失せていくのが感じられた。
関節が痺れ、力が入らない。
しかし会社へは行っていた。
その程度の落ち込み方だったとも言える。
で、その通勤路。
足を、体を引きずるような歩き方。
歩速はたぶん、通常の8割引くらいだったろう。
さぞ、邪魔だったことだろう。
舌打ちや、何かを呟く声が通り過ぎていった。
その時に、このことに気付いたかどうかは分からない。
いつ、脳ミソの中で形をなしたのかも。
ただ、弱さを知れば、もうすこし優しくなれるのか、と感じた。
ありきたりかもしれない。
けれど、知識で知っているのと、体験を通して知ったのとでは、
これほどにも差があるものか。
もちろん、これが全てにあてはまるとは考えない。
知識で十分なこともあるし、知識に還元できないそれもあろう。
とまれ、貴重な経験であったことは確かと言える。