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留辺蘂 → 旭川


  ■ 7月17日(金)

  実は、北見に入った頃からずーっと悩んでいたことがあった。
  とりあえず鳩時計に引かれて留辺蘂 ―― 西へ向かってはみたが、
  問題はその後、どこへ行くか、である。

  計画性?
  そんなものはハナから存在しない。

  このまま西へ行くと、石北峠という、
  道内随一の凶悪な山越えが待っている。

  一度反対側から上って、そりゃもう、ヒドイ目にあった。
  まぁ、敗因は経験不足以外の何者でもなかったのだが。

  少し戻って北上すれば、生田原、遠軽、上湧別を経由して、
  サロマ湖の西側、オホーツク海と再会することになる。

  南下して山の中をひた走るという手もある。

  悩んだ。

     ミ☆

  北海道上陸が7月6日である。
  ちょうど10日間走ったことになる。

  このあたりで一息つきたい、
  というか気分転換したい、……というか、飽きた。

  さっさと神奈川に帰ってしまおうか。
  と、までは考えない程度の飽き具合だからタチが悪い。

  なにか刺激が欲しかった。

  ひるがえって地図を眺めるに、根拠は無いが、
  西、北、南とも、どーにも退屈そうな気がしてならない。

  敢えて東に戻るルートというのもあるが、
  冗談ならともかく、実践するとなるとイマイチである。

  体調もイマイチ芳しくない。

     ミ★

  人間、高尚な動機でも動くし、
  ごくありふれた簡単なそれでも動く。

  なにげに自転車のタイヤを見た。
  前輪は問題ない。

  が、後輪が随分とすり減ってしまっている。
  なんたって動力が伝わる側である。

  補給。

  脳裏に北海道の地図を思い浮かべ、
  大都市の、それなりのタイヤが入手できそうな街を、
  その地図の上に配置してみる。

  札幌は遠すぎる。
  函館はそのさらに先だ。
  東へ戻って北見。
  西へ、峠を越えれば旭川。

  旭川へは、石北峠……、か。

     ミ☆

  かったるい。

  それが率直な気持ちであった。
  峠と岬はサイクリストの聖地であるとゆー説もあるが、
  どーも、そーゆー気分にはなれなかった。
  元気な時なら無造作に峠を目指したろうに。

  てなわけで、輪行である。

  近所に線路はなかった。
  最寄りは……留辺蘂の町、距離にして約8km、
  昨日通り抜けた町、つまりUターンである。

  ま、仕方なかろ。

  さっさと荷作りを済ませ、
  隣近所、当たる幸い挨拶をし、
  そしらぬ顔で東へ向かう。

  空は、青かった。

     ミ★

  留辺蘂の駅に到着。

  街中は閑散としていたが、その規模に応じてか、
  駅舎の造りはしっかりしていた。

  時刻表を見上げる ―― と、あうち、
  3時間待ちかいな。

  はて、どーしたものか。

  と、とりあえず駅周辺をぶらついてみると、
  目に止まったのは、バス停。長距離バス、、、とは言わんか。
  とまれ、旭川まで行けるという。

  ほほう。

  しばらく考える。
  待ち時間と値段を比べてみる。

  なるほど。

     ミ☆

  問題は自転車を載せられるかである。
  無論、そのまま載せてもらえるとは思っていない。
  輪行 ―― バラしてそれ用のバッグに詰めこんで、だ。

  運がよいのかそーゆーものなのか、
  長距離バスの切符売場は有人であった。

  おばさんが1人。

  質問してみた。
  OKだという。

  しばし雑談。

     ミ★

  鉄道よりはマシとはいえ、
  こちらも待ち時間はたっぷり残っている。
  お約束、街中をぶらついてみる。

  農協系のお店を発見。
  看板のメロンとゆー文字に反応する。

  普通サイズ2個セットを2ヶ所、
  小さめサイズ5個セットを1ヶ所。
  値段と、関東への送料は推して知るべし。
  友人知人へ。

  福引券を何枚か貰ったが、抽選は来月半ば。
  折角なのでバス停のおばさんへ進呈。

     ミ☆

  あっという間に石北峠を越えてしまった。

  体調と体力と気分ゆえの選択ではあったが、
  ちと後悔、つまらんものである。
  経験、ってことで正当化してみる。

  終点の旭川駅付近でバスを降車。
  組み立てられる様なスペースが見当たらないので、
  そのまま担いで駅へ向かう。暑い。

  旭川。

  北海道のほぼ中央に位置する、
  道内第二の都市、だったかな。

  因みに、真ん中といえば富良野。
  こちらはそれなりに有名。

  旭川は富良野のちょい北である。

     ミ★

  自転車を組み立てる。

  と、後ろのブレーキがリムに当たってしまう。
  輪行の後のトラブルとしては、まぁ、たまにある。

  ブツクサ言いながら調整するも、
  どーしたものか、どーしてもうまく行かない。

  はて?
  考えること数分。

  ん?、え?、、、ありゃ?、、、むむむ!!

  スポークが、……折れている。


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