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老木


  むちゃ混みの通勤電車に載るべく並んでいた時のことである。

  あとで車内で見てみると、老境の、とでも言うのだろうか、
  刻まれた無数の皺、きれいに整えられた白髪。
  歳の頃は、はて、80前後とゆー所だろうか。

  背後に老木が2本。

  微かにとらえた囁き声。
  きっと何十年も付き合いがあるのだろう。
  ちょっと羨ましくも思った。

  で、電車を待っていた時のことなのだが。
  どちらかの口が呟くのである。

  あいつが……妹の旦那が死んじまってなぁ。

  なんて、しみじみと。

  もう一人もそれに応えて、
  そうか……、と。

  背中で聞いていただけではあるが。
  あんな風に、なれるかなぁ。


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